株式会社マイシェルパ(以下、当社)は、10月10日の世界メンタルヘルスデーに向けて「メンタルヘルスとカウンセリングに関する意識・実態調査」を実施しました。世界メンタルヘルスデー2024のテーマは「今こそ職場でメンタルヘルスを優先しよう」です。本調査は20歳〜59歳のビジネスパーソンを対象に行い、メンタルヘルスとカウンセリングに対する意識や実態が浮き彫りになりました。
★本アンケートにおけるカウンセリングとは、専門的な知識を持つカウンセラーが、相談者との対話を通じて心の問題や悩みを解決したり、自己理解を深めたりするための援助活動や心理療法を指します。
■背景
日本では、メンタルヘルス不調(以下メンタル不調)や精神疾患の予防となるカウンセリングの普及率が低く、その影響が深刻化しています。OECDのデータによると、欧米諸国では国民の10〜15%が定期的にカウンセリングを利用しているのに対し、日本ではわずか6%に留まっています。そのような中、厚生労働省「労働安全衛生調査」では、メンタル不調による休職者や退職者が増加傾向にあることが示されています。さらに、2021年のWHOデータによれば日本の自殺率は先進国の中でも高く、2023年の自殺者数は21,818人(警察庁 暫定値)にのぼります。
メンタルヘルスケア、特に早期介入としてのカウンセリングの普及は、自殺防止や職場環境の改善に大きな効果が期待されます。こうした背景から、「今こそ職場でメンタルヘルスを優先しよう」というテーマに基づき、ビジネスパーソンを対象にアンケート調査を実施しました。
調査結果サマリー
1. カウンセリングへの関心は高いが、心理・費用・時間面など抵抗が強い
半数を超える約53%の人が重要性や興味関心を示していて、20〜30代を中心にその重要性が認識されていることが明らかになりました。一方で、興味関心があると答えたうち約48%の人が、カウンセリングに対する心理的な負担や費用面、時間の問題などの抵抗感やハードルを感じていると回答しています。
2. 半数以上が必要性を感じながらも、ほとんどの人が利用していていない
カウンセリングを利用している人は日本ではわずか6%というデータがありますが(OECD Health at a Glance 2023)、今回の調査では半数を超える約55%がカウンセリングの必要性を感じていることが明らかになりました。
3. 7割以上の人が悩みや不安あり。その内の半数近い人が仕事に及ぼす悪影響を経験
7割以上もの人が悩みや不安を持っていることが明らかになり、その内の半数近い約47%の人がメンタル不調による仕事のパフォーマンス低下など何らかの影響を経験しています。
「悩みや不安などはあるが、仕事には影響しない」という回答については、「自分で認めたくない」というような否認(※1)が働いている可能性がある場合が考えられます。
※1 否認とは、精神医学や心理学の領域で使われる精神分析の用語で、外界の苦痛や不安な事実をありのままに認知するのを避ける、無意識に無視してしまう心の働きを指します。
調査結果概要
【1】カウンセリングへの意識
Q.1 カウンセリングに対するあなたの興味関心について、最も近いものをお選びください。(単一回答)
カウンセリングに対する興味関心についての質問では、「重要だと思う」が16.9%、「興味関心がある」が35.6%で、合計すると約53%の人がカウンセリングに対して重要性や関心を示していることがわかりました。一方で、「興味関心がない」は32.2%、「無価値だと思う」は1.6%、さらに「カウンセリングを知らない」という回答は13.8%でした。
年齢別に見ると、若い世代ほどカウンセリングに対する重要性を感じている傾向があります。「重要だと思う」と回答した人の内訳では、20代が25%、30代が23.8%であるのに対し、40代は12.5%、50代は6.3%に留まりました。一方で「興味関心がない」と回答した割合は、20代が23.8%、30代が26.2%、40代が32.5%と、年齢が上がるにつれて増加し、50代では46.3%に達しました。
この結果から、カウンセリングの普及が進んでいない日本においても、20〜30代を中心にその重要性が認識されていることが明らかになりました。また、カウンセリング自体を知らない人は約14%と比較的少数であることもわかりました。
Q.2 カウンセリングに対してあなた自身が、興味関心がない・無価値だと思う理由に近いものを全てお選びください。(複数回答)
カウンセリングについて「興味関心がない」または「無価値だと思う」と回答した人に対してその理由を質問したところ、一番多かった回答が「自分には必要がない」53.7%で、2番目が「メリットや効果がわからない」31.5%、3番目が「効果がないと思う」17.6%、一番少なかったのが「実際の状況が変わるわけではないので、価値がない・意味がないと思う」13.0%という結果になりました。
