株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、当社を代表するスキンケアブランド『雪肌精』が毎年取り組む環境支援プロジェクト、雪肌精「SAVE the BLUE~Ocean Project~」において、16年目を迎える今年、サンゴの一斉大量産卵の撮影に成功しました。
この貴重な撮影動画を公開することにより、地球温暖化による気候変動や生態系の異変に対する関心を高め、社会全体で環境保全の大切さを考えるきっかけとなることを目指します。
【雪肌精「SAVE the BLUE~Ocean Project~」について】
本プロジェクトは、沖縄のサンゴ育成や地球の環境保全への関心を高めるための啓発活動に取り組んでいます。対象商品の売上に応じ、環境保全活動を支援できるというキャンペーン型の社会貢献活動として2009年にスタートし、15年間の活動で、累計20,211本(※1)のサンゴを植樹してきました。
【地球温暖化により 2100年には地球上のすべてのサンゴが死滅と予想】
現在、世界のサンゴ礁の面積は地球表面の0.1%ほどですが、そこには約9万種もの海の生物が暮らしています。しかし、地球温暖化による海面温度上昇や海洋汚染などにより、2100年には地球上のすべてのサンゴが死滅している可能性が高いと予想されています。(※2) サンゴ礁の消失は、海洋生態系の崩壊、沿岸地域の防波機能の喪失、観光産業や漁業への深刻な打撃、そして気候変動の促進など、深刻な影響をもたらします。
沖縄の海には約415種類(※3)のサンゴが存在しているとされ、この数は、世界で最もサンゴの種類が多いとされるインドネシア、フィリピン、パプアニューギニアに囲まれた海域の約450種以上(※4)に匹敵します。しかし、沖縄では今年の夏も過去に例を見ない暑さを記録し、高水温によるサンゴの白化現象が深刻化しており、沖縄のサンゴの保護・育成は急務となっています。
(※1) 2024年5月8日時点
(※2) 松村 信仁. “サンゴが消滅危機 DICが環境ベンチャーと保護技術開発へ 「老化」抑制に期待”. 産経新聞.2022/7/8
(※3) サンゴ礁生態系保全行動計画 2022-2030.環境省
(※4) 国際サンゴ礁年2018パネル.環境省
【撮影成功までの背景】
サンゴ育成活動は、サンゴ再生事業の第一人者である、有限会社海の種 (本社:沖縄県読売村、以下 「海の種」)の代表・金城 浩二氏と共に取り組んできました。 今年は広大な人工のサンゴ礁(本プロジェクトでは「サンゴの森」と呼称)で、異常海水温の中でも白化することなく生き残った、高温耐性に優れたサンゴ「ミラクルコーラル」が一斉に産卵するタイミングを狙い、「サンゴの森」の撮影を敢行。大規模な産卵と、その卵の高確率な受精を確認し、その様子を収録しました。
■自然相手の撮影は約1ヶ月に及ぶ長丁場に
サンゴは一般的に5月から7月の満月の夜、かつ大潮の日に産卵すると言われています。しかし、気圧やその時期の気象環境(大雨や台風など)にも影響を受けるデリケートな側面を持っており、サンゴの識者でも産卵日を的中させることは不可能に近いとされています。サンゴの産卵を毎年追跡している「海の種」でも、この予測不能な自然の摂理に合わせた産卵監視活動は非常に難しく、通説が通用しないことを踏まえ、毎晩現場で張り込みを行いました。この張り込みは、深夜や早朝まで及ぶこともありました。
■異例のタイミングで産卵を捉える 学術資料としても貴重な撮影映像に
今回、大規模産卵の様子の撮影だけでなく、産卵の瞬間のマクロ映像の撮影にも挑みました。産卵の瞬間を確実に捉えるために毎晩監視を続けてきた「海の種」と金城浩二氏の経験と尽力があったからこそ、今回の撮影に成功しました。また、この撮影動画は学術資料としても貴重なものとなりました。
撮影中、産卵の瞬間は何度か訪れましたが、不運にも嵐と重なるタイミングもありました。風と雨の衝撃で卵が割れてしまうリスクがあるため、チームメンバーが一丸となってサンゴを雨風から守る対策を施すなど、懸命に作業する様子も収録されており、自然と向き合う過酷さの一端を垣間見ることができます。
