菱華産業株式会社(本社:東京都中央区日本橋室町4−6−2、代表取締役:藤塚英明)は、産業の廃木粉をアップサイクルした循環型環境素材「MIRAIWOOD®︎」を自社開発、その事業化と社会課題の解決を具体化するサスティナブルデザインに取り組んできました。この取り組みは、持続可能な循環社会の構築と企業の長期的な成長を目指し、社会との共生を重視したものです。期待される効果は、社内外のステークホルダーとの関係強化と、イノベーションを通じた新たな価値の創出です。
サスティナブルデザインの背景
MIRAIWOOD®︎は、変化する市場環境とプラスチック成形業界の持続性を向上させることを目標として、プラスチック成形業が導入可能な循環型のバイオマス素材を自社開発、その事業化と、企業としての独自性と競争力を高めるためにサスティナブルデザインに取り組みました。このサスティナブルデザインは、産業を取り巻く様々な社会課題をリサーチ、社内外の多様な意見を反映し、課題解決型の開発力を自社事業のコア技術として養うことで、長期的な視点で企業価値を高めるためのものです。
サスティナブルデザインの内容
新たに策定されたサスティナブルデザインの概念は「社会課題の解決を具体的なかたちにすることで、循環型社会と共に成長し、持続可能な未来を創造する」というものです。これは、MIRAIWOOD®︎のビジョンと方針を具体化したものであり、コアバリューと経営理念に基づいています。
サスティナブルデザインに基づく取り組み
MIRAIWOOD®︎は、このアップサイクル+リサイクル技術を活用した社会課題の解決、および、それによって実現するビジネスモデルを具体化するPOCを実施しました。その具体化を行う技術こそ「サスティナブルデザイン」です。産業の製造プロセス、産業を取り巻く社会課題、地域社会に生活する人々の課題、そして、最終製品のユーザー体験と、回収リサイクルまでの循環を詳細に調査、分析。加えて、アップサイクルによって得られる資源の金融価値と循環経済システムなど、サスティナブルデザインの範囲は、ものづくりの源流から循環する全てのプロセスを一環する大きな思考となります。
現在の産業でも多くの廃材が発生します。私たちは木粉や植物廃材にフォーカスし、その有効活用の道を探りました。木工の産地では再生材に否定的な意見も見られましたが、調査と対話の過程で、アップサイクルが木工産地や林業にとって新たな収入源となる可能性があることや、現在の天然木の製品を排除するのではなく、さらに上級に押し上げる効果も期待できることなど、お互いの理解と協力する体制が広がっていきました。
漆器を循環するサスティナブル素材にするためには、伝統工芸の技を受け継ぐ職人に受け入れられる必要があります。我戸幹男商店の協力により、サスティナブル素材の木地での工芸実験を繰り返し、工芸の技と道具に適応した「木地」の開発に成功しました。この木地は山中漆器の伝統を受け継ぎ「削る前から美しく」なるようにデザインされています。
こうして、山中漆器の欅の木屑に、つなぎとして植物由来の生分解性樹脂を混合した、MIRAIWOOD®︎漆器木地が完成しました。射出成形でありながら、体積の80%以上(比重では51%)が木材でできています。形状は、職人が違和感が少なく使うことができ、削る前から器としての美しさを持っています。クラシックでありながらシンプルでモダン。担当デザイナーが、かつて、柳宗理や渡辺力など、日本のレジェンドデザイナーと共に仕事ができた経験が活かされているのかもしれません。また、成形品でありながら、MIRAIWOOD®︎の技術により美しい木の風合いを得ることにも成功しました。
さらにカカオハスクをブレンドすることで、ほんのりチョコレートの香りのする茶器が完成しました。これは「ボンボニエール」と言うフランスの伝統的なお菓子入れが元になっています。ボンボニエールは明治初期に日本にも伝わり、漆器として、皇室のお祝いごとの引き出物や、国賓への贈答品などに使われていることで知られています。最新の技術とモダンなデザインですが、伝統を受け継ぐという意味での文化的なサスティナビリティも重視しています。
地産地消とサスティナビリティ
山中漆器の木屑から、サスティナブル漆器、バイオマス成形品を作るプロジェクトは、加賀市の新製品開発助成にも採択され、完成することができました。加賀市のもう一つの主産業である近代漆器(プラスチック成形樹脂の器)も同じ木粉ペレットにて、環境素材に転換することに成功しました。石油プラスチックの成形設備で、木製品を製造できるようになったと言うことです。天然木の漆器生産からアップサイクル材料は確保できるので、地産地消のサスティナビリティ循環を構築することができます。
産業の持続性を高めるサスティナブルデザイン
この開発では、廃材の処理、石油成分の削減などのほか、材料供給の安定化、産地の雇用の安定化、新しい収入源の確保、伝統技術や文化の継承など、ハード面からソフト面までをつなぐことでサスティナビリティを実現しています。美しい形状の器には、それら多くの社会課題の解決を目指したサスティナブルデザインの思想が反映され、具体化したものだと言えます。
今後の展望
MIRAIWOOD®︎は、基盤となる成形技術を元に、サスティナブルデザインによる事業戦略と成長戦略を展開しています。よりオープンなイノベシーションを目指す企業コンソーシアム「MIRAIWOOD®︎ FORUM」と、産学連携研究のための「日本橋サスティナブルデザイン会議」により、MIRAIWOOD®︎は、持続可能な成長と循環社会への貢献を目指します。
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