文化事業を主とした企画・運営を担う株式会社precogは、これまで世界90都市で舞台作品の国際展開をプロデュースし、舞台芸術の国際交流事業に力を入れてきました。このたび、ヨーロッパ、北米、南米、アジアにて築いてきたネットワークを活かし、日本国内の担い手の海外進出をサポートするとともに、蓄積してきた国際的な知見を広く社会に共有するプロジェクト「IN TRANSIT—異なる文化を横断する舞台芸術プロジェクト—」をスタートします。
IN TRANSITでは、対象となる15名のアーティスト、制作者、スタッフ、批評家らに対して、有識者によるレクチャーシリーズの実施や、国際フェスティバルでの交流、ネットワーキングなどのサポートを提供し、2027年3月までに海外公演を実施することを目標に、それぞれの担い手の国際的なステップアップに伴走します。
また、本プロジェクトのプロセスと成果はオンライン上のウェブサイトにて公開し、世界を目指す舞台芸術関係者や担い手に向けて発信することで、5年、10年先にも活用できるプラットフォームとして、持続的にナレッジと成果を共有できる場となることを目指します。
<プロジェクト概要>
プロジェクト名:IN TRANSITー異なる文化を横断する舞台芸術プロジェクトー
育成対象者:
< 劇作家・演出家 > 上田久美子、オル太、筒井潤/dracom、萩原雄太・山本卓卓、藤田貴大、牧原依里
< 制作者・プデューサー > 加藤奈紬、坂本もも、林香菜
< 舞台監督 > 守山真利恵
< 批評家 > 関根遼、高嶋慈、山﨑健太
期間:2024年10月〜2027年3月(予定)
実施内容:レクチャー(非公開)、シンポジウム、交流・ネットワーキング、海外視察、海外公演、成果報告会、発信・アーカイブ
主催・企画制作:株式会社precog
助成:文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
Website:https://in-transit.org
▷ 事業スケジュール(予定)
◉ 1年目 / 2024年 ー 国際展開のための基盤構築
長期ビジョン構築、資料作成、現地視察、プレゼンテーション、特設サイト立上げ等を実施。
10月 京都EXPERIMENT参加
レクチャー①
牧原依里「聴者を演じるということ 序論 ソロ版」@ソウル Modu Theatre
11月 筒井潤「釈迦ヶ池・再訪」@デュッセルドルフ Nippon Performance Nights/FFT
12月 YPAM参加
牧原依里「聴者を演じるということ 序論」公演
1月 レクチャー②③
3月 海外視察(調整中)、成果報告会
◉ 2年目 / 2025年 ー 国際的活動の具体化
企画の具体化、活動地域の絞り込み、パートナーとの関係強化、資金調達等
4〜5月 海外視察、レクチャー④⑤
6月 シンポジウム
8〜9月 助成申請、レクチャー⑥⑦
8〜12月 エクスチェンジ
2月 成果報告会
◉ 3年目 / 2026年 ー 国際的活動の実現
海外ツアーや国際共同制作の実施、現地メディアパートナーとの連携・発信強化等
3〜5月 海外公演
8月 シンポジウム
9〜11月 海外公演
3月 成果報告会
▷ 支援対象者プロフィール
< アーティスト >
◉ 上田久美子
奈良県出身。一般企業勤務を経て、宝塚歌劇団演出部に入団。2015年、『星逢一夜』にて読売演劇大賞優秀演出家賞。オリジナル戯曲で深遠なテーマ性とエンタテイメント性を両立させ支持を集めたが、2022年に退団。
2024年よりセゾンフェローⅡ。宝塚以外での作品は、2022年『バイオーム』(脚本)、2023年全国共同制作オペラ『道化師・田舎騎士道』(演出)など。2024年にprojectumï(任意団体)を設立し、アートと娯楽の境界を取り払って、多様な人々に同時代の問題を共有できる作品を生み出すことを目指している。
◉ オル太
Jang-Chi
1983年生まれ。2009年に「オル太」を結成。ディレクションや演出を担い、集団的な想起から身体表現を展開する。これまでに上演した主な公演は、YPAMディレクション(2021年-2023年)、ロームシアター京都(2020年、2024年)、Lilith Performance Studio(スウェーデン、2015年)、ソウル・マージナル・シアター・フェスティバル(韓国、2014年)など。公益財団法人セゾン文化財団フェロー。
メグ忍者
1988年生まれ、千葉県出身。2009年に結成したアーティスト集団「オル太」のメンバーとして活動し、脚本、映像、パフォーマンス、デザイン、企画などを担う。日常を批評性を持って見つめ、幼少期の遊びや記憶をもとに、ドローイングを拡張し、世界に対しての些細な反逆を試みる。劇作を手がけたオル太『ニッポン・イデオロギー』が第68回岸田國士戯曲賞最終候補作品にノミネート。
◉ 筒井潤/dracom
演出家、劇作家、俳優。公演芸術集団dracomリーダー。2007年京都芸術センター舞台芸術賞受賞。ニューヨークで実施されたSegal Center Japanese Playwrights Project 2018にて『ソコナイ図』が優れた戯曲に選出。dracomとしては国内外の国際フェスティバルに多数参加するほか、個人として『新長田のダンス事情』で演出、ルリー・シャバラ『ラウン・ジャガッ:極彩色に連なる声』では空間演出を担当。大阪を拠点にジャンルや形式にこだわらず、幅広く活躍している。
◉ 萩原雄太・山本卓卓 ([日中当代表演交流会]として参加)