■海中を広範囲に撮影するため 特注照明器具を開発
今回の撮影で最も難しかったことは、広大なサンゴ移植エリアで起こる産卵の風景を撮影することでした。サンゴは通常夜間に産卵を開始する性質を持っており、夜間の海中を広範囲に撮影するためには、特殊な照明機材の開発が必要不可欠です。そこで、水族館や博物館などのLED照明を制作する有限会社デルフィス(本社:兵庫県伊丹市、代表: 涌村 真)の協力により、サンゴ産卵用の特殊な撮影用照明を開発。この照明により、夜間の広範囲に及ぶ撮影が実現し、幻想的な産卵風景を映像に収めることができました。
■「沖縄の海の素晴らしさを伝えたい!」 50名にも及ぶボランティアが集結し、過酷な撮影をサポート
撮影は、「海の種」のスタッフだけでは到底実現不可能でした。そのような中、金城浩二氏の活動を日頃から応援するダイビングショップや現地の民間企業・団体スタッフ、個人など総勢50名にも及ぶボランティアが集結しサポート。「沖縄の海の素晴らしさを伝えたい」という現地の方々の想いが詰まった映像にもなっています。
■「大規模産卵は自分の手で!」 次世代へと繋がる産卵シーンの撮影に秘められた金城親子の物語
自然相手の産卵撮影を支えたのは、ボランティアスタッフだけではありません。 「海の種」のスタッフであり、金城浩二氏の息子である金城 寿気也(じゅきや)氏は、同社が運営するサンゴの養殖施設「さんご畑」の情報発信を精力的に行っています。産卵時期においても映像の撮影やデータの記録、発信をする重要な役割を担っており、今回の撮影においては、想定外の産卵タイミングで水中カメラマンがその場にいないというアクシデントの中、寿気也氏自らがビデオカメラを担ぎ、海に潜り、映像を撮影しました。産卵同様、沖縄の海とサンゴを守りたいという強い思いは次世代のメンバーに受け継がれています。
【海で産卵を終えた卵の受精率を調査「受精率90%を達成」】
サンゴは、同じ親やDNAを持つ個体同士では受精しない特性を持つ生物です。しかし、自然界では異なる群体が離れて生息していることが多いため、受精率が低いとされています。そのためサンゴの増加はなかなか見込めず、さらに近年の海水温上昇も影響して、サンゴの減少はより加速しています。このような状況に対して、「海の種」では、同種であっても異なる親やDNAを持つサンゴを意図的に同じエリアに移植しています。今回そのサンゴが大量産卵をしたため、海で産卵を終えた卵を回収し、受精率の調査を行いました。
その結果、近距離で親が違う養殖サンゴが一斉に産卵を行うと受精が進み、その受精率は90%を超えることが確認されました。天文学的な数の卵が産卵されましたが、そのほとんどが受精している状態です。この結果は、サンゴの再生速度を大きく向上させることが期待されます。
【「海の種」が発見した、高温耐性を持つサンゴ 「ミラクルコーラル」が描く“海とサンゴの未来”】
「海の種」が育成する高温耐性に優れた「ミラクルコーラル」。この「ミラクルコーラル」たちによる同時産卵が毎年継続されることで、現在「サンゴの森」には新たな世代の「ミラクルコーラル」の小さな群体(サンゴが集まった状態)が生まれています。
気候変動の影響で世界中のサンゴが高水温に晒される中、進行する白化現象が次々と報告されています。沖縄の海でも同様に白化現象は起きているものの、次世代の「ミラクルコーラル」の群体が、高水温を耐え凌ぎ適応していこうとする姿を確認できています。
【今後の展開】
当社は、「海の種」、金城浩二氏と共に次世代の「ミラクルコーラル」を生み出し続けることで、気候変動にも適応して生き続けるサンゴが海の環境を再設計していくという期待感や手応えを感じており、これまで以上にこのサンゴの再生活動に精力的に取り組んでいきます。
また、これらの取り組みを広く社会に伝えることで、生活者と共に「青い地球を守る」ことを意味するプロジェクトメッセージ「あなたが美しくなると、地球も美しくなる。」を体現していきます。