ビヘイビアプロジェクトは、私たちが日常何気なく行っている「ふるまい」に焦点をあて、ふるまいの成り立ちとこれからを探る実験的アートプロジェクトです。日中韓の3カ国から、身体表現の専門家であるダンサーを2人ずつプロジェクトに招き、認知科学・歴史・哲学・デザインといった多様な分野の研究者からの協力も得ながら、東京・北京・ソウルを訪れてショッピングセンターやオフィス街など様々な場所で、フィールドワークを実施しました。
2025年2月に東京で開催する公演では、6人のダンサーがフィールドワークを通じて発見した視点をプレゼンテーション形式で共有した上で「自分たちはどのようにふるまいたいか」について、身体表現として提示するという、レクチャー&パフォーマンスの形式で発表します。
開催情報
日時:2025年2月14日(金)19:00 / 15日(土)16:00 / 16日(日)14:00
– 日本語・英語字幕あり。
– 開始時間の 30 分前よりご入場頂けます。公演時間は約 90 分を予定しています。
– 各回の公演後、ディレクターや出演者によるアフタートークを行います。各回の登壇者など詳細は Webサイトをご覧ください。
会場:代官山ヒルサイドプラザ(〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町29 ヒルサイドテラス内)
– 代官山駅徒歩 3 分 / 中目黒駅徒歩 7 分 / 恵比寿駅徒歩 10 分
– 駐車場のご利用が可能です。1 時間 600 円、以降 30 分毎に 300 円かかります。
チケット
¥3,000
販売開始:2025年1月6日(月)
予約はこちら behaviour.architectingstories.com/
– 事前予約が必要です。
– 小学生以下のお子様は保護者同伴に限り無料です。
プロジェクトリーダー/構成・演出
中澤 大輔|芸術家、デザイナー、物語活動家
人や場所、社会や習慣といった私たちの日常の背後に潜む小さな物語を収集し、再構成することで新たな物語を生み出す。演劇/建築/文化人類学の手法を用いて、オルタナティブなものの見方を発見するための体験型作品を制作。
アーティストコメント
ビヘイビアプロジェクトは、2018年に私が知人の紹介で、日中韓のダンサー6人を直接訪ねて参加を募り、アーティストたち自身の国境を越えた連帯によって立ち上げたアートプロジェクトです。2020年東京オリンピックの文化事業(Tokyo Tokyo FESTIVAL)に採択されたもののコロナ禍で中止となり、2024年4月から再始動しました。
私たちは、東京/ソウル/北京の3都市に滞在してフィールドワークを行い、人々のふるまいを比較観察するところから活動を始めました。地理的・文化的に近い東アジア3ヶ国は、似ているところもあれば違うところもあります。そんな隣人たちのふるまいを観察することで、自らの社会のあり方や自分自身を振り返るきっかけになると考えたからです。日中韓3ヶ国の政治情勢は、時に不安定になることもあります。しかし、近しい隣人だからこそ十分に議論を交わすことができれば、双方の違いを乗り越えて互いの社会をより良くするパートナーになれるはず、という想いを胸に、このプロジェクトを進めています。
ビヘイビアプロジェクトでは、6人のダンサーと共にプロジェクトを進めています。なぜならば、ダンサーは、言葉の壁を越えて、人の感情や行動を観察する能力を持っている、と考えたからです。日常生活における私たちのふるまいは、その人自身の社会的な役割や相手との関係によって、即興的に変化していく「パフォーマンス」のようです。私たちは、自らの意思によって動いていると思っていても、社会的にこうあるべきだという規範に沿って動くうちに、自分が本当は何をしたいのか見失ってしまうことがあります。社会と個人や、行動と感情の乖離といった現象を、少し離れた立場で観察しながら、自分たちがのどうありたいのかということを身体を通じて表現できるのが、ダンサーではないかと考えます。この活動は、アーティストが社会の中で果たす役割について、新たな可能性を提案するものでもあると考えています。
2月の公演では、フィールドワークを通じて得られた視点をもとに、自分たちがこうありたいと思う新たなふるまいを「上演」することで、それを観た人がの日常のふるまいを振り返り、自分の意思で変えていくきっかけを提供できればと考えています。皆様のご来場を心よりお待ちしております。 (中澤大輔)
公演に至るまでの活動
2024年4月 キックオフイベント
認知科学の研究者・細馬宏通氏をゲストに迎え、ふるまいとは何かについて議論。違和感のあるふるまいや、変えたいと思うふるまいについて、イベント参加者と共に話し合った。
2024年5月 中国ダンサーとのフィールドワーク
アーティストの中澤大輔が、Wei Man / Wang Jiamimgと共に東京とソウルに1週間ずつ滞在。社会と個人の関係やジェンダーなど、ふるまいの背景にある社会的課題を議論した。
2024年6月 日本ダンサーとのフィールドワーク
シマダタダシ / 北川結と共に、ソウルと北京に1週間ずつ滞在。周囲に対する気遣いや自意識など、自分自身のふるまいを他者のふるまいの観察を通じて深く振り返った。
2024年7月 韓国ダンサーとのフィールドワーク
