アメリカではリベラル派が支持を失い、世界各地でもリベラルな価値観を否定する声が増えています。その原因はどこにあるのでしょうか。30年前に『歴史の終わり』を記して冷戦の終結を予見し、自由民主主義の最終的な勝利を唱えた世界的思想家フランシス・フクヤマが根本に切り込みます。
米大統領選でリベラル派の民主党は歴史的大敗を喫しました。また世界に目を向けても、リベラルな価値観を否定する声は大きくなっています。近年、民主主義の危機が叫ばれていますが、フクヤマによると、本当に危機にあるのは民主主義ではなくリベラリズムだといいます。
なぜリベラル派は信頼されなくなってしまったのでしょうか。そしてリベラリズムはなぜ攻撃されるのでしょうか。
フクヤマはその原因をここ数十年の間におきたリベラリズムの変質にあると指摘します。その変質を明示したうえで、本来のリベラリズムを定義し、リベラリズムへ向けられる理論的批判に答えます。そして、テクノロジーの発達や国際化がもたらす現実的な脅威や具体的な課題について検討します。
多様な政治的立場を包含する「大きな傘」としてのリベラリズムの真の価値を取り戻すことは可能なのか。これからの社会を考えるための必読書です。
■書籍紹介
リベラリズムが右派のポピュリストや左派の進歩派から激しい攻撃を受け、深刻な脅威にさらされている。だがそれは、この思想が間違った方向に発展した結果であり、本質的な価値に疑いの余地はない。多様な政治的立場を包含する「大きな傘」としてのリベラリズムの真の価値を原点に遡って解き明かし、再生への道を提示する。
■著者紹介
フランシス・フクヤマ Fukuyama,Francis
1952年生まれ。アラン・ブルームやサミュエル・ハンティントンに師事。ランド研究所や米国務省などを経てスタンフォード大学シニア・フェロー兼特別招聘教授。ベルリンの壁崩壊直前に発表された論文「歴史の終わり?」で注目を浴びる。主著に『歴史の終わり』、『政治の起源』、『政治の衰退』など。
訳者)会田弘継 アイダ・ヒロツグ
1951年生まれ。東京外国語大学卒。共同通信社でジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任し、2023年3月現在は関西大学客員教授。アメリカ保守思想を研究。著書に『追跡・アメリカの思想家たち〈増補改訂版〉』(中公文庫)、『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『世界の知性が語る「特別な日本」』(新潮新書)などがあるほか、訳書にフランシス・フクヤマ『政治の起源(上・下)』『政治の衰退(上・下)』(ともに講談社)、ラッセル・カーク『保守主義の精神(上・下)』(中公選書)などがある。
■書籍データ
【タイトル】リベラリズムへの不満
【著者名】フランシス・フクヤマ著、会田弘継訳
【発売日】2023年3月17日
【造本】ハードカバー
【本体定価】2,500円(税込2,750円)
【ISBN】978-4-10-507321-3