日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、肌の老廃物を排出するリンパ管の機能が加齢に伴い低下するメカニズムを研究しました。その結果、リンパ管の隙間を広げて老廃物を管内に取り込む役割を担う線維(繋留フィラメント)とリンパ管との接着が弱くなることが機能低下の原因であることを発見しました。今回、ジュニパーベリーから独自の方法で抽出したエキスに、リンパ管と繋留フィラメントを接着する成分を増やし、接着を強くする効果を見出しました。肌のリンパ管の機能を高めることで、老廃物の排出を促し、若々しい肌に導く効果が期待されます。
肌内部の不要になった水分や老廃物は、肌のリンパ管(毛細リンパ管)によって回収、排出されます。このリンパ管の機能は加齢によって低下し、肌内部に老廃物が蓄積しやすくなり、肌の老化につながってしまいます。今回メナードは、リンパ管による老廃物の取り込みに着目し、研究を進めました。
リンパ管の外表面には、繋留(けいりゅう)フィラメントと呼ばれる線維が接着しており、このフィラメントがリンパ管を引っ張り内皮細胞間の隙間を広げることで、周囲の老廃物を管内に取り込んでいます。メナードはこの繋留フィラメントとリンパ管をつなぐ接着成分(インテグリンβ3)に着目し、この接着成分が加齢により減少することを発見しました。接着成分が減少すると、リンパ管と繋留フィラメントの接着が弱まることで、内皮細胞間の隙間が広がりにくくなり、老廃物を取り込む機能が低下してしまいます。
そこで、インテグリンβ3の発現を高める素材を探索したところ、ジュニパーベリーから独自に抽出したエキスにその効果を見出しました。このことから、今回開発したジュニパーベリーエキスには、肌のリンパ管の機能を改善することで老廃物の排出を促し、若々しい肌に導く効果が期待されます。
なお、本研究の成果は2024年9月15~16日に大阪で開催された日本生薬学会第70回年会にて発表しました。
<参考資料>
1.リンパ管による老廃物の回収
肌のリンパ管は、肌内部の不要になった水分や老廃物を回収し、排出する役割を担っています。リンパ管は、リンパ管内皮細胞が一層に並んで管を形成しており、隣接するリンパ管内皮細胞同士の隙間から老廃物を取り込んで排出しています。この機能には、繋留フィラメントと呼ばれる線維が関わっており、繋留フィラメントがリンパ管を外側から引っ張ることで細胞間の隙間が広がり、老廃物を管内に取り込んでいます。繋留フィラメントとリンパ管は、接着成分によってつながれています。
2.加齢に伴ってリンパ管と繋留フィラメントをつなぐ接着成分が減少する
繋留フィラメントとリンパ管をつなぐ接着成分であるインテグリンβ3に着目し、若齢(27.6±1.5歳、n= 5)と高齢(66.4±0.9歳、n= 5)の肌におけるインテグリンβ3量を比較した結果、高齢では若齢と比較してインテグリンβ3の量が少ないことがわかりました(図2)。加齢によって繋留フィラメントとリンパ管をつなぐ接着成分が減少することで、繋留フィラメントによるリンパ管の隙間を広げる機能が低下し、老廃物の回収および排出が滞ってしまうと考えられました。
3.ジュニパーベリーエキスがインテグリンβ3の発現量を高める
インテグリンβ3を増やすことができれば、加齢によるリンパ管の機能低下を予防、改善できると考えました。そこで、リンパ管内皮細胞に様々な素材を添加し、インテグリンβ3の産生に関わる遺伝子(ITGB3)の発現を解析した結果、ジュニパーベリーから独自に抽出したエキスにITGB3の発現を高める効果があることがわかりました(図3)。このことから、ジュニパーベリーエキスは、インテグリンβ3を増やすことでリンパ管と繋留フィラメントの接着を強化し、リンパ管の機能を高める効果があると期待されました。
【独自開発ジュニパーベリーエキス】
ジュニパーベリーは、セイヨウネズの果実で、洋酒「ジン」の香り付けに欠かせない果実として知られています。標高2000mを超える高地にも生息し、耐寒性が高く生命力の強い植物です。
メナードは、ジュニパーベリーの効果を最大限発揮するために抽出方法を検討し、「焙煎処理」を取り入れました。焙煎処理は乾式加熱方法の1つで、温度や時間の違いにより成分の増減や新たな成分の出現が期待されます。様々な条件でジュニパーベリーに焙煎処理を施して検証を重ね、インテグリンβ3に効果を発揮するエキスの開発に成功しました。