NPO法人 日本腎臓病協会(東京都文京区、理事長:柏原 直樹、以下「日本腎臓病協会」)と協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本 昌志、以下「協和キリン」)は、2019年5月に締結した「腎臓病の疾患啓発活動に関する連携協定」に基づき、腎臓病に対する啓発活動の一環として、慢性腎臓病(CKD)の疾患認知に関するアンケート調査を継続的に実施しています。今回は2023年11月に実施した最新の調査結果についてお知らせします。
慢性腎臓病(CKD)は脳卒中、心臓病、認知機能障害とも関係しており、国民の健康寿命を損なう要因となっています。日本では1,480万人の患者がいると推計されています※。
※:一般社団法人 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023より
今回は、20歳から70歳代の一般市民1,624名を対象に、慢性腎臓病(CKD)に関する認知度について、インターネットによる全国アンケート調査を実施しました。
その結果、慢性腎臓病(CKD)を「症状も含めてよく知っている」あるいは「病名だけは知っている」と回答したのは全体の44.6%でした。年代別にみると、若年層(20~40代)においては3割程度の認知度であるが、年齢層が上がるにつれて認知度が向上し、70代では72.0%でした。「症状を含めてよく知っている」は、全体で7.0%から7.5%に上昇していました。
慢性腎臓病(CKD)の予防策に関する設問に対して、「定期的に健康診断や人間ドックを受ける」と回答した割合が60.0%と最も多く、次いで「減塩・減量や禁煙等、生活・食習慣に気を付ける」回答は46.9%でした。また、健康診断や生活習慣病への治療にあたる「尿蛋白陽性やeGFR低下を指摘されたら、指示通りに医療機関を受診する」や「糖尿病や高血圧」等、「慢性腎臓病(CKD)の原因となる疾患の治療を継続する」の回答はそれぞれ37.7%、33.2%と確認できました。
健康診断あるいは人間ドックを定期的に受けない理由として「費用がかかるから」が最多(37.4%)、特に30代(46.3%)と40代(43.0%)で多い結果でした。また40代では、健康診断や人間ドックを受けることに不安・抵抗があるからの回答も多くみられました(25.8%)。
今回の調査結果について、日本腎臓病協会理事長、川崎医科大学 高齢者医療センター 病院長、特任教授の柏原 直樹先生は次のように述べています。
「腎疾患対策検討会報告書において、通知後5年目の中間評価では、さらに推進すべき事項として、「勤労世代への啓発」が強調されています。2024年には日本腎臓病協会と協和キリン共催で世界腎臓デーにあわせた一般市民向けの啓発イベントを実施いたしました。慢性腎臓病(CKD)は自覚症状が乏しくても重症化すると健康上の影響が大きいことから、今後も健康診断における尿蛋白やeGFRの認知を高めることを含め、継続した啓発活動を行うことが重要です。その一方でCKDに罹患している方の重症化を防ぐためのサポート体制や早期の診断・適切な治療の体制を全国でさらに整備していくことも望まれます。」
今回のアンケート調査については、第67回日本腎臓学会学術総会(2024年6月29日)で発表されました。詳細は http://jsn67.umin.jp/program.html をご覧ください。
演題:一般市民における慢性腎臓病(CKD)の認知度に関するアンケート調査~2023年度~
日本腎臓病協会と協和キリンは今後も「腎臓病の疾患啓発活動に関する連携協定」に基づき、慢性腎臓病に関する疾患認知度調査の実施をはじめ、腎臓病の疾患啓発と対策活動に協力して取り組みを進めていきます。
eGFRとは
Estimated glomerular filtration rate(推算糸球体ろ過量)の略。腎移植ドナーなど正確な腎機能評価が必要な場合にはGFR測定のgold standardであるイヌリンクリアランス法を実施しますが、日常臨床では血清クレアチニン値の測定結果を基に算出されるeGFRが用いられます。
日本腎臓病協会について
日本腎臓病協会は、医療者、市民、関連企業、行政等が連携し腎臓病を克服するために、立ち上げた組織です。腎臓病の普及啓発、診療連携体制の構築、腎臓病療養士制度の運営、患者会との連携、アカデミアと関連企業、行政等が連携するプラットフォームである「Kidney Research Initiative-Japan(KRI-J)」を運営します。日本全国どこにいても、良質な医療の恩恵を享受できる環境の実現に尽力します。「腎臓病の克服」が私共の願いです。
詳細は https://j-ka.or.jp/ をご覧ください。