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このたび東京都写真美術館は、「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展を開催します。
鷹野隆大(1963-)は、写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家、アーティストです。鷹野は『IN MY ROOM』に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、〈毎日写真〉や〈カスババ〉といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降、「影」を被写体とした写真の根源に迫るテーマにも取り組んでいます。
本展のタイトルである〈カスババ〉とは、鷹野の代表的な作品シリーズのタイトルであり、カスのような場所(バ)を意味する造語です。本展では、日常をテーマとしたスナップショットシリーズを中心に、初公開作品も含めた約120点を紹介。写真のみならず、映像、インスタレーションと多岐にわたる表現方法で、実験、再編しながら新たな表現に挑戦し続ける鷹野の制作に迫ります。
大規模な自然災害や感染症の世界的流行、経済発展による環境破壊や都市開発など、私たちは急速な時代の変化の渦中を生きています。鷹野は美しいものだけではない現実を受け入れ、弱いものもみにくいものもそのまま、むき出しのイメージを見る者へ提示します。私たちは、身近でありながら目を凝らして見ることのない、自身が生きる日常の豊かさと混乱を、鷹野の作品を通しあらためて目にするでしょう。初公開作品を含め鷹野の軌跡を概観する本展が、出口が見えなくなりつつあるこの日常を生きのびるヒントとなればさいわいです。
本展のみどころ
総合開館30周年を記念した展覧会第一弾
東京都写真美術館は、写真・映像の専門美術館として、1990年の一次施設開館を経て、1995年恵比寿ガーデンプレイス内に総合開館しました。2025年1月に総合開館30周年を迎えます。本展はその記念となる展覧会の第一弾として、当館の重点収蔵作家である鷹野隆大の多彩な作品を紹介します。展示構成からグラフィックデザインまで趣向を凝らした本展で、現在進行形の鷹野の表現をお楽しみください。
展覧会タイトル「カスババ ーこの日常を生きのびるために—」に込めた想い
鷹野は、1998年から毎日欠かさず写真を撮ることを自身に課し、現在進行形で膨大な数の写真を生みだしています。本展では、その中からセクシュアリティ、日常、影といった主題を軸に、これまでの未発表作品を多数紹介。日常の光景のありのままを、むき出しのイメージとして見る者へ提示します。決して美しいものばかりではない、私たち自身が生きる今を肯定し、再発見していく展覧会です。
「カスババ」とはわたしの造語で、滓(カス)のような場所(バ)の複数形である。
この国に暮らしていると、どうしようもなく退屈で取り留めのない場所によく出会う。
かつてはそんな場所に出会うたびに、なるべく見ないようにしたものだった。
しかしあるときから、そんな場所こそが自分のもっとも身近な場所であり、
自分の思考を育んできたものではないかと考えるようになった。
鷹野隆大(本展図録より)
鷹野の多彩な表現方法を用いた作品と、建築家・西澤徹夫による展示構成
鷹野が提示した「都市空間」をキーワードに西澤が空間を構成し、それと並行して鷹野も作品構成を更に変化させてくという、複層的なプロセスを幾度となく重ねていきました。印画紙に直接焼き付けるフォトグラムの技法や、古典技法を用いた作品、映像や、インスタレーションといったさまざまな手法を用いた鷹野の作品が、動的な表現へと昇華します。都市になぞらえ、整然と整備された公園や、煩雑な路地裏、相矛盾する要素を取り入れた空間を自由に回遊し、鷹野の世界観を体感できる展示になります。
金曜日の夜限定!映像作品を特別上映
ビルの陰に花火が打ちあがる様子を撮影し、その音とイメージのずれに注目した映像作品、《花火》(2007)を、会期中の毎週金曜日18:00~20:00、館内のオープンスペースにて特別上映します。
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グラフィックデザイン
デザイナー・北川一成による2種類のメインデザイン
本展のグラフィックデザインは、2024年JAGDA第26回亀倉雄策賞を受賞した北川一成が担当しました。モノクロのイメージと、鷹野の作品の印象を3色の帯状のグレーで表現した2種類のデザインは、特徴的な文字組と余白表現で、本展を強く印象付けます。デザインを進める中で、鷹野と北川はお互いのアイディアを出し合い、一種のコラボレーションのように制作しました。会期中には二人の対談を予定しています。
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主な出品シリーズ
〈IN MY ROOM〉に代表されるセクシュアリティをテーマとする作品。日常生活の中で撮影を続ける〈毎日写真〉と、そこから派生した〈カスババ〉〈カスババ2〉。影を被写体とした〈Red Room Project〉や、コロナ禍に制作された最新作〈CVD19〉などの作品群を紹介します。
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作家プロフィール
鷹野隆大 Takano Ryudai
1963年福井県生まれ。セクシュアリティをテーマに1994年より作家活動を開始。2006年、写真集『IN MY ROOM』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。毎日欠かさず撮ることを自らに課したプロジェクト〈毎日写真〉を 1998年に開始し、その中から日本特有の無秩序な都市空間の写真を集めた『カスババ』を2011年に発表。その後、東日本大震災を機に影をテーマに様々な作品制作に取り組んでいる。2021年、個展「鷹野隆大 毎日写真 1999-2021」(国立国際美術館、大阪)を開催。2022年、第72回芸術選奨文部科学大臣賞受賞(美術部門)、第38回写真の町東川賞国内作家賞受賞。
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関連事業
担当学芸員によるギャラリートーク
3月7日(金)14:00~
4月4日(金)14:00~(手話通訳付き)
5月2日(金)14:00~(手話通訳付き)
※当日有効の本展チケット、展覧会無料対象者の方は各種証明書等をお持ちのうえ2階展示室入口にお集まりください。
出品作家とゲストによる対談
3月15日(土)ゲスト:岡真理(現代アラブ文学研究者、早稲田大学教授)
4月5日(土)ゲスト:北川一成(デザイナー、GRAPH代表取締役)
5月3日(土)ゲスト:丹尾安典(雑本雑学者、早稲田大学名誉教授)
5月24日(土)ゲスト:倉石信乃(詩人、批評家、明治大学教授)
時間:15:00~16:30
会場:東京都写真美術館 1階ホール
定員:190名
参加費:無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布します
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展覧会図録
『鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―』
サイズ:A5判 ページ数:未定 発行日:2025年3月31日(予定)
価格:3,960円(税込) 発行:株式会社水声社
論考:沢山遼、伊藤亜紗、高嶋慈、遠藤みゆき(東京都写真美術館 学芸員)
※本展の展示風景を収録するため、開幕後会期途中からの発売となります。詳細は、当館ウェブサイトをご確認ください。
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開催概要
展覧会名|
(和)総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―
(英)TOP 30th Anniversary Takano Ryudai: kasubaba Living through the ordinary
会 期|2025年2月27日(木)~6月8日(日)
会 場|東京都写真美術館 2階展示室
主 催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
電 話|03-3280-0099 WEB|www.topmuseum.jp
開館時間|10:00-18:00(木・金曜日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日|毎週月曜日(ただし、5月5日[月]は開館、5月7日[水]は休館)
観覧料|一般700円(560円)、学生560円(440円)、中高生・65歳以上350円(280円)
※( )は有料入場者20名以上の団体、当館映画鑑賞券提示者、各種カード等会員割引料金
※小学生以下及び都内在住・在学の中学生、障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料
※オンラインで日時指定チケットを購入いただけます。
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