萩原雄太
演出家、かもめマシーン主宰。1983年生まれ。愛知県文化振興事業団「第13回AAF戯曲賞」、「利賀演劇人コンクール2016 優秀演出家賞」を受賞。公共と個人の身体との関係を描いた創作を行う。2019年よりセゾンフェロー1に採択。24年、中国の演出家・王梦凡、キュレーター・张渊、劇作家の山本卓卓とともに日中当代表演交流会を開始。 ジョージタウン大学・Laboratory For Global Performance & Politics 2024-2026のGrobal Fellowに採択される。
山本卓卓
作家・演出家・俳優・範宙遊泳代表。加速度的に倫理観が変貌する現代情報社会をビビッドに反映した劇世界を構築。子どもと一緒に楽しめる「シリーズ おとなもこどもも」、青少年や福祉施設に向けたワークショップ事業など、幅広いレパートリーを持つ。アジア諸国や北米での公演や国際共同制作、戯曲提供も多数。『バナナの花は食べられる』で第66回岸田國士戯曲賞を受賞。公益財団法人セゾン文化財団フェロー。
◉ 藤田貴大
1985年生まれ。北海道伊達市出身。演劇作家。2007年、マームとジプシーを旗揚げ。以降、全作品の作・演出を担当する。2011年に発表した三部作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で、第56回岸田國士戯曲賞を26歳で受賞。2013年、太平洋戦争末期の沖縄戦に動員された少女たちに着想を得て創作された今日マチ子の漫画「cocoon」を舞台化。同作で2016年、第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。2013年に初の海外公演を実現し、以降レパートリー作品やワークショップなどで国外活動を展開。2024年には「作品名ダミー」のイタリア公演を予定。
◉ 牧原依里
視覚と手話を中心とする人たちの身体感覚の視点から作品制作に取り組む。作品形態は映像、パフォーマンスなど異なるが、その作品から生まれる現象を可視化する装置を提供することで、私たちの共通性と相違性を探り続けるとともにこの世界の社会構造を浮かび上がらせる試みを行なっている。主な代表作品として、ろう者コミュニティにあるオンガクを概念化し、音楽の定義を問いた《LISTEN リッスン》など。
< プロデューサー >
◉ 加藤奈紬
舞台制作者・プロデューサー。株式会社precogでの国際事業等のアシスタントを経て、豊岡演劇祭のプロデューサーとして国内外の公演の制作を統括。2023年、アジアの舞台芸術に携わるプロデューサーで形成される国際プラットフォーム、アジア・プロデューサーズ・プラットフォーム(APP)キャンプに参加。
◉ 坂本もも
合同会社範宙遊泳代表・プロデューサー/ロロ制作。学生劇団から商業演劇まで幅広く制作助手や演出部などを経験したのち、2009年よりロロ、2011年より範宙遊泳に加入して、劇団運営と公演制作を務める。特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)、一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク(JPASN)理事。多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科非常勤講師。2017年に出産し、育児と演劇の両立を模索中。
◉ 林香菜
桜美林大学総合文化学群卒業。2007年マームとジプシー旗揚げに参加。以降ほぼ全てのマームとジプシーの作品や、藤田の外部演出の作品で制作を担当。14年マームとジプシーを法人化し、代表に就任。
< 舞台監督 >
◉ 守山真利恵
静岡県舞台芸術センター演出部を経て、2020年から文化庁の派遣によりロシア・ペテルブルクで研修。2021年にウクライナ侵攻を受け帰国。以降、岡田利規、小泉明郎、倉田翠など、幅広いアーティストの作品に舞台監督として参加。また、多くの国際共同制作や国際フェスティバル参加作品の技術監督・コーディネーターを担う。チェルフィッチュ技術監督、国際芸術祭あいち2025テクニカルディレクター(パフォーミングアーツ)。
< 批評家 >
◉ 関根遼
1999年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科演劇映像学コース博士後期課程在学中。専門は現代演劇、日本演劇、舞台芸術とアーカイヴをめぐる様々な実践の研究・批評。
◉ 高嶋慈
美術・舞台芸術批評。京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員。ウェブマガジン「artscape」にて連載。ジェンダーやクィア、歴史の(再)表象などを軸に、現代美術とパフォーミングアーツを横断的に批評する。近刊の共著に『百瀬文 口を寄せる Momose Aya: Interpreter』(美術出版社 、2023)。「プッチーニ『蝶々夫人』の批評的解体と、〈声〉の主体の回復 ─ノイマルクト劇場 & 市原佐都子/Q『Madama Butterfly』」にて第27回シアターアーツ賞佳作受賞。
◉ 山﨑健太
1983年生まれ。批評家、ドラマトゥルク。演劇批評誌『紙背』編集長。WEBマガジンartscapeでショートレビューを連載。2019年からは演出家・俳優の橋本清とともにy/nとして舞台作品を発表。
▷ 主催・企画制作
