株式会社文藝春秋(本社:東京都千代田区、社長:飯窪成幸)は、このたび、有吉佐和子の小説『青い壺』(文春文庫)を10万部重版し、同作は累計60万部を突破しました。
1976年に月刊誌『文藝春秋』で連載を開始した同作は、単行本を経て文庫化されましたが、やがて絶版に。しかし2011年に復刊し、2022年末に人気作家・原田ひ香さんの「こんな小説を書くのが私の夢です」というコメントを載せた帯を作成したところ、人気が再燃。ここから営業、宣伝、プロモーションといった複数の担当が連携して、❝仕掛け販売❞を行ったことでさらに20万部を積み上げ、今年11月までに累計50万部の大ヒットを記録しました。
文庫編集部も営業部も「まさかこんなに売れるとは」と驚くほどの異例の現象を、NHKの朝のニュース「おはよう日本」がとりあげ、11月28日に9分に及ぶ特集が放送されると、その日のうちに、全国の書店で完売が続出し、大きな話題となっています。
都内有数の大型書店である三省堂書店池袋本店の売り場担当者は、
「情報は得ていましたが、これほどとは予想していませんでした。 新潮文庫の『百年の孤独』が同番組で放送された時よりも反響が大きいです」
また、関西のある大型書店では、
「当日は朝からとんでもないくらいの数のお問い合わせを頂戴しまして、40冊ほどあった店頭在庫が当日中に売れてしまいました」
と話しています。
放送中から、ネット書店での驚異的な売れ行きをみていた営業担当は、「きょうは、書店さんからの追加注文がくる!」と気合を入れて出社。しかし、文藝春秋の営業部には、予想をはるかに上回る書店や取次からの連絡が次々と入り、営業部は総動員で、追加注文への対応と在庫の出荷手配に大わらわ。翌日までに、10万部の大重版を決定しました。
「NHKの全国放送で紹介されるということで、好影響があることを期待していましたが、正直、これほどとは、と驚いています。有吉佐和子さんの、読みやすくも鋭い文章で、悲喜こもごもの日常や人間心理の機微が軽妙に描かれている作品の力は、時代を超えて、私たちの心をつかむのだということを実感いたします。一時、入手困難になり、ご迷惑をおかけしましたが、無事に大量重版が出来し、全国の書店さんに届きました。多くの方にお読みいただけることに感謝いたします」
12月23日には、『100分de名著』(NHK Eテレ 22:25~22:50)の「有吉佐和子スペシャル」で『青い壺』特集を放送予定。さらに、編集部には他メディアからも取材の問い合わせが入っており、約50年の時を経ての『青い壺』ブームは、ますます加速しそうです。
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無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、
十余年後に作者と再会した時——。
人生の数奇な断面を描き出す絶品の13話!
■第一話
青磁ひとすじに制作を続ける陶芸家の省造。ある日デパートの注文品とともに焼きあがったその壺は見る者を魅了した。
■第二話
定年後、家でぼんやりする夫を持てあました妻は、世話になった副社長へのお礼にデパートで青い壺を買い、夫に持たせた。
■第三話
副社長である夫の部下の女性と、甥っ子を見合いさせるため二人を自宅に呼んだ芳江は、今どきの人たちに呆然とする。
■第四話
青い壺に美しく花を生けようと奮闘する芳江。孫を連れた娘の雅子が急に帰ってきて、婚家の醜い遺産争いを愚痴るのだが。
■第五話
老いて目が見えなくなった母親を東京の狭いマンションに引き取った千代子。思いがけず心弾む生活だったが……。
■第六話
夫婦ふたりで、戦後の焼け跡から始めたこぢんまりとしたバア。医師の石田は、「御礼」と書いた細長い荷物を置いて帰った。
■第七話
息子の忘れ物としてバアのマダムが届けてくれた壺をみて、老婦人は、
戦時中に外務官僚だった亡き夫との思い出がよみがえり、饒舌に語りだす。
■第八話
長女が嫁ぎ、長男はアメリカに留学。姑が他界したある日、夫にレストランに誘われ……
■第九話
女学校の卒業から半世紀、弓香は同級生たちと久しぶりに京都で集まる。戦争を経て子育ても終えた彼女たちは、家庭の状況も経済状態もそれぞれで……。
■第十話
母校だったミッションスクールの初等科に栄養士として就職した、弓香の孫娘の悠子。野菜を食べさせたいと工夫を凝らすが、ある日……。
■第十一話
世話になったシスターが45年ぶりにスペインに帰郷するときいた悠子は、青磁の壺をプレゼントする。壺はついに、海をわたる!
■第十二話
スペイン旅行中に急性肺炎になったという入院患者の男は、病室に飾った青い壺に触られそうになると、怒鳴るのだった。
■第十三話
高名な美術評論家を訪ねた陶芸家の省造。スペインで見つけた「12世紀初頭」の掘り出しものとして、青い壺を見せられたが……。
■解説 平松洋子(エッセイスト)
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無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺。
売られ盗まれ、十余年後に作者と再会するまでに壺が映し出した数々の人生。定年退職後の虚無を味わう夫婦、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、45年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自信を持つ美術評論家。人間の有為転変を鮮やかに描いた有吉文学の傑作は、読んだ後かならず誰かと語り合いたくなります。まさに本の力です。平松洋子さんの解説も必読!
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昭和6(1931)年、和歌山生まれ。
昭和31(1956)年に『地唄』で文壇デビュー。
紀州を舞台にした『紀ノ川』『有田川』『日高川』三部作、世界初の全身麻酔手術を成功させた医者の嫁姑問題を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老人介護問題に先鞭をつけ当時の流行語にもなった『恍惚の人』、公害問題を取り上げた『複合汚染』など意欲作を次々に発表し人気作家の地位を確固たるものにする。
多彩かつ骨太、エンターテインメント性の高い傑作の数々を生み出した。
昭和59(1984)年8月逝去。
※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。
出版社:株式会社 ⽂藝春秋
書 名:『青い壺』
著 者:有吉佐和子
判 型:文庫判
新装版発売⽇:2011年7⽉8日
定 価:781円(税込)
ISBN:978-4-16-713710-6
アーティスト、俳優として活動す…