京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下:京セラ)は、「親水性ポリマーによって潤滑性を高めた長寿命型人工股関節」の開発により、共同開発者である東京大学大学院医学系研究科 茂呂徹特任教授と共に「第49回 井上春成(いのうえはるしげ)賞」を受賞し、本日、7月12日(金)に表彰式が執り行われましたので、お知らせします。
表彰式の様子(於:日本工業倶楽部会館)
京セラ社長 谷本秀夫(左)、井上春成賞名誉委員 沖村憲樹氏(中)、
東京大学特任教授 茂呂徹氏(右)
「井上春成賞」は、大学等や研究機関などの独創的な研究成果をもとに、企業が開発、企業化した技術で、日本国内の科学技術の進展に寄与し、経済の発展、福祉の向上に貢献したものの中から特に優れた技術について、井上春成賞委員会が研究者および企業を表彰するものです。
今回受賞の「親水性ポリマーによって潤滑性を高めた長寿命型人工股関節」に搭載されている技術は、細胞膜と同じ分子構造を持つ「MPCポリマー」を人工股関節の摺動面(関節面)にグラフト重合させることに成功した日本発のバイオミメティック(生体模倣)技術であり、この技術を「Aquala(R)」(アクアラ)と呼びます。1999年に茂呂徹特任教授をはじめとする東京大学医学部整形外科のメンバーは、東京大学・石原一彦名誉教授が大量合成法を確立した合成リン脂質材料であるMPCポリマーという材料に注目し、医工連携による共同研究を開始しました。
2001年から京セラが開発企業として参画し、産学官連携により「Aquala(R)」技術を搭載した人工股関節製品の開発を推進しました。2011年に薬事承認を取得し、同年10月より京セラから提供しています。
■「Aquala(R)」技術搭載人工股関節製品について
現在、関節リウマチや変形性股関節症などによる人工股関節の手術は、世界で年間約100万例実施されています。Aquala(R)を用いた歩行負荷試験※1では、摩耗粉の産生が当社従来品と比較して約99%抑制※2されることを確認しており、人工股関節の最大の課題である「耐用年数」を大きく延ばすと期待されている技術です。
この長寿命化を目指す「Aquala(R)」技術を搭載した人工股関節製品は、2024年8月に採用症例数が10万件を超える見込みです※3。
京セラは今後もAquala(R)を中心とした製品を積極的に提供し、患者様のQOL(クオリティオブライフ)※4の向上に貢献し続けてまいります。
※1 人間の股関節を再現した股関節シミュレーターという試験機械で、組み合わせた人工関節を元に疑似歩行(1日5,000歩程度)を15年以上実施し、製品の摩耗を計測
※2 Aquala(R)が搭載された人工股関節の摺動面から産生する摩耗粉の数、エリア、体積を計測し、当社従来品の同様の計測結果と比較をし、算出
※3 2024年6月末時点で算出( 京セラ調べ )
※4 クオリティオブライフ:一人一人の「生活の質」を表す概念
※MPCポリマー:2-Methacryloyloxyethyl Phosphoryl Cholineポリマー
※摩耗粉(まもうふん):摩擦面で生じる損傷に伴って生成される微粒子
※Aqualaは、京セラ株式会社の登録商標です