市場調査会社「Mintel Group」の日本法人である株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、2024年9月に発刊したミンテルジャパンレポート「ヘルシー食習慣トレンド – 日本 – 2024年」の中で、世界の健康的な食生活に関する市場と、日本におけるトレンドとその課題について明らかにしました。
※ミンテルは、ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。
宴会や帰省など、食生活の乱れがちな年末年始を過ぎた2月は、薄着になる春に向けて体調管理を見直す時期かと思います。そのような中、日本人の慢性的な栄養不足の問題が、特に若い世代で深刻化していることが明らかになりました。ミンテルの調査によると、Z世代*女性の6割が健康的な食生活を始めた動機として、「外見の改善」をあげていますが、同世代の過半数が食品や栄養に関する正しい知識の重要性を認識していないことも判明しました。この状況が、脂質や塩分の過剰摂取やアンバランスな食事制限を招き、たんぱく質や食物繊維、カリウムなどの慢性的な栄養素不足につながっているとみられます。
一方で、世界では健康意識の高まりとともに、個人の健康ニーズに応える製品が注目を集めています。特に手軽にたんぱく質を摂取できる「クリアプロテイン」が、その代表例として挙げられます。ミンテルの調査によると日本でも購買意欲を高める食品の特徴として「たんぱく質が豊富」をあげる割合が4割を超えます。この新しい形態のプロテイン製品が、食生活が乱れがちな若者たちの、バランスの取れた栄養摂取をサポートする新たな選択肢として期待されています。
*17-29歳。本レポートで対象としているのは18歳以上のみ
※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『ヘルシー食習慣トレンド 2024年』より】とご明記ください。
ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://www.mintel.com/jp/jr-feb-2025/
多くの日本人は栄養摂取量が不適切!
高齢男性の4割はたんぱく質が不足、若年層の8割はカリウムが不足?
東京大学が実施した日本人を対象にした全国規模の食事記録調査**では、日本人集団における習慣的摂取量は、ほとんどの栄養素において不適切であることが明らかになりました。多量栄養素(たんぱく質、総脂質および飽和脂肪酸からのエネルギーの割合や食物繊維など)と微量栄養素 (ビタミンA・C・B1・B2、カルシウム、鉄、カリウムなど)については、すべての性・年齢層で摂取不足の割合が高い結果となり、対象者の29-88%がカルシウムの摂取不足、89%以上がナトリウム(食塩)の過剰摂取であることがわかりました。また、不適切な栄養摂取は、特に青年や若年成人において顕著に現れるという結果も出ています。
加えて、成人(18-79歳)について習慣的な摂取量が目標量***を下回る割合を見ると、高齢男性は4割がたんぱく質不足、若年層では男女ともに食物繊維、カリウムの摂取不足が顕著でした。
**32都道府県に住む1歳から79歳の日本人4,450人を対象に、2016年から2020年の各季節に各季節に2日ずつ、合計8日間の秤量(ひょうりょう)食事記録調査を実施
(東京大学大学院医系研究科 栄養疫学・行動栄養学講座 篠崎奈々特任助教らの研究グループによる研究。研究成果はNutrients誌に掲載)
***目標量:生活習慣病の発症予防を目的として、特定の集団において、その疾患のリスクや、その代理指標となる生体指標の値が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量で、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
出典: Shinozaki, Nana, et al. “Usual nutrient intake distribution and prevalence of nutrient intake inadequacy among Japanese children and adults: A nationwide study based on 8-day dietary records.” Nutrients 15.24 (2023): 5113
子ども(1-17歳)においては、多くの栄養素において年齢が上がるほど不足している割合が高く、ビタミンA、カルシウム、マグネシウムでは15-17歳の半数近くが不足している状況です。
出典: Shinozaki, Nana, et al. “Usual nutrient intake distribution and prevalence of nutrient intake inadequacy among Japanese children and adults: A nationwide study based on 8-day dietary records.” Nutrients 15.24 (2023): 5113
Z世代の6割が「外見の改善」を目的に食生活を改善!
正しい知識を重要視しない傾向が栄養不足を加速化?
ミンテルが「健康的な食生活に気を付けるようになった理由」について18歳以上の日本人を対象に調査したところ、「病気になると治療費などお金がかかるから」が42%と最も高く、経済面での不安を抱える消費者が多いことが予想できます。しかし、Z世代女性では、6割が「外見の改善」を選択していました。この割合は他の性世代と比較して顕著に高く、またその他の項目を大きく引き離した結果となったことから、外見の改善には健康的な食生活が重要だとZ世代女性が認識していることを示しています。
調査対象: 健康的な食生活をしている、18歳以上のインターネットユーザー1,970人
調査対象: 健康的な食生活をしている、18歳以上のインターネットユーザー1,970人
また、ミンテルによる「健康的な食生活を続けるために重要だと思うもの」についての調査では、「食品・栄養に関する正しい知識」は、X世代(48-59歳)以上女性の約6割が重要だと考えていることが明らかになりました。食品・栄養の正しい知識への意識が高いX世代とベビーブーム世代(60-78歳)の女性に対しては、信頼できるデータや根拠に基づいて製品の健康面の利点を訴求していく必要があると言えます。
一方、男性ミレニアル世代(30-47歳)や男性X世代はそれぞれ33%、39%という結果になったことから、比較的「食品・栄養の正しい知識」に対する意識が高くない消費者層に対しては、食品や栄養に関する正しい知識を持つことが健康にどのように関係するのかを啓発していく必要があると考えられます。これはZ世代男女も同様で、過半数が「食品・栄養の正しい知識」に対する意識が高くない結果となりました。
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
多様化・細分化された健康ニーズから生まれたトレンド
英国で前年比216%増と急成長する「クリアプロテイン」が日本の栄養不足改善の一助に?