東京と北京に、Ye Hyoseung / Na Hyeyoung と共に1週間ずつ滞在。自国メディアに情報が溢れる東京と、これまで知る機会のなかった北京の観察のギャップから示唆を得た。
分析・考察
フィールドワークを振り返りながら、自分自身のふるまいや、自分が住む都市にある様々な社会規範/秩序/マナーなどを振り返り、6人それぞれが「ふるまい」についての独自の焦点を検討した。
2025年2月14〜16日 パフォーマンス
日中韓6人のダンサーそれぞれがフィールドワークで感じたことを共有した上で、「自分たちはどのようにふるまいたいか」について、身体表現の形式で提示する。
ドキュメンタリー
フィールドワークや議論から身体表現に至るまで、プロジェクトの検討過程を記録。「私たちのふるまいはどこからきたのか」「私たちはどのようにふるまいたいか」をテーマにした映像ドキュメンタリーのシリーズを配信予定。
ふるまいを変えていくための実証実験
企業や自治体などと連携して、ふるまいを変える実証実験を行います。クリエイターや多様な分野の研究者との協働によって、研究・アート・ビジネスの垣根を越えた、社会を変える活動を実践していく。
振付・出演
イエ・ヒョスン/Ye Hyoseung(韓国)
ダンサー。ベルギーを拠点とするアラン・プラテルのダンスカンパニー「Les Ballets C de la B」にて長年活動しているイエ・ヒョスン。ヨーロッパでのダンス経験を活かし、韓国とヨーロッパの交流を促すような制作活動を行っている。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
自分と社会の幸せを考えた。
僕は20代の時に1年ほど東京に住んでいたことがある。当時の東京はおしゃれな人が多くて輝いていたが、久しぶりに東京に来て時代の変化を感じた。そして僕の人生はこれからどうなっていくのだろうと考えた。僕は仕事とプライベートのバランスを保ち、家族との時間を大切にしたい。そして仲間と一緒に作品をつくり続けることも大切だ。50歳を過ぎて、誰と一緒に生活し、社会のなかでどうふるまうか。今回のフィールドワークを通じて、これからの自分や社会の幸せについて考えてみたいと感じている。
ナ・へヨン/Na Hyeyoung(韓国)
ダンサー。1990年ドイツで生まれ。鮮花芸術高校を卒業後、韓国芸術大学で学士号と修士号を取得した彼女は、ダンサー、振付家、教育者としての多様な経験と、人生で感じた感情をダンス芸術に変換しようとしている。韓国女性相談センターの支援を受け、性暴力被害者のためのアートヒーリングワークショップを実施。ソウルダンスセンター主催「CO-Choreo Lab」のアーティストに選ばれ、一般向けのダンスワークショップも指導した。2023年、韓国芸術評議会(ARKO)の若手アーティストに選ばれ、人間のコミュニケーションと人間関係の複雑さを掘り下げた「untact but contact」というタイトルの作品を制作した。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
自分の感情に正直に生きる。
東京の人たちの動きは整然としているが、その背後には様々な「隠されたルール」がありそうだと感じた。韓国でも、年齢の差があると色々な気遣いをしなければいけないといった、様々な「暗黙の了解」がある。私はそういう制約からなるべく自由でありたい。自分の考えたことや思ったことをなるべく正直に話したいし、自分自身の感情に対しても素直でいたい。東京と北京での人々のコミュニケーションのふるまいの様子を観察していく中で、私は、感情を表現するというふるまいについて、関心を持っている。
ウェイ・マン/Wei Man(中国)
ダンサー・振付家・オーガナイザー。12歳の時に中国のフォークダンスを始め、2007年から2011年まで中国民族大学で振付を専攻。2010年より中国のボディアクトスタジオで活動を始め、以後、様々な劇場やアートセンターで振付家・ダンサーとして活動している。2003年にフランクフルト音楽・舞台芸術大学のコンテンポラリーダンス教育プログラムに参加。その1年後、ダンス制作と学際的なアート教育のために、Jiaming Wangと共に「コーブル&ラビット・シアター」を立ち上げ、中国国内から海外まで、劇場、音響、建築、新しいメディアなど様々な専門家を招いて作品制作や教育を行う。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
社会の中で個人の尊厳を守るために。
生きるとは、暮らすとは、そして人間的であるとは、どういうことだろう? 私たちは、社会に所属しなければ生きていけない。人は成長の過程で、家族、学校、企業といった社会の一員になり、その中で役割を果たすことによって充足感を得ることができる。その一方で、社会からの要請によって、個人がプレッシャーを感じて苦しんだり、働きすぎて身体や精神を害することもある。社会の中で個を大切にするために、私たちはどうあるべきなのだろう。私は、社会と個人のあいだにあるふるまいに、焦点を当てたい。
ワン・ジャーミン/Wang Jiamimg(中国)
