昭和7年生まれ、戦中世代の作家・五木寛之さんが、これまで直接言葉を交わした人々の表情や存在感、取り巻く時代の雰囲気を鮮やかに蘇らせた46編のエッセイ集『忘れ得ぬ人 忘れ得ぬ言葉』(新潮選書)を、2025年1月23日(木)に新潮選書より刊行いたします。
昭和100年、戦後80年となる2025年に合わせて、著者が出会い、すでに鬼籍に入った人々(寺山修司、小林秀雄、徳大寺有恒、八千草薫、秋山庄太郎、三木卓、瀬戸内寂聴、藤子不二雄A ほか計46名)との交友が綴られています。「昭和のこころ」が浮かび上がる「短編小説」のような筆致が、深いノスタルジーを誘います。
◆寺山修司 ぼくはあなたよりも、あなたが読んでいる本に興味があるんです
◆藤子不二雄A みんな薄情なんだなあ
◆小林秀雄 人間は生まれた時から、死へ向かってとぼとぼ歩いていくような存在です
◆八千草薫 激しい豪雨ではなく日本らしい雨期になって欲しいです
◆秋山庄太郎 鍛えれば歯茎でスルメでも噛めるんだ
◆瀬戸内寂聴 鏡花賞ほしいから選考委員やめようかな
◆大原麗子 やっぱり体温が伝わってくるって、いいね
◆徳大寺有恒 命、お預かりします
◆三木卓 ぼくらは同じ刻印を背おった人間だから
◆父・信藏 寝るより楽はなかりけり。浮き世の馬鹿が起きて働く
■著者コメント
長大な伝記によって再現される人物像もあるだろう。詳細な資料によって描きだされる人生もあるかもしれない。しかし、一時の出会いのなかで、ふと、ぽつんともらした一言に、その人物の真実があざやかに反映することもあるのではないか。
私がこの世界でもっとも深い関心を抱いているのは、個人である。長文の経歴でもなく、ジャーナリズムでの紹介でもない。一個の人間として、すべての人々と生き身で接し、一瞬の時間を共有した。その瞬間のワンショットが、この一冊のページに反映していると言っていい。
■書籍内容紹介
「チグハグさ」が魅力の寺山修司の才能、小林秀雄が漏らした死の真実、墓場までイメージを背負って去った八千草薫、徹夜麻雀で見せた秋山庄太郎の悪ガキ振り、瀬戸内寂聴との長く不思議な縁、徳大寺有恒がヤクザ映画の主人公のように放った一言、追放者である人間の印を「刻印」された三木卓――。甦る昭和の思い出46編。
■著者紹介:五木寛之(いつき・ひろゆき)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。1947年に北朝鮮より引き揚げ。早稲田大学文学部ロシア文学科に学ぶ。1966年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、1967年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、1976年『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。著書は『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風の王国』『風に吹かれて』『親鸞』『大河の一滴』『他力』『孤独のすすめ』『マサカの時代』『こころの散歩』『背進の思想』『捨てない生きかた』『私の親鸞』『こころは今日も旅をする』など多数。リチャード・バック『かもめのジョナサン』など訳書もある。
■書籍データ
【タイトル】忘れ得ぬ人 忘れ得ぬ言葉
【著者名】五木寛之
【発売日】2025年1月23日(木)
【造本】新潮選書/四六判変型ソフトカバー
【定価】1,705円(税込)
【ISBN】978-4-10-603920-1