2番目に多かった「メリットや効果がわからない」という回答から、カウンセリングに対する理解向上のための取り組みや活動が必要と言えます。
Q.3 カウンセリングに対するあなたの感覚について、最も近いものをお選びください。(単一回答)
カウンセリングに対する感覚についての質問には、「抵抗感やハードルがある」が47.5%、「抵抗感なし」が35.5%、「どちらも該当しない」が17.0%という結果になりました。
また「Q.1」 で、「重要だと思う」または「興味関心がある」と回答した人のうち約48%が、この設問で「抵抗感やハードルがある」と回答しており、カウンセリングに重要性や興味関心を示す一方で、抵抗感やハードルを感じていることがわかりました。
Q.4 カウンセリングに対する抵抗感やハードルについて、近いものを全てお選びください。(複数回答)
カウンセリングに「抵抗感やハードルがある」と回答した人に対してその理由を質問したところ、一番多かった回答が「心理的に、抵抗感がある(会社や周囲の目が気になる、自分を弱いとは思いたくない、自分に病名がつきそうなど)」で56.5%、2番目が「費用面で、抵抗感がある」で52.7%、3番目が「時間的に、抵抗感がある(通院に時間がかかる、通院が面倒そうなど)」で49.6%、4番目が「信用性で、ハードルがある(信頼できるカウンセラーの選び方がわからない、信頼できるカウンセラーがいないなど)」で38.2%という結果になりました。
年代別では、50代では周囲の目など心理的な抵抗が最も高かった一方、30代では費用面での抵抗が最も高いという結果でした。
また、「その他」を選択した人の回答には「社会的に抹殺されそう(30代男性、会社員)」という記述があったことからも、周囲の目が気になるなどの心理的なハードルが高いことが浮き彫りになりました。
Q.5 カウンセリングがあなた自身に必要か、最も近いものをお選びください。(単一回答)
カウンセリングの必要性に関する質問には、「必要だと思う」が17.8%、「やや必要だと思う(将来的に必要な可能性はあるなど)」が最も多く37.7%で、合わせて半数を超える約55%が必要性を感じているという結果となりました。また「あまり必要ないと思う」が26.5%、「必要ないと思う」が18.1%でした。
【2】メンタル不調が仕事に及ぼす影響について
Q.6 悩みや不安、プレッシャー、メンタルの不安定など、精神的な問題やメンタル不調が仕事に及ぼす影響について、あなた自身と近いものを全てお選びください。(複数回答)
「悩みや不安などはない」という回答は28.1%で、71.9%もの人が何かしらの悩みや不安を持っていることが明らかになりました。メンタル不調が仕事に及ぼす影響の内容としては、「悩みや不安などはあるが、仕事には影響しない」が24.7%と最も多かったが、「仕事への熱意の低下を感じたことがある」が22.5%、「集中力やパフォーマンス、生産性の低下を感じたことがある」が21.6%と、メンタル不調が直接的に仕事に影響を及ぼしている人が約半数いることが明らかになりました。
年代別に見ると、「悩みや不安があっても仕事には影響しない」と回答した割合は、20代が17.5%、30代が20%、40代が23.7%、50代が37.5%と年齢が上がるにつれて増加しており、特に50代で顕著でした。また、「メンタル不調が原因で休んだことがある」と回答した割合は、20代が13.8%、30代が11.2%、40代が3.8%、50代が6.3%で、さらに「メンタル不調が原因で休職または退職したことがある」と答えた割合は、20代が7.5%、30代が10%、40代が2.5%、50代が3.8%となり、若年層での影響が大きいことがわかりました。
この結果から、40〜50代はメンタル不調があっても仕事を続ける傾向が強いものの、警察庁自殺統計原票データによると、40〜50代の自殺者数が最も多いことから、精神的な強さや経験に基づいた対応が過信され、生存バイアスが作用している可能性が考えられます。
マイシェルパ 代表取締役(医学博士・精神科専門医)のコメント
松本 良平
株式会社マイシェルパ 代表取締役CEO、医学博士、精神科専門医、京都府立医科大学客員教授
京都府立医科大学で精神医学を学び、脳画像研究により医学博士を取得。American Journal of Psychiatryなどの国際的医学雑誌に40本以上の論文を発表する実績を持つ。奈良県内の精神科病院の院長を経て、2016年に株式会社マイシェルパを設立(現任)。現在、医療法人理事長として3つのメンタルクリニックを運営し、月間4,000名近い診療を統括している。