ダンサー。2010年から2017年にかけて、様々分野のアーティストとの共同を通じて、表現スタイルは確立させてきた。彼の作品は、既存の舞台芸術、伝統的な表現形式、メソッド、消費するパターン、それを取り巻く社会環境に疑問を投げかけることを主題としている。 Wei Manとともに「コーブル&ラビット・シアター」を主宰。現在では、新たなメディアと駆使したパフォーマンスとプレゼンテーションに重点を置いた制作活動を行なっている。代表的な作品に「Meet Afternoon Tea」「Night Flight Party」「The Wall」「Drop Shadow」「Chromosome V」「III」など。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
無意識に埋め込まれたコードから脱出する。
東京の朝のラッシュアワー。大量の人たちが電車へと吸い込まれていく。大勢の人が整然と動く様子を見て、まるで魚の群れのようだと感じた。幼少期からの教育、メディアからの影響、その他これまでの様々な経験に基づいて、私たちは社会の中でどうふるまうべきかを、自然と身につけている。それは身体にインストールされたプログラム / コードのようでもある。私は、無意識に埋め込まれたコードを発見し、そこからどう自由になるかについて、考えている。
シマダタダシ(日本)
ダンサー。1986年横浜市生まれ。19歳からメソッド演技法を奈良橋陽子主宰UPSアカデミーで学び、その中で身体表現と出会いダンスの活動を始める。鈴木知久に師事。日々の生活にまみれたパーソナルな身体性や感情の記憶をベースに、今この瞬間にただ存在するということのリアリティを追求し、即興を軸に活動。横浜ダンスコレクションEX2013作品部門奨励賞受賞。2013年より日韓ダンス交流プロジェクトで、ソウル・八戸・横浜の3都市で公演を行う。その他、国内外で活動。現在は、都会の片隅に在る一つの現象として捉えた自身の存在とその表現をEdgeofthecityと称し、日々の移ろいを身体を軸に探究している。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
社会の抑圧から自由になる。
道を歩くとき、電車に乗るとき、公園を歩くとき。僕はその時々の状況や他人の視線を意識しながら、こうふるまうべきだという「基準」に沿って行動しているように感じる。僕には、ルールや制約から自由になりたいという欲求があるが、一方で基準に照らし合わせて「こうあるべき」だと制約をかける自分もいる。基準に従うということは、社会の中で円滑に生きる術ではあるが、自分は本当はどうありたいのかという思考回路を塞ぐ方法でもある。社会の抑圧と自らが作り上げた抑圧に対して、改めて身体に問いたい。
北川 結(日本)
ダンサー/振付家/イラストレーター。6歳からモダンバレエをはじめる。桜美林大学にてコンテンポラリーダンスを木佐貫邦子に師事。2008年より白神ももこ主宰のモモンガ・コンプレックスにメンバーとして参加。ダンサーとして木佐貫邦子、伊藤千枝子、小野寺修二、岩渕貞太など様々な振付家、演出家の作品に出演。また、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、長塚圭史、立山ひろみ演出による演劇作品にも出演している。2017年、横浜ダンスコレクション2017コンペティションⅠにて奨励賞を受賞。イラストレーター“きたがわゆう”としても活動している。
フィールドワークを通じて得られた「ふるまい」の視点
社会の中で私を生きるには。
ソウルや北京で出会った人たちは、自分の感情や考えをちゃんと相手に伝えられていていいなと思った。フィールドワークの2週間、メンバーと一緒に旅して、私は自分が今何をしたいかより、相手が何を考えているか、何を求めているかを優先して考えることが多いように感じた。本当は、必要以上に気を遣わずもっと素直にふるまえたらいいなと思う。でも、自分に素直に生きるってどういうことだろう。自分がチームの中で役割を果たし、全体として良いアウトプットが出せれば、それがいいのかなとも思う。
音楽
額田大志
作曲家、演出家。1992年東京都出身。コンテンポラリーポップバンド・東京塩麹、演劇カンパニー・ヌトミックを主宰。バンド活動と並行する形で「上演とは何か」という問いを持ち続け、演劇と音楽の領域を横断して作品の創作を行う。舞台音楽の作曲家としてはパスカル・ランベール、Q/市原佐都子、コンプソンズ、岩渕貞太などに参加。最近は、目的のない集まりを開催することに精を出している。
スタッフ・クレジット
舞台監督 : 河内崇 / 映像・記録 : 三上亮 / 音響 : 稲荷森健 / 照明 : 三浦あさ子 / 衣装・スタイリング : 藤谷香子 / グラフィック : 南部隆一、林季里 / ウェブサイト制作 : 介川貴晶 ( ペンネ株式会社 ) / ドキュメンタリー編集 : 宮井優、三木彩加 / 制作 : 岩中可南子、滝沢優子 / リサーチ協力 : 細 馬宏通、三石晃生、澤隆志、山森裕毅、武山政直、遠山暁、福田俊彰、橘翔子、日揮株式会社、上原拓真、内田綾香、認定 NPO 法人すずの会、辻麻里子、 長谷川真理子、長谷川大輔、山田佳一朗、パク・ジニョン、ラベンダー・ジャオ、馬錚、張建華、里見有祐 / 撮影協力 : SHIBUYA QWS
主催:architecting stories 合同会社
問い合わせ : bh-info@architectingstories.com