息を呑むような瞬間が続くパリパラリンピック夏季競技大会。国際パラリンピック委員会(IPC)公式フォトエージェンシーのGetty Images(本社:米国・シアトル、以下ゲッティイメージズ)は、8月28日の開会式から9月8日の閉会式まで、革新的な独自の技術を駆使し、数千枚もの写真を撮影し、配信しています。
障がい者スポーツに注目が集まる中、ゲッティイメージズは、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにするための消費者意識調査「VisualGPS」の障害者とスポーツに関する調査結果を公表しました。これによると、世界で8割以上が「パラリンピックがスポーツ界にとって重要である」と考えており、日本でも7割にのぼることがわかりました。今回は、「障がいのあるアスリートとスポーツ」に焦点を当て、人々がその重要性について認識している中で、障がいのあるアスリートに対するメディアにおける報道の特性や、見る側である消費者がどういう意識を持っているかVisualGPSの調査結果をもとに紐解くことで、今、人々に今求められている障がいを持つアスリートとスポーツのビジュアル表現について、ゲッティイメージズクリエイティブインサイトマネージャーの遠藤由理が考察します。
VisualGPS の調査結果によると、世界の 68%の消費者が、「メディアや広告でさまざまな能力や個々の特徴を持つ人々を見ることは、お互いを理解する上で良い影響を与える」と考えています。世界の 7 割の消費者が「障がいのあるアスリートが健常者アスリートと平等に報道されるべきだ」と考えており、世界的には障がいのあるアスリートをメディアでもっと取り上げて欲しいという消費者の要望は強い傾向にあります。しかし日本では、同じように考える消費者が 5 割程度にとどまっていることがわかりました。その一方で、日本の消費者の 6 割が「障がいを持つアスリートの功績を称えることが社会の認識を変えることに役立つ」と考えています。これは世界では 7 割に達していました。日本では、パラリンピックとそこで活躍するアスリートに対する認知度の向上にはまだ余地があることが考えられます。認知度を上げていくことで、スポーツだけでなく生活のあらゆる側面で障がいに対するポジティブなイメージが強調され、社会の認識を変える可能性があることを示しています。
近年、年齢や国籍、障がいの有無に関わらず皆が一緒に楽しむことができるスポーツ「ユニバーサルスポーツ」が徐々に広がってきています。VisualGPS 調査結果によると、ユニバーサルスポーツのように、障がいのある選手とそうでない選手が一緒に競技することを支持する消費者は、世界全体では 46%であるのに対し、日本では 27%にとどまりました。このことは、日本ではスポーツに対する伝統的なアプローチが強く、能力によって競技を分けることがより受け入れられていることを示しているかもしれません。また日本ではパラリンピックのようなイベントにおいて、これらのアスリートの功績に焦点を当て、彼らの成功や社会的貢献を強調することで、より共感しているのかもしれません。
世界的にはこういった競技に取り組むアスリートを含む多様なビジュアル表現が増えつつあります。日本のメディアは他国の成功事例を紹介し、競技の内容やコンセプトをわかりやすく紹介することが大切です。
企業やブランドが多様性を反映したビジュアル表現をする際、障がいのある人を取り入れないことが多い現状があります。世界的に見ても、障がいのある人の広告などでのビジュアル描写は 1 パーセント未満にとどまっていることがわかっています。またビジュアルの中に入れ込んだとしても、その表現方法が間違っていることもあり注意が必要です。
①マスメディアで障がいのあるアスリートを取り上げ、認知度を高めることで社会に変化を起こしましょう。
②日本のスポーツ文化の形成におけるパラリンピックの重要性と、その社会への影響を強調しましょう。
③障がいのあるアスリートのサクセスストーリーを特集し、一般の人々の認識にポジティブな影響を与えましょう。
④スポーツのイメージを拡大し、さまざまな文脈における障がいのあるアスリートにスポットを当て、幅広い競技活動を描きましょう。これには、スポーツへの参加だけでなく、試合の準備、練習への参加、休憩、チームメイトとの関わりといった日常の瞬間も含まれます。
⑤他国の成功例を参考にしながら、徐々に「ユニバーサルスポーツ」を導入し、日本での受け入れを促しましょう。
⑥「感動的」な描写を避け、現実的で日常的な描写に重点を置くことで、真のインクルーシブな表現を強調しましょう。
▼VisualGPS 調査概要
調査期間: 2024 年 1 月 25 日〜3 月 1 日にかけて調査を実施
調査対象:年齢、性別、地域などを考慮し、22 カ国の 18 歳以上 7000 名を対象に実施。
日本のサンプル数は 500。
10 代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに
重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016 年からはゲッティイメージズのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基に Creative Insight(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。