世界の知の集積で未来の社会価値創をリードする、NECグループの独立シンクタンク国際社会経済研究所(IISE)は、生活者実態調査の1つとして実施した「ファンクラブ加入状況と公演チケット購入と推し活」調査の結果を公開いたします。
また、ファンとアーティストの価値共創の関係を作り出す「EX(エンターテインメント・トランスフォーメーション)」を新たに提唱し、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)の観点から多様なパートナーとともに業界発展に貢献していきます。
本調査のトピック
ファンクラブの加入動機は『先行チケット購入権』が7割近くとなり、突出して高い
チケット購入時の不満として「チケット購入の困難さと不公平感」「価格」「日程の不安感」「購入プロセス」などの不満が顕在化
8割が「不正転売禁止法」に賛成するものの、チケット購入に対する不安が残る
行けなくなったチケットの有効活用や流通経路の明確さから、「公式リセール」にも8割が賛成
推し活の最大の目的は日常生活に喜びや充実感を感じることであり、ライブやイベントに積極的に参加したい意識が特長
推し活は26%が行っており、ファン同士のつながりなど、ライブやイベント体験以外のファンコミュニティに対する意識も高まってきている。
ファンクラブ・公演チケットなどをテーマとした調査を実施
18~69歳の男女を対象に、2024年8月18日~2024年8月27日の期間、「ファンクラブ加入状況と公演チケット購入と推し活」調査を実施いたしました。本調査からチケット不正転売や推し活の実態が明らかとなりました。
調査結果資料のDLはこちら
https://www.i-ise.com/jp/information/press/2024/20241128.pdf
<ファンクラブの加入状況>
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ライブ/イベントのチケット購入者におけるファンクラブの加入状況は全体平均43%。
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加入動機は『先行チケット購入権(67%)』が突出して高く、次いで『アーティストを応援できる(33%)』、『限定イベントへの参加(29%)』と続く。
<イベントの参加状況/チケット購入方法>
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29歳以下の女性のうち50%が『ファンクラブを通じて』チケットを購入。
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チケット購入方法は、『チケット会社の販売サイト』が全体ではもっともよく利用され、チケット購入回数・購入金額が多い(高い)人ほど、ファンクラブの利用率が高い。
<チケット購入時の不満・不安>
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価格に関する不満が最も高く、次いで『諸手数料などの追加料金がかかる(30%)』、『人気の公演・イベントのチケットが買えない/買いにくい(29%)』の順に高い。
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そのほか、『座席の選択ができない、または不明確』『購入後のキャンセルや変更が難しい』『ファンクラブに入っていても買えないことがある』『日程が先過ぎて予定が立てにくい』など、多岐に渡る不満が20%以上。
この結果から、「チケット購入の困難さと不公平感」「価格に対する納得感」「日程の不安感・購入後の柔軟性」「購入プロセスで感じるストレス」この4つの視点に基づいて、チケット問題・課題を解決することが望まれていると考えられる。
<不正転売禁止法に対する意識>
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内容を含む認知率は59%だが、法律の内容を提示後の賛成比率は8割に達する。
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不正転売禁止法によりチケット購入時の不公平感は軽減できると感じる一方、いざというときに「高価であれば購入できる」という安心感がなくなるとも感じる。
<公式リセールの仕組みに対する意識>
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公正取引によるリセールについては男女、年齢問わず70~80%の高水準で賛成派が多い。
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行けなくなったチケットを無駄にしないことや、流通経路が明確であることが賛成意識と関係している。
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「不正転売禁止法にも賛成」かつ「公式リセールの仕組みにも賛成」とした比率は71%に達する。
この結果から、不正転売禁止法による“リセール行動の制約”は、公式取引の仕組みとセットで構築・提供されることが好ましいことがわかる。
<推し活に対する意識>
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推し活に対するポジティブな考えかた・態度としては『推し活をすることで、日常生活に喜びや充実感を感じたい』が46%でもっとも高く、次いで『アーティストのライブやイベントに積極的に参加したい』が38%。
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自分(ファン)自身がライブやイベントを体験するだけでなく、『推しの対象をサポートする力になりたい』という意識は女性のほうが高い。
