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執筆の背景
どの分野の先生がどんなテーマの記事をご執筆いただけるかは公開までのお楽しみです。
今回のテーマは「膨大な所有者不明土地や空き家などの行く末を考える」
相続登記が義務ではなかったこと、土地所有権の放棄ができず、管理ができない所有者は放置せざるを得ないこと、所有者不明の場合、借地などの土地利用交渉ができないことなどが問題として指摘され、これを踏まえた一連の法改正がなされ、施行に至っています。
しかし、法制度とは、社会に受け入れられなければ現実的に機能しないものであるため、制度利用実績などから制度の実効性について考えていきます。
まず、令和4年11月1日に施行された、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律について見ていきます。この法律では、所有者が不明の土地について、第三者による地域福利事業などのための利用権設定対象や設定範囲が拡大されていますが、国交省の資料に具体的な利用権設定件数の報告がなく、実施に至った例はごく少数であると思われます。
次に、令和5年4月27日に施行された相続土地国庫帰属制度は、相続した土地に限って、一定の条件で国が引き取る(国庫に帰属させる)制度です。こちらは、これまで認められなかった『土地の所有権を放棄する』ことを、限定的ではあるものの、初めて認めた制度です。ただし、利用条件が厳しく、対象は相続した土地に限定され、一定の費用がかかることなどもあり、令和6年5月31日現在、申請件数2,207件に対して、帰属件数は460件と、ハードルが高いことがうかがえます。
それに対して、相続登記の義務化は令和6年の4月に施行されたばかりですが、相続登記件数について、平成30年前後は年間約400万件弱で推移していたものが、義務化が報じられた(改正法成立は令和3年4月)令和4, 5年度は500万件超と急増しています。相続登記は対応が煩雑でないこと、罰則が規定されていることも影響し、積極的な利用意思が必要な前二者に比べると、比較的順調に動いていると考えられます。
今後、法制度によって、現実の所有者不明土地問題がどの程度改善されるのか、気になるところです。
所有者不明土地問題対策について、各制度の利用実績などから制度の実効性について考察した「膨大な所有者不明土地や空き家などの行く末を考える」は下記より全文お読みいただけます。
執筆者
日置雅晴(弁護士)
「膨大な所有者不明土地や空き家などの行く末を考える」
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