原田裕規(1989-)は、2012 年に「ラッセン展」や「心霊写真展」の企画でデビューし、社会の中で広く知られる視覚文化を題材とするプロジェクトからその活動をスタートしました。また近年は、広島や山口からハワイへ渡った移民について調査し、日系アメリカ人の混成文化を題材にした映像作品《シャドーイング》を発表しています。本作品内で登場人物は次のように語ります。
うんと遠くに行こうと出航しても、まるで舵の曲ったボートみたいに
同じところに戻ってしまう
その場所こそが「私自身」だ
私は決して「私自身」から逃れることはできない
本展タイトルと同名の作品《ホーム・ポート》は、日系人も多く移り住んだ町であり、2023 年夏に大火に襲われたマウイ島ラハイナが描かれたラッセンの作品がもとになっています。広島出身であり、ラハイナへの滞在歴もある原田は、「母港」を意味するこの作品の題名を展覧会のタイトルに採用しました。したがって、本展は原田にとっての里帰り展であるともいえるでしょう。
本展では、原田が現時点の集大成とする新展開の平面作品に加えて、これまでに制作された代表的な映像/インスタレーション/パフォーマンス作品、10 代の大半を過ごした「広島時代」の初期絵画などを紹介します。多様な展開を見せる彼の制作の歩みが「舵の曲がったボート」のように母港に帰還するさまを、ぜひご覧ください。
開催概要
展覧会名|原田裕規:ホーム・ポート
会期|2024/11/30㊏—2025/2/9㊐
開館時間|10:00–17:00
※入場は閉館の30分前まで
会場|広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
休館日|月曜日(ただし1/13は開館)、年末年始(12/27—2025/1/1)、1/14(火)
観覧料|一般1,100円 (850円)、大学生800円 (600円)、高校生・65歳以上550円 (400円)、中学生以下無料
※( )内は前売り及び30名以上の団体料金
主催|広島市現代美術館
後援|広島県、広島市教育委員会、中国新聞社、朝日新聞広島総局、毎日新聞広島支局、読売新聞広島総局、中国放送、テレビ新広島、広島テレビ、広島ホームテレビ、 広島エフエム放送、尾道エフエム放送
助成|公益財団法人小笠原敏晶記念財団、公益財団法人朝日新聞文化財団
支援|令和6年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
機材協力|CG-ARTS
【前売券】※販売は11月29日㊎まで
オンラインショップ「339」、チケットぴあ〈Pコード 687-085〉
※広島市現代美術館の受付でも販売しています
関連プログラム
アーティスト・トーク
展覧会場をめぐりながら、原田裕規が展覧会についてお話しします。
日時| 11/30 ㊏ 14:00–15:00
場所|広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
※要展覧会チケット、申込不要
対談「ハワイと瀬戸内の深いつながり
講師|木元眞琴(日本ハワイ移民資料館館長)、原田裕規
日時| 12/15 ㊐ 14:00–15:30
場所|広島市現代美術館 地下1 階ミュージアムスタジオ
※要展覧会チケット(半券可)、申込不要
担当学芸員によるギャラリートーク
担当学芸員によるツアー形式の展示解説
日時| 12/21 ㊏、1/18 ㊏ 15:00–16:00
場所|広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
※要展覧会チケット、申込不要
アートナビ・ツアー
アートナビゲーターによるツアー形式の展示解説
日時|毎週㊏㊐㊗㊡ —1/5 12:10–12:25、15:10–15:25
1/11— 11:45–12:15、14:45–15:15
場所|広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
※要展覧会チケット、申込不要、11/30、12/1、イベント開催時のぞく
展覧会のポイント
◯ゲンビと同い年! 地元出身の作家による美術館初の大規模個展
1989 年開館の当館と同い年で、広島出身の作家、原田裕規による美術館初の大規模個展。TERRADA ART AWARD 2023 で1,000 組以上の作家の中からファイナリストに選出されるなど、近年注目を集める原田の代表作を一望しながら、初公開の平面作品も展示。作家によるギャラリートークや、日本ハワイ移民資料館館長との対談も開催予定。
