太陽化学株式会社(本社:三重県四日市市、代表取締役社長:山崎 長宏)は、グアーガム分解物をはじめとする各種食物繊維や構成糖について、酪酸産生菌Clostridium butyricumとの組み合わせ効果を比較検証し、学術誌「Functional Foods in Health and Disease」に発表しました。
〇本研究のポイント
・各種食物繊維(グアーガム分解物(通常分子量、及び低分子量)、難消化性デキストリン、及びイヌリン)と、酪酸産生菌と組み合わせたシンバイオティクス作用を検証
・グアーガム分解物は分子量によらず各食物繊維の中で最も酪酸産生促進能が高かった
・グアーガム分解物の構成糖であるマンノース及びガラクトースも酪酸産生を促進
1. 研究の背景について
近年の研究により、腸内細菌は便通改善だけではなく、糖代謝や脂質代謝、認知機能や肌機能など全身の健康に関与していることが明らかになってきており、腸内環境の大切さが重要視されつつあります。腸内環境を良好に維持するための方法として、プロバイオティクスやプレバイオティクスの活用が広がっていますが、さらに両者を組み合わせたシンバイオティクスの有用性にも注目が集まっています。そこで、本研究では優れたプレバイオティクス作用をもつ水溶性食物繊維グアーガム分解物と、プロバイオティクスの一つであるClostridium butyricumの組み合わせ効果を検証しました。Clostridium butyricumは医療の現場でも広く活用されているプロバイオティクスで、健全な腸内環境の維持に寄与する酪酸を産生する酪酸産生菌の一種です。本研究ではClostridium butyricumとグアーガム分解物の組み合わせによる酪酸産生促進能について、他の水溶性食物繊維と比較検証しました。また、分子量の異なるグアーガム分解物や、各種食物繊維の構成糖の酪酸産生促進能も比較しました。
2. 研究方法について
Clostridium butyricum培養液を、グアーガム分解物、低分子グアーガム分解物、難消化性デキストリン、イヌリンを各1%含む液体培地に添加し、37℃で120時間培養し、培養後の菌体量(OD660)、pH、酪酸濃度を測定しました。また食物繊維の構成成分であるグルコース、マンノース、ガラクトース、でんぷんを用いて同様の試験を行いました。さらに、胆汁酸を添加した人工腸液にグアーガム分解物、低分子グアーガム分解物をそれぞれ1%ずつ添加し、Clostridium butyricumの培養試験を行いました。
3. 主な研究結果について
・グアーガム分解物を添加した場合、難消化性デキストリン及びイヌリンと比較して、有意に培地のpHが低下し、菌体量、及び酪酸濃度が増加しました(いずれもp<0.05)。
・マンノースとガラクトースを添加した場合、グルコース、でんぷんと比較して、有意に菌体量、及び酪酸濃度が増加しました(いずれもp<0.05)。
・人工腸液の培養においても、グアーガム分解物の添加により、菌の増殖に伴いpHが低下し、酪酸濃度が増加しました。
・低分子グアーガム分解物は、グアーガム分解物と同程度に酪酸産生菌の増殖及び酪酸産生を促進しました。
4. 考察と今後の検討
本研究では、グアーガム分解物は、難消化性デキストリン及びイヌリンと比較して酪酸産生促進能が高いことが示されました。また食物繊維の構成糖の酪酸産生能の検証においても、グアーガム分解物の構成糖であるマンノース及びガラクトースで良好な結果が得られ、グアーガム分解物の酪酸産生能の高さを裏付ける結果となりました。なお、低分子グアーガム分解物とグアーガム分解物との間に群間有意差はみられなかったことから、グアーガム分解物の酪酸産生能に分子量による影響は少ないと考えられました。
酪酸は、腸上皮細胞のエネルギー源として重要な役割を果たし、健全な腸内環境の維持に寄与する成分です。一方で、揮発性で不快な臭いであるため摂取しづらく、また、口から摂取しても小腸で吸収され大腸に到達しないという課題があります。このため、グアーガム分解物とClostridium butyricumとの組み合わせは、腸内で酪酸産生を促進することで腸の健康に寄与する理想的な組み合わせである可能性が示されました。今後、実際にヒト臨床試験などの検証を重ねることで、グアーガム分解物の健康機能の更なる解明に取り組んで参ります。
■用語説明
※ グアーガム分解物
インド・パキスタン地方に生育するグァー豆の種子に含まれる高分子食物繊維グアーガムを分解した水溶性食物繊維。グァー豆の食物繊維やグアー豆食物繊維とも呼ばれる。善玉菌の餌になりやすく、優れた腸内環境改善作用を有する。
詳細はwebサイトをご確認ください( https://guarfiber.taiyokagaku.com/ )
■発表誌
学術誌名 : Functional Foods in Health and Disease
論文タイトル: Synergistic effect of partially hydrolyzed guar gum on
Clostridium butyricum in a synbiotic combination for
enhanced butyrate production during in-vitro fermentation
著者 : Yoshiki Matsumiya, Mahendra Parkash Kapoor,
Akiko Yamaguchi, Aya Abe, Norio Sato
URL : https://doi.org/10.31989/ffhd.v14i7.1385
■太陽化学株式会社概要
商号 : 太陽化学株式会社
代表者 : 代表取締役社長 山崎 長宏
所在地 : 〒512-1111 三重県四日市市山田町800番
設立 : 1948年1月
事業内容: 乳化剤、安定剤、鶏卵加工品、機能性食品素材等の開発、製造。
資本金 : 77億3,062万円
URL : https://www.taiyokagaku.com/
伝統的な天然素材から、最先端技術を応用した新規素材まで様々な食材・工業用途向素材を取り扱うと共に、研究開発型企業として、無限の可能性を秘めた機能性食品素材の創造に取り組んでいます。