株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、新田浩之著『列車種別 探究読本』を2024年12月20日に発売します。
「列車種別」とは、「急行」や「快速」「準急」など停車駅やサービスの違いによる列車の種類を指します。おおむね、特急→急行→快速→準急→普通(各駅停車)の順に停車する駅が多くなり、「通勤」「区間」「快速」「準」などを頭に付けることで、種別を細分化している鉄道会社もあります。2024年現在、日本の大手私鉄で種別の数が一番多い路線は西武池袋線。その数は、じつに「9つ」にもなります。
日本全国の鉄道を見渡してみると、朝夕のラッシュ時のみに走る種別もあれば、1日に1本だけ走る種別もあります。長い距離を走る路線では「急行に乗ったはずなのに、いつの間にか各駅停車に変わっている」というケースもあります。この複雑怪奇さは、利用者のニーズに対応するサービスの多様化、そして会社同士の直通運転が増えたことが生み出しています。
列車種別は利用者にとって、難解かつ、ややこしいものです。しかも、ダイヤ改正が行なわれるごとに新たな種別が登場したり、停車駅が大きく変わったりすることもあります。その変遷をつぶさに見ていくと、鉄道会社がその種別を設定した理由のみならず、将来的な戦略までもおのずと見えてきます。
本書『列車種別 探究読本』は、おなじみの種別から珍しい種別まで、全国の鉄道の最新情報を集めた、新鮮な驚きが満載の一冊です。
■列車種別に関する数々の疑問に答えます!
・「各駅停車」と「普通」の使い分け、関東と関西の違いは?
・「準特急」や「特快速」…珍しい種別はどうして生まれた?
・阪神や西武が「速達列車の停車駅を分散させた」目的は?
・「特別快速」と「新快速」、JR東海ではどちらが格上?
・3路線が乗り入れるのに、急行すら停車しない駅とは?
・「特急の各駅停車区間」、関西と関東ではどんな違いが?
・貨物列車にも「特急」「普通」のような種別はある? ……
列車種別が設定された理由から、鉄道会社の思惑まで、種別のヒミツを解き明かします。
■列車種別の世界は奥が深くて面白い!(まえがきより抜粋)
「列車種別」という言葉に、皆さんはどのようなイメージを持っているだろうか。「種別」とは少々堅苦しく聞こえるかもしれないが、ようするに「特急」「急行」「普通」といった区分のことである。
主に鉄道会社で用いられている言葉であり、ダイヤとも密接な関係にある。種別を設定しないとダイヤは組めないし、ダイヤが存在しなければ、種別も細かに設定できない。
だからこそ、種別の話題は鉄道ファンのあいだで論争になりやすい。鉄道会社がダイヤ改正を発表するたびに、インターネット上で「利用しやすくなった」「いや改悪だ」といった論争が起きる。2024(令和6)年3月のダイヤ改正でJR京葉線の通勤快速が廃止された際には、ニュースでも大きくとりあげられたことは記憶に新しいだろう。やはり、ダイヤと種別は切っても切れない関係なのだ。
本書は、そんな種別の楽しみ方、そして種別を通じた鉄道会社の戦略を読み解いていく。
「快速急行」や「準急」と聞くと、多くの人は東京や大阪といった大都市圏をイメージするだろう。たしかに、種別にまつわるエピソードの多くは大都市圏にある。
しかし、本書は首都圏や関西圏のみならず、全国に視野を広げ、注目すべきエピソードをとりあげた。快速や急行は何も大都市圏の専売特許ではなく、地方私鉄にも存在する。種別を通じて、意外な鉄道の姿も見られるのではないだろうか。
また、筆者は1987年生まれであり、国鉄を知らない世代である。だが、現代では考えられないような国鉄時代の興味深い種別事情にも言及した。
「種別を知る」ことは興味が尽きないものだ。何を隠そう、筆者が鉄道に興味を持ったきっかけは種別である。「なぜ、阪神は快速急行が昼間に走るのに、阪急は昼間に走らないのか」──幼いときに抱いたこの疑問が、今に続く「鉄道探究」への道の一歩となった。
本書を、知っているようで知らない「種別」のワンダーランドの案内書として役立てて頂ければ幸いである。
■本文より
■目次より
[1章]──列車種別の基本を知る
列車種別は、いつ、どのように誕生したか/JRの種別は「特急」「急行」「普通」の3つのみ/「特急」は、じつは正式な呼び方ではない/「特急=特別料金が必要な列車」とは限らない/「各停停車」と「普通」の使い分け、関東と関西の違いは?/新幹線は開業当時、「超特急」と「特急」に分かれていた/「ホームライナー」は特急なのか、快速なのか?/豪華な車両で走る観光列車は、やはり「特急」か?/貨物列車にも「特急」「普通」のような種別はある?/日本で唯一、「直行」が走るケーブルカーとは
[2章]──種別の見せ方、見分け方
