中央公論新社(本社・東京都千代田区、代表取締役社長・安部順一)が刊行する『台湾漫遊鉄道のふたり』(楊双子・著/三浦裕子・訳)(原題『台湾漫遊録』/英訳版『Taiwan Travelogue』)が、全米図書協会(National Book Foundation)による2024年全米図書賞(National Book Awards 2024)翻訳部門を受賞しました。
米国を代表する文学賞を台湾の小説が受賞するのは初めての快挙です。翻訳部門では2018年に多和田葉子さんの『献灯使』、20年に柳美里さん『JR上野駅公園口』など日本人作家の受賞がありました。
全米図書賞(National Book Awards)とは、アメリカで最も権威ある文学賞の一つで、小説、ノンフィクション、詩、翻訳文学、児童文学の5部門があります。アメリカの複数の出版社グループによって1950年に創設され(現在は全米図書協会が運営)、アメリカ人作家による優れた文学作品の普及と読書人口の増加を目的としています。
【本書の日本での実績】
第10回(2024年)日本翻訳大賞受賞作。現在、5刷12,100部。
【書誌情報】
〇書名:『台湾漫遊鉄道のふたり』(原題:『台湾漫遊録』英訳版:『Taiwan Travelogue』)
〇著者:楊双子 著/三浦裕子 訳 〇判型:四六判 〇ISBN:978-4-12- 005652-9
〇発売日:2023年4月20日 〇定価:2,200円(10%税込)
○台湾、日本、アメリカの3ヶ国で刊行された。(韓国でも刊行予定)
【概要】
「千鶴ちゃん、これは運命の出会いよ! いっしょに台湾を食べ尽くしましょう!」
炒米粉、滷肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――
結婚から逃げる日本人作家・千鶴子は、台湾人通訳・千鶴と“心の傷”を連れて、
1938年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。
昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。
現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、
台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。
ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り……
国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。
あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅の終点は――
日本でも愛される台湾の食文化と、歴史に翻弄された複雑なアイデンティティが、日台の女性同士による会話劇と旅行記で味わえる、何重にも美味しい一冊。
【出版の経緯】
“台湾の面白い本を紹介する”エージェント・太台本屋が、台湾に縁のある作家の本を多く刊行する中央公論新社に作品提案があった中から、「フェミニズムがテーマ、女性が活躍する物語はないか?」と訊ね、本作を紹介いただいた。
【著者】 楊双子(Yang Shuang Zi/よう・ふたご)
1984年生まれ、台中市烏日育ち。本名は楊若慈、双子の姉(「楊双子」は双子の妹「楊若暉」との共同ペンネーム)。小説家、サブカルチャー・大衆文学研究家。本作が初邦訳の小説作品。その他の著書に『花開時節』『撈月之人』『花開少女華麗島』『開動了! 老台中』(未訳)や、著者原作のマンガ『綺譚花物語』(サウザンブックス)がある。現在は台湾の歴史を題材にした小説執筆に力を注いでいる。最新小説『四維街一號』の邦訳が中央公論新社より2025年刊行予定。
【訳者】 三浦裕子(みうら・ゆうこ)
仙台生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。出版社にて雑誌編集、国際版権業務に従事した後、2018年より台湾・香港の本を日本に紹介するユニット「太台本屋 tai-tai books」に参加。 文芸翻訳、記事執筆、版権コーディネートなどを行う。訳作に林育徳『リングサイド』、ライ・ホー『シャーロック・ホームズの大追跡』などがある。楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』で第10回日本翻訳大賞を受賞。