ご家庭に人体認識技術を搭載した機器を設置し、テレビスクリーンへの「アテンション(注視)」を測るREVISIO株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 郡谷康士、以下REVISIO)は、2024年の大河ドラマ『光る君へ』を含む、過去3年分の大河ドラマ作品について視聴質分析を公開しました。
今回分析対象としたのは2022年の『鎌倉殿の13人』、2023年の『どうする家康』、2024年の『光る君へ』です。3作品の属性別注目度データを基に、近年の大河ドラマの視聴傾向を振り返ります。いよいよ1月5日にスタートする2025年大河ドラマ『べらぼう』の見どころもお伝えします。
※注目度とは?
テレビの前にいる人(滞在者)のうち、テレビ画面に視線を向けていた人(注視者)の割合を表します。シーンに注目している度合いがわかります。
直近大河ドラマ3作品を注目度データで振り返る
毎年、さまざまなアプローチで視聴者に感動と興奮を与えてくれるNHK大河ドラマ。そんな大河ドラマの歴史は1963年までさかのぼります。幕末の大老・井伊直弼(主演:二代目 尾上松緑さん)の生涯を描いた第1作目「花の生涯」の放送開始から61年が経ち、これまで63もの作品が放送されてきました。今回の記事では、そんな日本を代表するドラマシリーズである大河ドラマの、直近3作品である「鎌倉殿の13人」「どうする家康」「光る君へ」の関東地区地上波放送における注目度データをもとに、近年の大河ドラマの視聴傾向を探っていきます。
恋愛要素が強かった「光る君へ」は女性視聴者からの高い支持
2024年に大きな話題を集めた「光る君へ」は、女性視聴者の注目度が高い傾向にあったことがわかりました。特に女性若年層の注目度に関しては47.1%と過去3年で最高であり、「鎌倉殿の13人」の39.7%と比較すると7.4%ものギャップがあります。
その理由としては、
・大河ドラマの中でも恋愛要素が強めであったこと
・多数の若手人気俳優の起用
が考えられます。脚本は「ラブストーリーの名手」と評される大石静さんで、「功名が辻」「ふたりっ子」という長編作品でも脚本を務めています。主役の紫式部(まひろ:吉高由里子さん)について明らかでない部分が多いことを逆手にとって描かれた大胆な恋愛模様が、多くの女性視聴者に好評を博しました。また、貴族中の貴族・藤原公任を演じる町田啓太さんを筆頭に、一条天皇役の塩野瑛久さんや、双寿丸を演じる伊藤健太郎さんなど多数のイケメンが登場し注目を集めました。
「どうする家康」では新しい家康像が若年層の心を掴んだか
2023年大河ドラマ「どうする家康」は、「光る君へ」とは逆に男性若年層の注目度が過去3年で最高となりました。これは徳川家康という属性を考えると非常に興味深い結果といえます。
徳川家康は狡猾で老練な戦国大名というパブリックイメージであり、その人生は長く過酷な忍耐を強いられてきました。現代の男性若年層から共感を得られる人物像とはかけ離れています。実際にこれまでに大河ドラマで家康を演じてきた俳優も、「功名が辻」の西田敏行さんや、「江〜姫たちの戦国」の北大路欣也さんなど芸能界でも大御所といわれる名優でした。
しかし、「どうする家康」では家康役にアイドル出身の「嵐」の松本潤さんをキャスティングし、従来の家康のパブリックイメージとは真逆の、「ツライことから逃げ、自分のしたいことだけしたい」という、現代の若者が共感しやすいキャラクター設定としたことが男性若年層の支持を得られた要因といえるのではないでしょうか。
また、女性若年層の注目度も45.9%と比較的高く、「光る君へ」の藤原のF4に近い立ち位置である、徳川四天王(本多忠勝役に山田裕貴さん、榊原康政役に杉野遥亮さん、井伊直政役に板垣李光人さん)をイケメン若手俳優で固めた(酒井忠次役の大森南朋さんだけ少し属性が違いますが)効果があらわれています。
「鎌倉殿の13人」はユーモア溢れる脚本で様々な視聴層を魅了
最後に、2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ですが、平均世帯視聴率は過去3年の作品の中でダントツの9.3%(REVISIO調べ)という数字を誇っています。また、個人全体の注目度は71.2%と最も高く、様々な層の視聴者を「くぎづけ」にしてきたことが分かります。
「鎌倉殿の13人」がこれほど支持された要因はやはり、歴史ドラマでありながらユーモアあふれる三谷幸喜さんの脚本にあったのではないでしょうか。
三谷さんの前作である2016年大河ドラマ「真田丸」も、大河ドラマ史に残る傑作でしたから、三谷さんの脚本というだけで視聴を決めていたファンが大勢いたことは想像に難くありません。鎌倉時代初期というのは相当に血なまぐさい権力闘争が日常的に繰り広げられる時代ですが、全編を通してコミカルな味付けがされており、大河ドラマを欠かさず視聴する視聴者層を魅了しつつ、普段は時代劇を観ない視聴者層も楽しめるストーリー展開と演出は三谷さんにしかできない秀逸なものでした。
人気のカギは「ギャップ」にあり?
