ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、肌に紫外線が当たってすぐにメラニン生成が始まり黒く残る持続型即時黒化(補足資料1)について研究を進め、以下の2点を発見しました。
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メラノサイトは、低Na+環境下だと、 持続型即時黒化のキー因子のひとつであるTRPA1(※1)が増加し、UVAの刺激により即座にメラニンを作りやすい状態になっていること。
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チョウジエキスとノバラエキスの複合エキスが、Na+濃度の低下によるTRPA1の増加を抑制すること。
※1 TRPA1:メラノサイトがUVAを感知し、メラニンを産生する過程で働くカルシウムチャネル。Transient receptor potential ankyrin 1。
「すぐヤケ」の原因の一つはメラノサイトのTRPA1
夏は、どんなにケアをしても日ヤケしてしまうことがあります。こうした、ケアの成果が出にくく、諦めがちな夏に対応するため、まだ知られていない隠れた要因があるのではないかと考え研究を行いました。
本研究で新たに着目したのは「持続型即時黒化」です。持続型即時黒化とは、日差しを浴びた後に “すぐに黒くなり” 残り続ける、紫外線の中のA波(UVA)による黒化です。この「すぐヤケ」の原因のひとつに、メラノサイト自身がUVAに反応して即時にメラニンを生成するルートがあり、そのキーとなる因子がTRPA1です。このことから、夏特有の要因がTRPA1に影響を与えて、夏のケアの成果を出にくくしているのではないかと考え、検討しました。
夏特有の低Na+状態で、メラノサイトのTRPA1は増加する
さまざまな要因の影響を検討した結果、低Na+環境下にて、メラノサイトのTRPA1の発現が増加することが分かりました(図1)。汗により体内のミネラルが失われる夏は、特に体内が低Na+状態になりやすく、TRPA1が増えやすいと考えられます。また、低Na+環境下でメラノサイトは、通常の環境で培養したメラノサイトに比べて、UVA照射により多くのメラニンを産生することも分かりました(図2)。これらのことから、夏のケアの成果が出にくくなる理由のひとつとして、低Na+状態によるTRPA1の増加が影響していると考えられます。
低Na+環境で増加するTRPA1を抑制するエキスを開発
低Na+環境においてTRPA1の量を抑制するエキスを探索した結果、チョウジエキス・ノバラエキスを組み合わせた複合エキスに、その作用があることを見出しました(補足資料2、図3)。
近年では、気温が急激に上がることに加え、リモートワークの普及で運動不足になりがちといわれています。そのため、体がうまく暑さに対応する準備ができず、汗にNa+が多く含まれやすくなり、体内が低Na+状態になりやすいと考えられます。今後夏場に体内のイオン環境へ配慮することは、体調の維持管理だけでなく「すぐヤケ」の回避にも繋がり、夏のケアの成果を発揮しやすくなると考えられます。
【補足資料1】 持続型即時黒化について
紫外線による肌の黒化には3種類あり、その一つが持続型即時黒化です。
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<即時黒化>
UVA照射直後に認められる黒化で、数分~数時間後には消失する色変化。体内に既に存在している還元型メラニンが酸化されることによって、より濃い色のメラニンに変わることにより起こるとされています。
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<持続型即時黒化>
即時黒化が消えた後に認められる黒化で、すぐには消失しない色素沈着であり、メラニン色素を含む表皮・角層の細胞が新しい細胞に入れ替わるとともに消失します。
メラノサイトが直接UVAを反応した直後から始まる、比較的速いメラニン産生メカニズム。今回は、「すぐヤケ」に対応すべく、持続型即時黒化に着目して研究を行いました。
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<遅延型黒化>
紫外線照射による炎症が消失する3~10日目に認められる黒化で、場合によっては数か月以上持続する色素沈着。紫外線の刺激により表皮細胞から様々なメラノサイト刺激因子等の炎症性物質が産生され、メラノサイトが活性化されることで起こる、持続型即時黒化よりも遅いメラニン産生メカニズムです。
【補足資料2】 複合エキスによる低Na+環境におけるTRPA1抑制効果
低Na+環境であっても、TRPA1の増加を抑えることができれば、メラニン産生の抑制につながると考えられます。低Na+環境での実験の結果、チョウジエキス・ノバラエキスの複合エキスにメラノサイトのTRPA1量の抑制効果があることを見出しました(図3)。
【補足資料3】 SPF、PAについて
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<SPF(Sun Protection Factor)>
UVBによるサンバーン(紫外線を浴びた後に生じる肌の赤みを伴う炎症現象)の防止効果を表し、数値が大きくなるほどサンバーンの防止効果が高くなります。
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<PA(Protection Factor of UVA)>
UVAによる短時間で皮膚が黒くなる反応を指標にしたUVAの防止効果です。「+」の数でUVA防止効果の高さを示し、例えば、「PA++++」の場合、素肌と比べて16倍量のUVAを浴びなければ黒化しないということを示しています。
UVA、UVBともに、紫外線は、日ヤケ止めを塗布していれば100%カットできるというものではありません。数時間ごとに日ヤケ止めをこまめに塗りなおすことや、日傘の併用など、複合的なケアが推奨されています。