葉加瀬太郎の秋ツアー『葉加瀬太郎 コンサートツアー2024 TARO HAKASE & THE LADS VIBRANT』がスタートした。初日公演となった7日の相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)の模様をレポートする。
今回のツアーはこれまで見たことのない葉加瀬太郎の魅力や演奏に出会えるプログラムとなっている。葉加瀬にとっても今回のツアーは、これまでとは違う高揚感と緊張感が入り混じっているという。
その理由の1つがバンドとしてのツアーであることだ。4年前に招いた現在のツアーメンバーたちとこれからバンドとして活動することを決め、今年正式に「TARO HAKASE&THE LADS」(タロウ・ハカセ・アンド・ザ・ラッズ)と名付けられた。そして2月6日と7日にブルーノート東京でお披露目ライヴが開催された。ロック、ジャズ、ファンク、ラテン、カントリーなどさまざまなジャンルをミックスした新曲を次々と演奏し、今まで聴いたことのないサウンドに超満員の観客は釘付けになった。葉加瀬は「今年はバンド活動に力を入れていきます」と宣言。そして8月にリリースしたオリジナルアルバム『VIBRANT』(ヴァイブラント)を引っ提げた今回のツアーが、ザ・ラッズとしての全国お披露目公演となる。
見た目こそ大きな違いはないが、葉加瀬がやりたかった“メンバー全員が主役”のライヴだ。平均年齢60歳の日本を代表するプレイヤーたちが曲作りから参加し、演奏面では葉加瀬のフォーマットをぶち壊しにかかり、自由気ままに“スーパーサウンド”を披露する。葉加瀬もそれに負けまいと、今まで見せたことのないテクニックで対抗する。ブルーノートで見せた、まるで楽器で会話を楽しんでいるかのようなスリリングな演奏を今回は全国の会場で再現する。
そしてもう1つがツアー初日の前日に発表した病のこと。8月に顔面神経麻痺のラムゼイ・ハント症候群を発症し、顔面の左側が全く動かなくなった。家族にとっては大切な大黒柱の体調は気がかりだが、演奏には支障はないと発表があり、葉加瀬も「左半分以外は元気いっぱい」とファンを安心させた。
初日となった相模女子大学グリーンホール公演は、そんな不安を吹き飛ばす盛り上がりを見せた。
すでにチケットはソールドアウト。開演を待つ満員の会場には『VIBRANT』のラストナンバー「Clouds」が流れ始める。すると場内が暗転し、メンバー10名が静かに登場した。足の踏み場もないくらい機材と楽器で埋め尽くされたステージ。広いコンサートホールが一瞬でブルーノートのような密度の高い空間に変わった。
今回はインターバルを挟んで2部構成で行われ、第1部は『VIBRANT』のナンバーをたっぷりと披露した。屋敷豪太(ドラム)のカウントが始まり、天野清継(ギター)が作曲によるジャジーなロックナンバー「Moon Beams」で幕を開けた。サングラス姿で中央に立つ葉加瀬が、クールな旋律を奏でると、ソロパートではメンバー一人ひとりにスポットライトが当たり、そのたびに拍手が起きる。続いて懐かしい日本の風景が浮かんできそうな田中義人(ギター)作曲による「古都」、そして田中倫明(パーカッション)と屋敷による軽快なサンバのリズムが心地よい柏木広樹(チェロ)作曲の「VIDA FELIZ」、ボサノヴァのリズムから幻想的な世界へと変化する渡辺等(ベース)が書いた「I’ll Be There」、大島俊一(キーボード、サックス、フルート)の美しいフルートの演奏が堪能できる田中倫明作曲の「消えたベラスケス」など、各メンバーが手掛けたバラエティーに富んだ楽曲で観客をぐいぐいと引っ張っていく。
MCに入り、メンバー紹介が終わると、「ニュースにも出ておりましたが・・・」と、前日に発表した病気について自ら観客に説明を始めた。「ちょうど1か月前から左の顔半分が麻痺しちゃって、でも少しずつ良くなってきている」とファンを安心させた。続けて「ジャスティンビーバーも少し前に掛かった病気らしくてね。ニュースが出てからいろんな人からメールとか連絡をもらいました。ピアノの清塚(信也)からもLINEが入っていたんです。見たら『どおりで最近ジャスティンビーバーに似てきたと思ってました』だって」ここでホッとした観客から大きな笑いが起きた。葉加瀬は「今度、清塚が(テレビに)出ているのを見たらみなさん、『バカヤロー!』って言っといてください(笑)」とジョークを飛ばした。
また、おなじみの葉加瀬によるグッズ紹介も盛り上がった。今回も洒落の効いたグッズが用意された。バンド名のザ・ラッズに掛けた「ラッズベリージャム!!」を始め、葉加瀬が楽屋前に必ず飾る大切な暖簾の柄をあしらったバンドカラー(ブリティッシュグリーン)の「楽屋のれんタオル」、キーホルダー「ピッコロ・タロンティーノ」、そして定番の「はかせんす」も3色用意された。そしてメンバー全員のロングインタビューが収録されたシックなデザインのツアーパンフレットも注目だ。入り口のグッズコーナーには、ガチャ(タロガチャ)も設置され、20種類のアクリルチャームをゲットしようと行列ができた。