グローバルな健康意識の高まりは消費者の知識向上をもたらし、これまでニッチだったグルテンフリーの広まりや血糖値の急上昇に起因する身体への悪影響に対する注目など、健康、食ニーズの多様化・細分化を促しています。インターネットやSNSの普及で、消費者が容易に健康情報にアクセスできるようになったことで、消費者はより具体的で個別化された健康ニーズを持つようになりました。例えば、免疫力強化やダイエット、メンタルヘルスなど、特定の目的に合った製品が求められていると言えます。
中でもWPI(ホエイプロテインアイソレート)を使用した、透明な「クリアプロテイン」の市場が拡大し傾向にあります。ホエイとはチーズを製造する際にできる、たんぱく質を多く含んだ上澄みの液体のことで、そこから水分を取り除いたものが濃縮ホエイたんぱく質、いわゆるWPC(ホエイプロテインコンセントレート)といわれるものです。WPIは、そこから糖質や脂質を取り除いたもので、たんぱく質の含有量が90%以上と純度が高いことが特徴です。また、吸収がWPCよりも速いため、運動後や朝のたんぱく質が不足しがちなタイミングでの摂取に適していると言われています。
Nutrition Integratedによると、ヨーロッパ全土で販売されているクリアプロテインパウダー製品の数は2022年1月以降159%****増加しており、Amazonの販売データによると、イギリスでは2023年のクリアプロテインパウダーのAmazonでの購入は2022年と比較して216%増加しました。「クリアプロテイン」は水分補給感覚で取り入れやすいことからも、これまでより幅広い層でのニーズが期待できます。
Protein2oは、100%WPIを使用したクリアホエイプロテインウォーター。1ボトルあたり15gのたんぱく質と125㎎のカフェイン、250㎎のL-テアニンを配合している。(米国)
ミンテルジャパンレポート 『ヘルシー食習慣トレンド– 日本 – 2024年』に掲載
****出典:”New data reveals clear protein market more than doubles in just 2 years” Nutrients
また、ミンテルが実施した「購買意欲を増す食品の特徴」に関する調査では、「食物繊維が豊富」と「たんぱく質が豊富」という回答が顕著に高い割合を示し、これら2つの要素が健康上の利点を持つことが、日本の消費者に広く知られてきていることがわかりました。
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
ビジネスチャンス
WPIを使用したクリアタイプのプロテイン飲料が海外で広がりを見せており、その利用のしやすさとたんぱく質の高ニーズを考えると、日本でもニーズの拡大が期待できます。
日本でのRTDクリアプロテイン飲料は現在*****、ドットミーが展開するウェルビーイングブランドCycle.me(サイクルミー)の「フルーティプロテイン」のみです。海外ではRTDタイプの製品も多く販売されており、日本の消費者、特に女性が価値を置く「利便性」を考えると、今後はRTDタイプの製品にもニーズが見込まれるでしょう。
*****2024年8月1日時点
ネイチャーラボが2022年10月から販売している「クレバークリアホエイ」シリーズは、脂質ゼロのクリアプロテインドリンクパウダーです。グルコマンナンやイヌリンなどの食物繊維で満足感を高めるほか、クエン酸や乳酸菌、11種類のビタミンで健康的な付加価値が高められています(日本)。
出典:ミンテル世界新商品データベース(GNPD)
ミンテルジャパンレポート 『ヘルシー食習慣トレンド– 日本 – 2024年』に掲載
Muscle Nationの「スパークリングクリアプロテインウォーター」は、1本(330ml)あたり11gのたんぱく質を含有した炭酸のクリアプロテインドリンクです。クリアプロテインの炭酸飲料はまだ市場に少ないですが、暑い季節や運動後に炭酸入りで爽やかにたんぱく質と水分の補給ができる利点は大きいと考えられます(オーストラリア)。
Muscle Nation Food 公式 Instagram:https://www.instagram.com/musclenationfood/
ミンテルジャパンレポート 『ヘルシー食習慣トレンド– 日本 – 2024年』に掲載
■ミンテル ジャパンレポートについて
新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。
■ミンテル 世界新商品データベース(GNPD)について
世界86ヵ国の日用消費財の新商品を、原料や訴求内容から検索することができるデータベースです。世界各国に配置されたミンテルの調査員が、日々新商品の収集を行うことで、毎月約4万点の商品パッケージ情報をデータベース化し、GNPDを構築しています。商品のあらゆる情報を掲載しているため、様々な視点から世界の製品トレンド分析を行うことが可能です。
■市場調査会社ミンテルの強み
ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、GNPDに蓄積されたデータや独自の消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。
■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)
ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。
その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。
≪ご利用条件≫
情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート 『ヘルシー食習慣トレンド 2024年』より】の明記をお願いいたします。
■会社概要
企業名 :株式会社ミンテルジャパン
本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング18階
代表 :リチャード・カー
設立日 :2008年03月
事業概要 :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等
WEBサイト:https://japan.mintel.com/