◯自らの身体性に向き合い制作された映像作品が一堂に
24 時間にわたり捨てられた写真を見続ける《One Million Seeings》、33 時間かけて地球上の全動物の名前を朗読する《Waiting for》、ハワイで使用される日本語混じりのピジン英語で語る《シャドーイング》など、自らの身体性に向き合い、制作された映像作品が一堂に介します。
◯新シリーズ「ドリームスケープ」を一挙公開
2023 年夏に大火に襲われたハワイ・ラハイナの過去と未来が描かれた《ホーム・ポート》、日本画家・東山魁夷の代表作を参照しつつ山口県岩国市の山々が描かれた《残照》、黒川紀章設計の当館建築がモチーフになった《光庭》など、最新のデジタル技術を用いて制作された新シリーズ「ドリームスケープ」を一挙公開。
作家と作品について
原田裕規(はらだ・ゆうき)
1989 年山口県生まれ、広島県育ち。2016 年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて、社会や個人の本性(ほんせい)を「風景」や「自画像」のかたちで表現。2019 年以降は断続的にハワイに滞在し、ピジン英語に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目。2023 年にはTERRADA ARTAWARD 2023 でファイナリストに選出、審査員賞(神谷幸江賞)を受賞しました。
・《写真の山》(2017–)
不用品回収業者や産廃業者らによって集められた「捨てられるはずだった写真」による作品。2017 年から回収が始まり、現在その枚数は20 万枚以上。展覧会では、実際に手にとってこれらの写真を鑑賞することができます。
・「One Million Seeings」シリーズ(2019–)
作家によって集められた「行き場のない写真」を見届ける様子を記録した24 時間の長さの映像作品。「写真との関係性が結ばれるまで見る」というルールのもと、作家自身が24 時間ノンストップでパフォーマンスを実施。その様子が映像化されています。
・《Waiting for》(2021)
最新のデジタル技術を用いてつくられた、CG アニメーション/ナレーション・パフォーマンス作品。遠い過去/未来がイメージされて生成された空間の中を、仮想のカメラが彷徨い続けています。映像には、作家自身によって33 時間19 分にわたり、地球上に現存する全ての動物の名前が読み上げられた声が重ねられています。
・「シャドーイング」シリーズ(2022–)
ハワイの日系アメリカ人をモデルに制作された「デジタルヒューマン」が登場する映像作品。日系人がピジン英語で朗読する物語を原田がシャドーイング(復唱)し、原田の朗読中の表情がデジタル技術によって作中の人物にトラッキング(同期)されています。そこで語られているのは、広島や山口から海を渡った人々にまつわる物語です。
・「ドリームスケープ」シリーズ(2024–)
2020 年頃より世界的に流行しているCG 表現の潮流「ドリームスケープ」。本シリーズは、この流れに影響を受けて始められました。本展に出品されるのは、最新のデジタル技術を用いて描かれた作品の数々。そこではクリスチャン・ラッセン、東山魁夷、エドワード・ホッパーなどの作品が参照されながら、作家がかねてより取り組みたかったと語る「現代の風景画」の姿が提示されています。
同時期開催
ティンティン・ウリア:共通するものごと
開催中—2025/1/5㊐
コレクション展2024-Ⅱ ハイライト+リレーションズ [ゲストアーティスト:中西紗和]
開催中—12月8日㊐
コレクション展2024-Ⅲ ハイライト+ リレーションズ[ゲストアーティスト:西島大介]
12/21㊏—2025/4/6㊐
広島市現代美術館について
広島市現代美術館は、全国で初めて現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月3日にスタートしました。建物は、建築家・黒川紀章による設計で、市内を見渡す緑豊かな比治山公園に位置しています。自然の景観と調和しながら、美術館としての先駆性が表現されており、垂直軸に沿って下から順に自然石、タイル、アルミと変化する素材は、過去から未来への文明の発展や時間の流れを表し、設計者独自の「共生の思想」を体現しています。2023年3月18日、リニューアルオープン。
広島市現代美術館
〒732-0815 広島市南区比治山公園1-1
TEL: 082-264-1121 FAX: 082-264-1198