マックスマーラは9月19日(日本時間)、ミラノにて2025年春夏コレクションのショーを開催しました。
SCIENCE AND MAGIC(科学と魔法)
科学者や数学者は、複雑で雑然としたこの世界を、一連の洗練された方程式に還元する存在です。マックスマーラは、(シュレディンガーの猫のように)猫が生きていると同時に死んでいると信じることを学生に要求し、また、不合理数、虚数、そして超越数で満ちた心を揺さぶる世界を探求するこの学問にインスピレーションを見出します。
数学には謎などないと、誰がそんなことを言ったのでしょうか?
マックスマーラではこれまでも、歴史上の先駆的な女性にしばしばスポットライトを当ててきました。今回私たちが出会うのは、4世紀のアレクサンドリアに生きたヒュパティア。数学者、哲学者、天文学者、そして教師として愛され、尊敬された女性です。
ヒュパティアの研究の多くは、ピタゴラスの思想を発展させたものでした。彼女の方程式は、図式化された三角形として表現され、それらはまるで、ドレスメーカーが平らな布地を立体的な構造へと変える際に使う、神秘的で魔法のようなダーツです。しばしば隠されてしまうこのダーツは、ここでは堂々とその存在を主張します。新品でクリーンなコットン素材に施されたステッチが、マックスマーラのテーラリングやトレンチコートに三角関数的なひねりを与えています。また、片方のショルダーやヒップから放射状に広がる折り紙のようなアシンメトリーな構造は、ヒュパティアがかつて身に着けていたであろうドレープガウンに新たな解釈を加えたものです。柱状のニットスカートや、体のラインに沿う肋骨を強調するドレスは、高貴な巫女を思わせます。また、ヒュパティアが研究した円錐をさまざまな角度で切り取る手法からインスピレーションを得た、数学的にプロットされた楕円形の切り込みは、腹部の一部、肩のスリット、あるいは背中全体を露わにする魅力的な構造を生み出しています。そして、新しいショルダーシルエットを取り入れたジャケットは、シャープでスクエア、そしてナローなラインを描き、なめらかなシルエットを強調しています。
カオス理論は、予測不可能なことを予測するように私たちに教えます。本コレクションには、精密な幾何学や明確なデザインを特徴とするアイテムが揃っています。エンジニアリングに最適であろう完璧な直線を描くファブリックとして、ギャバジン、ドリル、ハイエンドデニムがある一方で、不規則な折り目が永久に交差するリンクル加工が施されたシルクも登場します。
美的センスが細部にわたる技術的構造と結び付く時、シンプルなポプリンシャツでさえも、デザインステートメントに昇華させることができます。マックスマーラは、その仮説を検証するためのスタイルを提案します。パリッとしたコットンシャツやラップシャツドレスほど「都会の夏」を見事に表現できるアイテムは他にあるでしょうか?
結晶のようなホワイト、限りなくブラックに近い酸化銅のブラウン、深みのあるデルフィニウムのブルー、硝酸のシルバー。これらはまるで研究室の小瓶から取り出したような色彩で、マックスマーラのコレクションに、クールで魔法のような化学反応をもたらしています。
「魔法だなんて?」―――科学的なコンセプトを前提とした本コレクションには、相反するテーマのように思えるかもしれません。しかし、その答えは、カート·ヴォネガットの著書『Science is magic that works』の一節に見つける事ができるでしょう。
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