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『他のファンとの交流を深めたい』という意識は男性の方が高い。
<推し活に使う年間支出額>
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「推し活への支出額」を「推し活に対する考えかた・態度」別で見ると、『他のファンに負けたくない』という意識を持つ人の支出金額がもっとも高く154,669円。
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次いで『推し活をやめられない義務感を感じる』人は142,551円、『推しのことで気持ちの浮き沈みが多い』人は137,452円。ネガティブな感情が高額支出につながっている。
<推し活に関するソリューション・ニーズ>
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「魅力を感じる仕組み」として、『ライブやイベントのチケット偽造防止やリセールでの透明性を確保する』がもっとも高く29%、次いで『現地限定グッズの後買いサービス』が25%。今後のソリューションとして期待されている。
調査概要
調査手法:インターネット調査
対象者条件:
<スクリーニング調査>18~69歳の男女の一般生活者(n=10,937)
<本調査>過去2年以内に、音楽・演劇・演芸いずれかライブ・イベントのチケットを購入した人(n=1,216)
調査時期:2024年8月18日~2024年8月27日
調査機関:株式会社国際社会経済研究所(IISE)
調査結果資料のDLはこちら
https://www.i-ise.com/jp/information/press/2024/20241128.pdf
調査結果の利用について
調査結果の一部を転載・引用される場合は、出典元として「国際社会経済研究所(IISE)」とご記載いただきますようお願いいたします。出典元を明記せずに転載・引用を行うことや、データの一部または全部を改変することなどの行為はご遠慮ください。
ファンとアーティストの価値共創の関係を作り出すEX(エンターテインメント・トランスフォーメーション)とは
ファンクラブを通じたアーティストとファンの接点創出により、エンタメ業界は大きく変化しました。ファンの体験価値は向上し、チケットビジネスをはじめとしたファンマーケティング市場は拡大し続けていますが、一方、チケット不正転売やファンの不満の顕在化といった課題が生じています。
IISEは、これらの課題解決に、web3などを通じたエンターテインメント・トランスフォーメーション(EX、Entertainment Transformationの略)として、アーティストとファンによる価値共創の実現を考えています。EXでは、チケット販売の公平・透明性のもと、多くのファンがライブに行くことで「推し活」を活発化することにより、消費生活を最大化するとともに、日常生活の喜びや充実感が高まりウェルビーイングにつながります。 EXは、ビジネス拡大、社会課題解決とともに、心豊かな社会実現に貢献するものです。
EXの実現には、テクノロジーの活用が重要な役割を果たすと考えます。この度、東京ガールズコレクション(TGC)などを手掛けた半田勝彦氏と連携し、エンタメ業界のさらなるデジタル化とともに、チケット不正転売などの課題解決、推し活の最大化など、エンタメ業界における新たな可能性を探ります。
チケット不正転売は、エンタメ業界の継続的な課題の一つです。チケット不正転売禁止法の施行から5年が経ったものの、依然としてチケットの不正転売ははびこっており、不当な需給関係が成立しています。この課題の解決策にはEXの推進が必要であり、そしてその実現においては、web3をはじめとしたテクノロジーの活用が求められます。ファンの大半はファンクラブを通じてチケットを購入していますが、「人気の公演のチケットが買いにくい」「不正転売などにより、本当に行きたいファンが買いにくい」といった不満が顕在化しています。真正性を担保するテクノロジーであるweb3を実装することで、ファンがファンクラブを通してチケット購入する際の不公平感を取り除き、安心して購入できるチャネルの整備を目指すことができます。
また、推し活により日常生活に喜びや充実感を感じる人は多く、ライブやイベントなどの体験に加え、「推しの対象をサポートしたい」という意識も顕在化しています。EXの推進によりエンタメの体験価値を向上させ、推しの対象をサポートしていることをより実感できるようなプラットフォームづくりなどを行うことで、より活発な推し活が実現されます。
EXを推進していくためには、業界全体で足並みを揃え、社会課題の解決とビジネスの価値向上を両立させていく必要があります。
EX解説 note記事
「ファンとアーティストが特別な“つながり”を持てる未来――。」
https://note.com/nec_iise/n/n5e167a2735ee
<参考>
エンタメ業界の継続的な課題であるチケット不正転売、明るい未来に求められるものとは?
〜ビジネスプロデューサー、半田勝彦氏に聞く~
https://note.com/nec_iise/n/n51e84dac7459
国際社会経済研究所について
国際社会経済研究所(通称:IISE)は、世界の知の集積で未来の社会価値創りをリードする、NECグループの独立シンクタンクです。生活者の視点と社会の視点を持ち、中立的な立場で課題を探索、そこで得た「気づき」を起点に、未来を構想、実現への道筋を描きます。世界の多様な機関や団体、オピニオンリーダーと協働し「未来の共感」を育む中で、新たな社会価値の創造と社会への実装を目指してまいります。
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