グッズ紹介が終わると、第1部の後半戦がスタート。再び『VIBRANT』からこの日最も熱い演奏が繰り広げられた。まるで中南米やアフリカを旅しているかのような気分を味わえる屋敷作曲の「Cactus」では、珍しい葉加瀬たちのコーラスも楽しめた。メンバーのソロパートでは、チェロの柏木と葉加瀬がメキシカン風の旋律でユニゾンを奏でると、羽毛田丈史(ピアノ)のジャジーなソロが飛び込み、最後はギター天野のクールなソロへとつながる。そこに屋敷の十八番のダブサウンドも加わるなど、カオスなサウンドにファンは釘付けになった。続けて葉加瀬が作曲した「”WATUUSI”!!」(ワトゥーシ)は、まさにカルロス・サンタナを彷彿とさせる世界が広がった。葉加瀬、大島俊一、田中義人と順番に情熱的なソロを弾きまくる。葉加瀬はソロが終わるとカウベルに持ち換えて、熱いリズムを刻み続けた。曲が終盤に差し掛かると屋敷のドラムソロがスタート。そのまま前半戦最後となる羽毛田が作曲した「Lads in Town」へと突入。屋敷のファンキーなリズムと葉加瀬のカントリー風のヴァイオリンがミックスされた絶妙な味付けがクセになる。圧巻のパフォーマンスで興奮冷めやらぬ観客が大きな拍手を送り、第1部が終了。休憩中には「ライブハウスで楽しんでいるみたいだ」「分かりやすい曲」「どれもカッコいいね」など、初めて体験したザ・ラッズの感想を口にするファンが多かった。
約20分のインターバルの後、第2部がスタートした。メンバーが爽やかな色合いの衣装でステージに登場すると1部とはガラリと雰囲気を変え、葉加瀬の定番曲や久しぶりに演奏する曲などを披露した。2003年のアルバム『Traveling Notes』に収録した「大地のうた」を久しぶりに演奏すると、続けて定番曲であるNHK連続テレビ小説「てっぱん」オープニングテーマ「ひまわり」を披露した。瑞々しい風景を思い浮かべる葉加瀬の歌うヴァイオリンに観客もしばしの間、酔いしれる。演奏を終えると葉加瀬が「もう安心していただいて結構ですよ」と笑わせて「1部は、ハラハラされた方もいらっしゃると思います。でも、楽しかったでしょ」と問いかけると観客は大きな拍手で答えた。「普段は歌うようなメロディーがたくさんありますが、楽器としても他にもいろんなことができるということをみなさんに伝えられたらいいなと思いました。そして僕たちと同じような年齢のみなさんだったら分かると思いますが、1960年代から70年代にかけて大きなパワーを持っていたクロスオーバーという音楽に僕たちは憧れを持っていて、21世紀になっても、そんな音楽の力を決して忘れずに信じ続けていきたいという思いを持ってこれからもバンドを続けていこうと思います。ぜひ応援してください」葉加瀬の熱のこもった言葉に温かい拍手が鳴った。次に演奏したのは葉加瀬がCMにも出演している東海東京証券のCMソング「オルクドール」、続けて「エターナル」を披露。葉加瀬はエターナルについて「僕が30歳の頃に書いた曲なんです」と説明。「もともとはある女性歌手のために書いた曲でしたが、結局その人はデビューすることなく、曲もお蔵入りになり、その後、僕のヴァイオリンの曲になりました。最初にあった歌詞は結婚式を挙げる時の花嫁の心境を歌っているのですが・・・60歳を過ぎたバンドでそれを上手く表現できたか・・・分かりませんが(笑)」客席から笑い声と共に拍手が起きた。「初々しさがね。我々一番のテーマですから。頑張っていきましょう」後ろのメンバーも頷いた。
第2部もあっという間に後半戦へ。天野のフラメンコギターがイントロを奏でると「Asian Roses」へ。葉加瀬のエモーショナルな演奏で一気に会場の色が深紅に染まった。次に大島のオルガン、八巻誠(マニピュレーター)のシンセがうねり、そこに会場の空気を切り裂くように田中の歪んだギターが鳴ると「ZERO HOUR」がスタート。屋敷の8ビートのリズムに合わせて葉加瀬のヴァイオリンが歌う。観客も大きな手拍子で会場全体が1つになった。そのまま羽毛田がピアノでお馴染みのイントロを奏でると観客もそれに気付いて一斉に立ち上がる。本編のラストはお約束と言ってもいい「情熱大陸」だ。総立ちとなった客席には、ピンク、オレンジ、ブルーなど、さまざまな色の「はかせんす」が大きく揺れた。いつもの光景に嬉しそうな顔を浮かべる葉加瀬。ステージを左右に動き回り、力のこもったソロで観客を沸かせた。メンバーも「はかせんす」を持ち、観客と一緒に手を振った。ちなみに現在、放送中のTBS系『情熱大陸』も放送1300回を迎え、オープニングの演奏は、ザ・ラッズのバージョンにリニューアルされている。
TVer 葉加瀬太郎テーマ曲新アレンジ誕生の舞台裏:https://tver.jp/episodes/ep78kohucl
本編が終了し、アンコールの大きな拍手の中、再びメンバーがステージに現れた。葉加瀬は、「年末まで続くツアーの初日ですが、みなさんのおかげで大変楽しくできました」と言ったところで言葉を詰まらせた。温かい拍手の中で少し間をおいて「心から感謝します」と深々と頭を下げた。「我々はこの歳で結成したバンドですから、解散する意味もありません。なので誰かが欠けるまでは続けたいと思います」と宣言すると、メンバーからも笑みがこぼれた。アンコールは、ニューアルバムからギターの田中が作曲した「Blue Eyes」を演奏し、この日の公演は全て終了。葉加瀬は最後まで観客に大きく手を振ってステージを去った。
