株式会社シーエムシー出版(本社:東京都千代田区神田錦町1-17-1、代表取締役:金森洋平)は、PFOS、PFOA問題による有機フッ素化合物の一部規制を背景に、精緻な分子設計、環境にやさしい高機能性材料の開発を念頭に置いた近年注目の有機フッ素化合物の各種合成法ならびに応用展開を解説した書籍『有機フッ素化合物の合成と応用最前線(監修:今野勉/京都工芸繊維大学)』(定価:税込80,300円)を、2025年1月31日に発売いたします。本書籍は、当社ECサイトおよび全国の書店にてご購入いただけます。目次などの詳細については以下をご覧ください。
刊行にあたって
本書は、2018年出版の「有機フッ素化合物の最新動向」の後続書として、今回、刊行されるに至った。前書に大きな好評をいただいたことも一因ではあるが、この6年程度の年月の間にも、有機フッ素化学が大きく発展したことにほかならない。例えば、光レドックス触媒作用を基盤としたラジカル発生法の新潮流が有機フッ素化学にも広く波及し、フルオロアルキルラジカルによる分子変換法が進展した。また、強固な炭素―フッ素結合を、炭素―炭素結合などへ化学変換する手法に加え、炭素―フッ素結合に多重結合を挿入する “カルボフッ素化反応”も多く見出され、原子効率の高い反応として注目を集めるようになった。
こうした学術的側面からの研究が盛んに行われてきたことはもちろん、産業界においても依然としてフッ素系材料への期待は大きい。例えば、低分子医薬/農薬への依存度は未だ大きく、従来同様、生理活性の向上、あるいは特異な生理活性の発現を目論み、フッ素原子導入を試みる医農薬開発は後をたたない。また、フッ化アルキル化合物の偏析に起因する自己修復型フッ素エラストマーが開発されるなど、“フッ素原子”ならではの特徴を生かした材料開発が散見される。
とはいえ、近年のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにペルフルオロオクタン酸(PFOA)問題が、日常生活の中でも大きくクローズアップされるようになり、有機フッ素化合物の使用が一部規制されるようになった。これに伴い、各社、躍起になって代替材料を模索している。こうした現状は、今後もしばらく続くことと予想されるため、有機フッ素化合物の開発においては、PFOSやPFOAを使用せず、また、分解などを通じてそれら分子を発生しない材料に焦点を当て、精緻な分子設計のもと、環境にやさしい高機能性材料を開発していかなくてはならない。(本書「はじめに」より抜粋)
著者
今野 勉 京都工芸繊維大学
網井秀樹 群馬大学
村田裕祐 名古屋工業大学
住井裕司 名古屋工業大学
柴田哲男 名古屋工業大学
西本能弘 大阪大学
安田 誠 大阪大学
渕辺耕平 筑波大学
市川淳士 (公財)相模中央化学研究所
矢島知子 お茶の水女子大学
山田重之 京都工芸繊維大学
安井基博 京都工芸繊維大学
濱島義隆 静岡県立大学
江上寛通 静岡県立大学
西形孝司 山口大学
仙波一彦 京都大学
川本拓治 山口大学
小池隆司 日本工業大学
知名秀泰 同志社女子大学
菊嶌孝太郎 立命館大学
土肥寿文 立命館大学
ほか 計42名
目次
第1章 有機フッ素化合物の合成
1 トリフルオロメチル化反応の新展開
2 フッ化超原子価硫黄化合物の合成
3 炭素-フッ素結合への1炭素ユニットの挿入反応によるフッ素化合物の新規合成法
4 フルオロカルベンによる環フッ素化ヘテロ五員環の構築法
5 重付加によるフルオロアルキル-アルキル交互型ポリマーの合成
6 CF3-アルキンを用いた含窒素ヘテロ環構築
7 触媒的不斉フッ素化反応
8 キラル第三級アルキルハロゲン化物とその類縁体を用いる立体特異的フッ素化反応開発
9 フッ化アリール金属反応剤の合成法
10 ワンポットラジカル反応による効率的な有機フッ素化合物の合成
11 光触媒作用を基盤としたラジカル的フルオロメチル化法
12 メタルフリー型含フッ素ヘテロ環合成を志向した環状ジケトン類のフッ素化/開環反応
13 高度に求電子的な1,1-ビス(トリフリル)エチレンの合成化学的活用
14 フッ素ガスを用いた全フッ素化三次元分子の合成と機能開拓
15 ジフルオロメチレン基導入反応の開発:フッ素化生体アミンの合成と機能評価
16 複合糖質の機能改変:フッ素のポテンシャルを検証する
17 不斉アミン触媒を用いた新規フッ素導入法
18 N-F共有結合型反応剤を用いた反応開発
第2章 応用
1 高度にフッ素化された化合物による核酸の細胞内送達
2 フッ素系医薬の最近の動向
3 フッ素系農薬の最近の動向
4 フルオロアクリレート系高分子薄膜の分子鎖凝集構造と機能特性
5 室温で自己修復するフッ素エラストマーの設計と開発
6 フッ素ゴムの架橋について
7 フルオロカーボン類の最新動向
8 フッ素系π共役高分子材料の合成と機能化
9 国際条約と欧州・日本における有機フッ素化合物(PFAS)規制の最新動向