株式会社ZOZO NEXT(本社:千葉県千葉市 代表取締役CEO:澤田 宏太郎)の研究開発組織「ZOZO研究所」が研究をおこなった「引力と斥力を制御可能なべき集合上の分布族」が、理論機械学習分野で国内最大の学会である「第27回情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2024)」において、優秀プレゼンテーション賞を受賞したことをお知らせします。本研究は当所研究員である川島 貴大と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 統計数理研究所(所長:椿 広計)日野 英逸教授が、2024年11月に同学会にて研究発表したものです。
<研究の背景>
近年、推薦システムに多様性の観点を組み込むことの重要性が高まっており、ファッションEC「ZOZOTOWN」においても同様のことがいえます。たとえば、ユーザーが過去に購入したアイテムに類似する商品群を薦める「引力」(=同質性)と、別のファッションジャンルの商品群を薦める「斥力」(=多様性)をうまく制御できれば、より良いユーザー体験につながることが見込めます。その一方で、推薦する商品集合がどの程度引力的か、あるいは斥力的かを定量化し、実際の推薦システムにどのように組み込むかが課題となっています。
<研究内容>
本研究では、引力・斥力の度合いを柔軟に制御しながら、商品集合を推薦するための基礎技術として、離散カーネル点過程 (Discrete Kernel Point Process: DKPP) という確率モデルを開発し、その理論的性質および計算機統計学的な取り扱いについて議論しました。この確率モデルでは、引力・斥力の強度を調節しながらその強度にしたがって適切な集合を生成することができ、「現在カートに入っている商品を参照し、それらに対して引力的あるいは斥力的な商品を推薦する」という操作も可能となります。また推薦システムのみならず、実験計画や確率的最適化など、機械学習における幅広い分野への応用が期待できます。
<今後の取り組みと展望>
コーディネートがファッションアイテムの集合として表現できることからもわかるように、集合データの扱いは「ファッションを数値化する」技術において、ひとつの柱となっています。一方で集合データの機械学習は未熟な領域でもあり、分野全体のさらなる進展が望まれています。本研究の応用研究も含め、ZOZO研究所では理論・応用の両面からこれらのテーマに取り組み、より利便性の高いプロダクトの構築とサービスの向上に努めてまいります。
<研究の概要>
・対象研究 : 引力と斥力を制御可能なべき集合上の分布族
・関連論文URL : https://arxiv.org/pdf/2408.01022
・学会HP : https://ibisml.org/ibis
<ZOZO研究所について>
ZOZO研究所は、「ファッションを数値化する」をミッションに掲げるZOZOグループの研究機関です。ZOZOグループが保有するファッションに関する膨大な情報資産を基に、ファッションを科学的に解明するための研究開発をおこなっています。
・所名 : ZOZO研究所(ZOZO RESEARCH)
・設立 : 2018年1月31日
・URL : https://research.zozo.com/