これまではソロアーティストとして葉加瀬が全て脚本を書き、ツアーメンバーはそれを忠実に再現することで完成度を高め、本番に臨んできた。しかし今回のザ・ラッズはバンドであり、全員でアイデアを出し合い、瞬時にその場の空気や互いの感性を察知しながら自由自在に変化していく。その様はまさに究極の職人技だ。これからも「この日この会場でしか味わえないステージ」が全国で観られるだろう。
秋ツアーは、初日の公演を含めて40公演が決定しており、ゴールとなる12月28日の東京ガーデンシアター公演まで平均年齢60歳の若者たち(=ザ・ラッズ)が全国を走り回る。
東海東京フィナンシャル・グループ presents
葉加瀬太郎 コンサートツアー2024 TARO HAKASE & THE LADS VIBRANT
https://taro-hakase.com/blogs/live_info/2024-taro-hakase-the-lads-vibrant
9月7日(土)神奈川:相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)
9月8日(日)千葉:松戸 森のホール21
9月13日(金) 岡山:倉敷市民会館
9月15日(日) 大阪:フェスティバルホール
9月16日(月・祝) 大阪:フェスティバルホール
9月20日(金) 広島:広島文化学園 HBGホール
9月21日(土) 広島:広島文化学園 HBGホール
9月23日(月・祝) 兵庫:クリエひめじ 大ホール
9月27日(金) 京都:ロームシアター京都 メインホール
9月29日(日) 香川:レクザムホール 大ホール
10月4日(金) 静岡:アクトシティ浜松 大ホール
10月8日(火) 東京:かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
10月11日(金) 神奈川:神奈川県民ホール 大ホール
10月12日(土) 神奈川:神奈川県民ホール 大ホール
10月14日(月・祝) 富山:富山オーバード・ホール 大ホール
10月15日(火) 群馬:高崎芸術劇場 大劇場
10月18日(金) 石川:本多の森北電ホール
10月19日(土) 長野:ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)
10月23日(水) 新潟:新潟県民会館
10月26日(土) 東京:Bunkamuraオーチャードホール
10月27日(日) 東京:Bunkamuraオーチャードホール
11月3日(日) 熊本:熊本城ホール メインホール
11月8日(金) 愛知:愛知県芸術劇場 大ホール
11月9日(土) 愛知:愛知県芸術劇場 大ホール
11月10日(土) 愛知:愛知県芸術劇場 大ホール
11月13日(水) 茨城:水戸市民会館 グロービスホール
11月16日(土) 北海道:札幌文化芸術劇場hitaru
11月17日(日) 北海道:札幌文化芸術劇場hitaru
11月21日(木) 大阪:フェスティバルホール
11月23日(土・祝) 兵庫:神戸国際会館 こくさいホール
11月28日(木) 宮城:仙台サンプラザホール
11月29日(金) 宮城:仙台サンプラザホール
12月1日(日) 埼玉:大宮ソニックシティ
12月6日(金) 東京:NHKホール
12月7日(土) 東京:NHKホール
12月13日(金) 大阪:フェニーチェ堺 大ホール
12月14日(土) 大阪:フェニーチェ堺 大ホール
12月21日(土) 福岡:北九州ソレイユホール
12月22日(日) 福岡:福岡サンパレス
12月28日(土) 東京:東京ガーデンシアター
全公演チケット料金【前売】全席指定11,000円(税込)【当日】500円アップ
※入場年齢制限:4歳以下入場不可
TARO HAKASE & THE LADS 1stアルバム 「VIBRANT」大好評発売中!
■発売日 : 2024年8月7日( 水)
■アーティスト: TARO HAKASE & THE LADS / タロウハカセ アンド ザ ラッズ
■タイトル : VIBRANT / ヴァイブラント
■品番: HUCD-10330 /B (初回生産限定盤) / HUCD-10329 (通常盤)
■定価: 5,500円 (税込)(初回生産限定盤) / 3,850円 (税込)(通常盤)
■仕様:CDアルバム1枚& Blu-ray(初回生産限定盤) / 1枚組CDアルバム(通常盤)
■発売元 : 株式会社ハッツアンリミテッド
■販売元:エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社
初回生産限定盤:https://hats.jp/discography/hucd10330b/
通常盤:https://hats.jp/discography/hucd10329/
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