株式会社Precog
株式会社precog(プリコグ)は、アートプロジェクトの企画・運営 を行う制作会社です。
活動テーマは、“横断と翻訳”。近年は“アクセシビリティ”(ア クセスのしやすさ)と“インクルージョン”(包摂)に も力を入れ、プロジェクトの同時代性や新たな事業展開を追求し続けています。
アーティストやクリエーター、そしてさまざまな分野の専門家と協働し、芸術体験と観客を鑑賞で繋ぐだ けでな く、国際交流・ 福祉・地域活性・教育普及など多角的なアプローチによって「新しい価値」を生み 出し、“表現”の 未来をつくります。
*名前の由来 pre(前)とcognition(認識)からなる「予知」という語を人称形らしく変型させた造語で、precog《予知能力者》という意味を持つ。
▷ 公演情報
筒井 潤 「釈迦ケ池再訪」
IN TRANSITの支援対象者の一人である筒井潤が、この度 FFT Düsseldorfで行われるNippon Performnace Nightsにて新作「釈迦ケ池再訪」を発表します。
新作『釈迦ケ池再訪 / Der Buddha-Teich – erneuter Besuch』は、ドイツ語が話せない吹田出身の劇作家/演出家筒井 潤と、日本語が話せないオデッサ出身の俳優オレック・ジューコフが舞台上で自ら字幕を操りながら、意思疎通が取れない相手との対話を試みる二人芝居のコメディです。今作は日本とドイツが外交的危機に直面した19世紀末の「釈迦ヶ池遊猟事件」を引き続き題材にしながら、国際共同製作の演劇作品の決め事を逆手に取り、(異文化)コミュニケーションの可能性と非可能性を描く。個人間、世代間、国家間という異なる文化・思想背景を伴うコミュニケーションの不全により混迷する現代において、そして演劇における言語、翻訳、字幕の制度に対し、新たな地平を切り拓きます。
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作・演出|筒井 潤
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出演|オレック・ジューコフ、筒井 潤
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日時|2024年11月21日(木)20:00 / 11月23日(土)20:00
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会場|FFT Düsseldorf, Konrad-Adenauer-Platz 1, 40210 Düsseldorf(ドイツ)
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言語|ドイツ語・日本語、ドイツ語と日本語の字幕付き
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公演時間|70分
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チケット|19 € ほか
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Web site|https://www.fft-duesseldorf.de/spielplan/der-buddha-teich
牧原 依里 「聴者を演じるということ」序論
2024年11月〜12月に横浜を中心に実施されるYPAM2024(横浜国際舞台芸術ミーティング)のフリンジ枠にて、牧原依里が「聴者を演じるということ」序論を上演します。
異なる身体性を演じることの意味を問うプロジェクトであり、ろう者役者の數見陽子と山田真樹が出演します。
ろう者の身体で演じられる「聴者」に、私たちはどこまで言及することができるのか。 演じる者と演じられる者、その関係を超越し、分かち合うことは可能なのかー。国際展開を目指してYPAM2024にて開催します。
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演出|牧原依里
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出演|數見陽子、山田真樹
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日時|2024年12月5日(木)11:00 / 14:00
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会場|高架下スタジオSite-Aギャラリー 〒231-0054横浜市中区黄金町1-6先(日本)
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言語|日本語・日本手話上演
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公演時間|60分
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チケット|YPAM参加登録者 無料、一般 前売 ¥2,500(当日 ¥3,000)ほか
【クレジット】
主催・企画制作:株式会社precog
助成:文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会