3作品が人気を得た要因には、「ギャップ」をうまく活用しているという共通点がみられます。「光る君へ」では、平和そうで現実味のない平安時代の貴族たちを、血肉が通う生々しい存在として描き、「どうする家康」では、過酷な人生を忍耐で乗り切った徳川家康をゆるーく描き、「鎌倉殿の13人」では、血で血を洗う権力争いをコミカルに描いています。そういった「ギャップ」が、日本が誇る長寿コンテンツである大河ドラマにこそ、必要不可欠な要素であるといえそうです。
REVISIOの視聴質ブログでは、上記3作品をさらに深堀して解説しております。ぜひご覧ください。
いよいよ1月5日(日)スタート『べらぼう』
いよいよ今週から放送がスタートする2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。横浜流星さん演じる主人公・蔦屋重三郎は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した版元(現代でいうところの出版社に近く、書店も兼ねる)です。18世紀後半の江戸が舞台となっており、この時代が大河ドラマで扱われるのは初めてとなります。
蔦重(つたじゅう)と呼ばれた蔦屋重三郎は、数多くの作家・浮世絵師の作品をプロデュースし、江戸を中心とした町人文化・化政文化の隆盛に大きく寄与しました。蔦重は企画・立案・編集・勧誘だけでなく、蔦唐丸(つたのからまる)の名で自ら狂歌や戯作の制作もおこなうなど、その活動は多岐に渡ります。
押さえておきたい「べらぼう」3つの見どころ
見どころ①「当時の江戸カルチャー」
大河ドラマでこの時代が描かれるのは初めてということもあり、これまでにない視聴体験が得られることは間違いありません。本作の時代考証を務める山村竜也さんは、多くの歴史ものの著作を執筆しており、大河ドラマでは2004年「新選組!」、2010年「龍馬伝」、2013年「八重の桜」、2018年「西郷どん」の時代考証を務めました。江戸時代の文化に精通している山村さんが制作に参加することで、江戸カルチャーの魅力が余すところなく展開されるのではないでしょうか。
見どころ②「豪華なキャスティング」
大河ドラマといえば豪華すぎるキャスティングが毎年話題となりますが今年も負けていません。大河ドラマ主演経験者では田沼意次役の渡辺謙さん(1987年・独眼竜政宗)と語りの綾瀬はるかさん(2013年・八重の桜)が出演します。大物クラスでは須原屋市兵衛役・里見浩太朗さんや松平武元役の石坂浩二さん。この4人は画面に出てきただけ(綾瀬さんは声だけかも知れませんが)で圧倒されてしまいそうですね。主演クラスでは一橋治済役の生田斗真さん、喜多川歌麿役の染谷将太さん、鳥山検校役の市原隼人さん、りつ役の安達祐実さん。名バイプレーヤー枠では高橋克実さん、正名僕蔵さん、伊藤淳史さん、かたせ梨乃さん、山路和弘さん、片岡愛之助さん、西村まさ彦さん、安田顕さん、尾美としのりさん、眞島秀和さん、相島一之さん。イケメン・美女枠では、何といっても主演の横浜流星さんの存在が際立っています。
見どころ③「幕府パート」
おそらく本作は、蔦重を中心とした江戸の市井パートと、田沼意次(意次失脚後は松平定信)を中心とした幕府パートの二本立てで物語が展開していくでしょう。意次が幕府内でどのような立ち回りを見せるのか。そして、意次が失脚にいたる政権交代劇がどのように描かれるのかは本作の大きな見どころです。また、意次の次に実権を握る松平定信が蔦重の事業に多大な影響をおよぼすことを考えると、蔦重と幕府による政策は切っても切れない関係にあります。田沼意次といえば、ひたすら賄賂を受け取った悪徳政治家のイメージが付きまといますが、本作の放送を機に、彼の人気は爆上がりすると予想しています。藤原道長は「光る君へ」が放送される以前では、傲慢な独裁主義者のイメージが強かったと思いますが、今では「やさしげでいいやつ」といったイメージに変化しつつあります。これと同じ現象が起こるのではないでしょうか。そして松平定信は蛇蝎のごとく嫌われてしまいそうですね。
さらに、REVISIOの視聴質ブログでは物語のキーマンとなる蔦重の「7人のビジネスパートナー」について詳しくご紹介しております。これを知っておけば「べらぼう」が楽しめること間違いなしです。
ちなみに、前半で触れた「ギャップ」という点で、「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」という作品は、存在そのものがすでに「ギャップ」であると言えるのではないでしょうか。「NHK大河ドラマ」という堅いイメージのコンテンツで、「吉原」という究極の舞台が、「ギャップ」以外のなにものでもないからです。こんなに攻めた題材をあつかう大河ドラマは初めてかもしれません。
いよいよ初回放送は1月5日(日)。REVISIOでは昨年に引き続き、大河ドラマの分析記事を毎週リリースしていきます。「べらぼう」の初回放送では果たしてどんなシーンが注目されるのか、どうぞお楽しみに。
■テレビ番組の視聴率・注目度を無料でチェック!視聴データ公開サイト「RE.Source」
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