「調査結果から、ビジネスパーソンの多くが不安や悩みを抱え、カウンセリングに必要性や興味を抱いている一方で、心理的な抵抗や費用、時間などの様々なハードルにより、カウンセリングにアクセスできていない現状が浮き彫りになりました。これを受け、次の提言をいたします。
日本では、1300万人以上がメンタルヘルス疾患を抱えているにもかかわらず、そのうち約950万人が適切なケアやサポートを受けられていません。このような課題に対し、精神科や心療内科だけでは十分に対応しきれないのは明白です。さらに、医療2024年問題によって医療現場の人手不足が深刻化し、今後受け入れ態勢がさらに厳しくなることが予想されます。
企業が従業員に提供すべきケア・サポートの答えはシンプルで、有効性が認められているカウンセリングを専門家にアウトソーシングすることです。高ストレス者やメンタル不調者に対する治療的カウンセリングだけでなく、プレッシャーで眠れない若手社員など、中等度のストレスを抱える従業員にも早期の予防的カウンセリングを提供することが、メンタルヘルス不調によるパフォーマンス低下や休職、退職を防ぐ重要な対策となります。
当社は、従業員が元気に働き続けられる職場環境を支えるため、企業や従業員が安心してメンタルヘルスケアに取り組める社会づくりを支援してまいります。世界メンタルヘルスデーを機に、カウンセリングへの理解と利用促進に向けたアクションを企業とともに推進していきます。」
■調査概要
調査内容:メンタルヘルスとカウンセリングに関する意識・実態調査
調査方法:インターネット調査
調査実施日:2024年9月30日 ~ 2024年10月1日
有効回答数:320
調査対象者:20歳~59歳の会社員をはじめとするビジネスパーソン
(注)集計値は端数処理をしているため、総数と内訳の合計が一致しない場合があります。
■調査結果の利用について
本プレスリリースにおける著作権や詳細資料にかかる一切の権利は、株式会社マイシェルパに帰属します。利用する場合は、出典元として「マイシェルパ」を明記してください。
尚、報道目的以外での引用・転載については <pr@my-sherpa.jp> までお問い合わせください。利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。
年代別の表などの詳細資料は、下記URLまたは二次元バーコードよりダウンロードいただけます。
・資料DL用URL:https://x.gd/PrGPV
■世界メンタルヘルスデーとは
世界精神保健連盟が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされています。
世界精神保健連盟より、2024年世界メンタルヘルスデーのテーマは、「今こそ職場でメンタルヘルスを優先しよう」であることが発表されました。(世界メンタルヘルスデーJAPAN2024特設サイトより)
特設サイト(厚労省):https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/
■関連データ
・厚生労働省 「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」(P.3)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_gaikyo.pdf
・令和5年中における自殺の状況(警察庁自殺統計原票データ)
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R06/R5jisatsunojoukyou.pdf
■株式会社マイシェルパについて
株式会社マイシェルパは、様々な悩みや困難に対して、オンラインカウンセリングなどを提供するメンタルヘルス支援プラットフォーム「マイシェルパ」を運営しています。「マイシェルパ」では、精神科専門医のもとにメンタルヘルスケアのプロフェッショナルが集い、多くの団体や利用者にとってのウェルビーイングの実現のために、エビデンスに基づきながらサービスを提供・展開しています。これまでに、累計300社を超える法人・団体・自治体へのご導入実績があります。
【会社概要】
社名:株式会社マイシェルパ
本社:東京都港区虎ノ門1-2-15 虎ノ門YSビル10階
設立:2016年7月
代表者:代表取締役 松本良平
企業サイト:https://my-sherpa.co.jp/
「マイシェルパ」について:https://my-sherpa.jp/
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