中国、北京と天津の間に位置するランファン市(廊坊市)に開館したEnnova Art Museum(館長 張子康|Director: Zhang Zikang)では、2024年10月27日(日)から「Ennova Art Biennale vol.01」が開幕しました。中国では年間150近い美術館が開館するなか、Ennova Art Museumは、マーケット主導のものとは一線を画し、世界に開かれ、世界で評価されるアートを体感できる国際美術館を目指して設立されました。官・民・大学の美術館を経て、主要な国際展での経験が豊富な館長、張子康のそうした想いで開催される「Ennova Art Biennale vol.01」は、同館で初めてとなる最大級の国際展です。ディレクターに南條史生、キュレーターには、イタリアの現代美術史家Andrea Del Guercio、中国の美術評論家で作家のShen Qilan、そして中国若手作家にも詳しい日本の沓名美和の3名が参加し、視野の広い構成を実現しました。テーマは「多元未来―人生的新展望」。地球環境をはじめグローバルな問題に直面する人類。解決の手段ともされる最先端技術はその価値観や世界観を変貌させ、アートにも応用されて、新たな世界を提示しています。こうした現代アートに注目し、その意味・意義を問いつつ、「越境」の場に生まれる「創造性」から人類の未来への可能性を読み取る4章で構成されます。それぞれの章は互いに重なり、響き合い、ゆるやかな指標として自由な解釈を促します。多様性と示唆に満ちた広大な空間は、刺激的な体験と思索の時間を提供します。
▼Entranceを飾る2大作品
メインエントランスである西口では、地球と人類の持続可能性を現代アートの創造性に追う本展を象徴するにふさわしい始まりとして、レアンドロ・エルリッヒ(アルゼンチン)の巨大な気球が迎えてくれます。本作は同館のコレクションでもあり、美術館の圧倒的な大きさも実感できます。東西に長い建築の東端にはファブリツィオ・プレッシ(イタリア)が山水からインスピレーションしたというビデオ・インスタレーションで、中国の歴史・伝統と現代を接続します。建物の内装と共鳴する空間は、雄大な景色となって水とともに流れる空気をも感じられるでしょう。
▼Section1:Sound Consciousnessから
現代アートの重要な要素となりつつある「音」に注目した第1章。
身体が発する声や音から道具や機械の音、そしてコンピュータで生み出される電子音まで、その多様性と展開にはまさに人類の歴史が刻まれています。CGを使った映像作品や電子音によるパフォーマンスなど、「音」の芸術は、先端技術を取り入れながら未来へと表現を拓きます。坂本龍一と真鍋大度(日本)は、音と時間を視覚化し、和田永(日本)は、ブラウン管モニタ-を楽器に蘇らせ、パフォーマンスを披露します。電磁波は身体を通り、見えないつながりで見る者をも巻き込んで音を奏でます。
▼Section2:Boundary Imaginationから
人間は、自身が存在する世界を認識し理解するために、さまざまな事象を分類、定義してきましたが、現実にはジャンルも境界もありません。そして創造性もまた、こうした境界を越え、他の領域と触れ合うことで発揮されることがしばしばです。この章では「越境」をキーワードに、境界線上で創造される作品を紹介します。エイミー・カール(アメリカ)は、バイオテクノロジーと3Dプリンターで細胞のドレスを生成、身体のアイデンティティを問います。セマーン・ペトラ(ハンガリー)は、アニメーションと実写によるパラレルな世界を提示し、「リアル」の概念を揺さぶります。
▼Section3:Sustainability and Environmentから
第3章では社会問題と密接に関わり合う現代アートが持つひとつのあり方を、バイオやロボットなどの技術に注目しつつ、環境問題と人類の持続可能性をテーマとした作品を展示しています。ザドク・ベン=ダヴィド(イスラエル)が創る黒い葉脈の草花の草原は、見る者の身体の移動により、カラフルな風景へと一転します。生と死の鮮やかな変転は、環境へのまなざしとともに、小さな行動の可能性の気づきと勇気をくれます。一方、劉建華(中国)は、床や壁を這う黒いブロンズで、未知なる生命体の不気味な “蔓延”を感じさせ、現代が持つ病巣と未来への不安を想起させます。
▼Section4:Multiple realitiesから
現代テクノロジーは現代を変えるだけではなく、未来に多様な可能性を持ちます。それは同時に、人間の視野や価値観にも大きく関わってきます。第4章では、生き方や哲学、マクロからミクロの世界まで、人間の存在をテーマにしたアートに未来へのヴィジョンを読み取ります。缪晓春(中国)が3Dプリンターで表すのは、人と動植物が一体化した異形の存在。それは人類の終末か理想でしょうか。また本展最大のスペースに展開する池田亮司(日本)のインスタレーション(30m)では、デジタルが織りなす音と光に侵食されて、人間の情報もまたデータに還元されうることを実感できるでしょう。
▼Ennova Art Museum Collectionとともに楽しむ
本ビエンナーレでは、同館のコレクションもまた、テーマに合わせて紹介されています。美術館の規模にふさわしい大型の作品群も、見どころのひとつとなっています。広大な国土から生まれるスケール感は、その歴史と現代の様相を内包し、まさに異なる世界観を提示してくれます。
開催概要
● 名称:Ennova Art Biennale vol.01|イノヴァアートビエンナーレ vol.01
● テーマ: 多元未来 – 人生的新展望
● 会期:2024年10月27日 – 2025年5月07日 *会期が延長しました!
● 会場:Ennova Art Museum(中国、ランファン市)
● 主催:Ennova Art Museum
● Ennova Art Museum 館長:張子康(Zhang Zikang)
● ディレクター:南條史生
● キュレーター:Shen Qilan(中国)、 Andrea Del Guercio(イタリア)、 沓名美和(日本)
● アーティスト選考委員:畠中実(日本)
● 参加アーティスト:24カ国、82組
● オフィシャルサイト:https://ennovaartmuseum.com.cn/en/exhibitions/97.html
本展の特徴
1) 国際的なアーティストのラインナップであり、日本人アーティスト11人を含む、91人のアーティストが参加。
構成は女性アーティスト23人、中国外からの参加60人、中国人アーティストは31人。
2) テーマはテクノロジー、環境、人間の生き方、そして未来へのヴィジョンの示唆となっている。
3) 音という最も非物質的な素材にも焦点を当てている。
4) 多様性の観点から多くの女性アーティストが参加している。
5) インスタレーション作品やイマーシブ(没入型)な作品、メディアアート作品などが多用されている。
Ennova Art Museum について
Ennova Art Museumは、著名な企業家・王玉錠氏によって2019年に設立され、北京・天津・河北地域の中心であるランファン市に位置し、総合文化芸術コミュニティー「シルクロード国際芸術交流センター」の中にある非営利の美術館です。日本の建築家、千鳥義典が「流れる雲」をインスピレーションに設計した近未来的な建築が特徴で、建築総面積は27万平方メートルを超えます。展示室総面積は12,000平方メートルと大規模で、アートギャラリー、劇場、コンサートホールなどの多機能スペースが集まっています。
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