種別表示の「色分け」、鉄道会社によって違いはある?/「快速特急」「区間快速急行」…長名種別の省略事情/「各停」を種別幕に表示する関西、表示しない関東/時代とともに消えた、種別を表すヘッドマーク/同じ「普通」でも、関東と関西で座席配置が異なる理由/種別によって車体の色を分けている阪神本線/案内を見なくても、ひと目で種別を判別する方法/「快速特急」をどう示す? 各社が知恵を絞る英語表記/JRが車両の前面に「特急」と表示しない理由
[3章]──種別を読みとけば各社の戦略がわかる
列車種別の複雑化が止まらない事情とは/西武池袋線が「速達列車の停車駅を分散させた」目的は?/まさに妙技!阪神本線の種別設定を読み解く/「快速よりも普通のほうが速い」矛盾があった常磐線/各駅に停車する「特急」が走る山陽電鉄/関西の王者「新快速」。知られざる挫折の歴史/停車駅だけではない。「新快速」と「快速」の格差とは/コロナ禍を経て大変身した東武東上線の種別事情/3路線が乗り入れるのに、急行すら停車しない駅とは
[4章]──各社の“看板種別”。その変遷を探る
西武新宿線の「特急」が一新へ…予想される変化とは/阪神・山陽「直通特急」の複雑すぎる停車パターン/京阪「快速特急」ノンストップ運行が復活した経緯とは/JR東日本の「通勤快速」が次々と廃止になった理由/乗車中に種別が変わる「エアポート快特」「アクセス特急」/福井鉄道は路面電車スタイルで急行を運行/唯一無二の種別が走る兵庫県の私鉄とは/茨城県の非電化路線が「快速」を運行する事情/廃止と復活をくり返した一畑電車「特急」の歩み/東急東横線の「特急」はライバルとの競争が生んだ
[5章]──消えていった種別、よみがえった種別
京急の「エアポート急行」が廃止された意外な理由/京王の「準特急」は特急との統合により消滅/阪急で復活した「準特急」の意外なメリットとは/コロナ禍とともに消えた京阪の「深夜急行」/特急なみに飛ばした「超快速」が全廃された事情/「新特急」が生まれ、消えていった事情とは/「快速準急」「湘南急行」…小田急は珍種別の宝庫だった/ロングランゆえに種別も複雑化した近鉄大阪線/国鉄時代に全国で活躍した「循環急行」とは/料金以外にも違いがあった「寝台特急」と「寝台急行」/今では考えられない? 「普通寝台夜行列車」の旅
[6章]──西日本の鉄道、驚きの種別事情
関東は「通勤○○」、関西は「区間○○」を頑なに守るJR/近鉄ファンは即答できる?「甲特急」「乙特急」の違いとは/「大和路快速」「みやこ路快速」…名称つき快速の元祖は?/「新快速」は、じつは「特別快速」と呼ばれるはずだった?/神戸新交通ポートライナーの快速が廃止された事情/快速が少ないJR四国の特急ネットワーク戦略とは/見た目より複雑な鹿児島本線の快速停車パターン/阪急「快速特急A」が十三駅を〝通過〟していた理由/南海が運行する謎の種別「白線急行」とは/格下の快速と同じ車両に…急行「つやま」の寂しい晩年/名古屋鉄道の名物「快速特急の特別停車」とは/名鉄が運行していた「高速」とは、どんな種別だった?/「特別快速」と「新快速」、JR東海ではどちらが格上?/通過はたったの2駅という「区間快速」がある
[7章]──東日本の鉄道、こだわりの種別事情
「特急の各駅停車区間」、関西と関東ではどんな違いが?/中央線快速に「特別料金不要」の種別が豊富なわけ/都営地下鉄新宿線「急行」の存在感が薄いわけ/東京モノレールvs京急、利便性を種別で見ると…/快速と特別快速のみが走る仙石東北ライン/静岡鉄道で休止中の「急行」は復活なるか?/静岡県に「新快速」が走らない納得の理由とは/富山地方鉄道の多彩な種別と、その工夫とは/石北本線の特別快速が「18キッパー」に愛されるわけ/「国鉄風」から変化した東武伊勢崎線・日光線の種別事情/東急大井町線に「2種類の各駅停車」が走る理由/相鉄・西谷駅と阪神・魚崎駅の意外な共通点とは
■著者紹介
新田浩之(にった・ひろし)
1987年、兵庫県生まれ。2011年、関西大学文学部卒業。2013年、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について神戸市で執筆活動している。2018年より、チェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー」に就任。著書に『関西の私鉄格差』『関西の私鉄沿線格差』『日本最大の私鉄 近鉄 知らなかった凄い話』(以上、小社刊)、『いろんな民族と言語に出会う 鉄道の旅』(三冬社)がある。
■書誌情報
書名:列車種別 探究読本
著者:新田浩之
仕様:四六判/並製/224ページ
発売⽇:2024年12月20日
税込定価:1630円(本体1793円)
ISBN:978-4-309-29457-5
装丁:スタジオ・ファム
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309294575/
出版社:河出書房新社