テレビ大阪では真夜中ドラマ「それでも俺は、妻としたい」を毎週土曜深夜24時55分(BSテレ東で毎週土曜深夜24時放送)放送中です。
風間俊介がダメ夫・柳田豪太役を、MEGUMIが豪太を罵倒する恐妻・柳田チカ役を演じ、二人のリアルな掛け合いがSNS含め話題となっている本作ですが、原作・脚本・演出を手がけた、朝ドラ「ブギウギ」の脚本等で知られる足立紳にインタビューを実施しました。
――まず見どころについてお聞かせください。
風間俊介さんとMEGUMIさんの掛け合いという言葉では本当にちょっと足りないぐらい、お二人の画面の中の在り方がものすごくて、今はまだ編集段階ですが(※取材当時)、ちょっと釘付けになるぐらい、面白いんじゃないかと思っています。
お二人だけではなく、息子の太郎役を演じた嶋田鉄太君も含め、一言で本当に言い表せないというか。
一言で言い表せられるような家族はないと思いますが、“柳田家”という一つの家族が映し出されて、特に不倫や復讐、何か大きな事件が起こるわけではない……。そういったことがなくても、家族というものはどこの家族を描いても目が離せない作品になるのだなと改めて思っています。
ただ、人としての弱さのような部分も、それは多くの人が持っているような部分だと思いますが、目をそらさずに描こうと挑戦しているので、視聴者の皆さんにはちょっと第3話ぐらいまでは我慢して見ていただければ、この家族というものを受け入れられるようになるんじゃないかという気がしています。
――監督からポジティブな意見とネガティブな意見と両方出ましたが(笑)、風間俊介さん、MEGUMIさんの掛け合いがSNSでとても反響が出ている作品です。主演のお二人も会見で作品を表現するのに「むきだし」といった表現をしていたのが印象的です。ご自身の「ほぼ実話」という原作をドラマ化した足立監督としてはどのように感じていますか。
このドラマにはいいセリフが一言もないんですよ。普通、ドラマや映画だと胸に沁みるようなセリフが一つや二つあることが多いですが、本作は言ってみれば、良いセリフがふんだんに盛り込まれている朝ドラのようなドラマとは真逆で、ロクでもない言葉のオンパレードです。実生活に置いて言葉はどちらかというと、人を励ましたり勇気づけたり勇気づけられたりすることに用いられることが少ないから、ドラマなんかではここぞという時に沁みるセリフが用いられるわけで、それはそれで素晴らしいのですが、僕としては今回そういうものではないドラマに挑戦したかった。それでも見ている人や作っている自分たちに何かしらの力が湧いてくるような作品にしたくて、本当にここまで良いセリフがない作品は、もう自画自賛じゃないですが、素晴らしいなと思っています。
ただ演じていただくのは風間さんとMEGUMIさん。オファーする時は、このお二人だったら絶対面白くなるだろうなと思って、第一志望のお二人に決まったことは嬉しかったのですが、本読みや演じていただいているうちにものすごく申し訳ない気持ちになってきまして…。この役を演じても、もしかしたら楽しくもなんともないんじゃないかっていうような、ちょっといたたまれなさが実はありましたね。
――お二人とも会見で「楽しかった」とおっしゃっていました(笑)。ちなみにご自身の実話ということでの恥ずかしさみたいなものはありましたか?
リアリティを追求しようと思って、自宅で撮影したのですが、家を見られるのは恥ずかしかったですね。みなさんに来ていただくのも……。その恥ずかしさの突破が一番の難関でした。
あと、たまに演出をする時、よくわからなくなる瞬間があって、風間さんに言っているのか?自分自身に言っているのか?何やっているんだろうとなってしまう瞬間がありました。
――自宅での撮影が恥ずかしかったとのことですが、家での撮影で良かった点はありますか?
同じ夫婦を描いた映画「喜劇愛妻物語」でも自宅で撮影しましたが、あの作品は3泊4日の話で映画のほとんどが旅に出ている言わば非日常の話です。対してこのドラマは「日常生活の話」なので当初から自分の家で撮影したいという狙いがありました。
自宅での撮影のメリットは、普段自分がこの生活空間でどのように動くかが染み付いているので、それを活かしたことで、俳優さんたちの動線にもリアリティがより滲み出たのでは、と思っています。あとは人が十数年生活している部屋のリアリティですね。もちろん美術で再現は可能ですが、そんな予算がある作品ではないので自宅撮影にしました。ただ、自宅撮影って自主映画なんかではよくやっていたことなので、珍しいことではないと思います。
また、学校嫌いのうちの息子や同じように学校が好きではない他のスタッフさんのお子さんも現場に来て、息子役の嶋田鉄太くんも含めて現場で遊んでいるというのが不思議な感覚であり、ドラマにもいい作用があったような気がしています。
ちなみに撮影中は自宅から5分程度の場所に別の部屋を借りていましたが、子どもたちは仮住まいの方が広いので良いと言っていました(笑)。
――キャストのお二人も会見で素敵な家だとおっしゃっていましたよ。また、撮影後に監督自らスタッフさんにご飯を振る舞ったこともあったと伺いました。
これも自宅での撮影のメリットかもしれませんね。翌日が撮影休みの場合、撮影後に流れでそのまま自宅で晩ご飯を食べられるという(笑)。僕も豪太と同じで長年の専業主夫生活が身についているので、料理を作るのが好きなんです。撮影期間中、撮影後にスタッフとそのままロケセットの我が家でご飯を食べる機会は何度かありましたね。
家以外のロケが続いた後、再び家のシーンの撮影になると「家に戻ってきた気がする」と言うスタッフもいたので、スタッフもあの家に馴染んでいたのかもしれません(笑)。
――馴染みやすい家なのかもしれませんね(笑)。改めて原作に絡めてお伺いします。同名小説(新潮文庫刊)のある作品ですが、原作から脚本にするにあたって工夫した点はありますか?
原作はだいぶ肉感的に描いていてセックスという行為自体のバカバカしい面白さみたいな描写に力をそそいでいます。でもさすがにそれをテレビでは表現できないので、そういう意味ではだいぶ変えたと思いますが、ただ根っこの部分は変えないようにしました。夫婦でいることを諦めないというのか。それが良いことか良くないことかはわかりませんが。そもそも良い悪いだけでは語れることでもないですし、その極端な二元論に世の中の風潮がなっている気もして、それに対する反発的な思いもあります。
脚本というか原作の小説を書いたときもそうですが、(妻の)晃子さんから「あんた、自分だけいい風に見せようとしているでしょ」「私のことはボロカスに描いて」と言われました。そんなつもりはないんですけどね。
――脚本を拝見して豪太に少しイライラした部分もあったので、豪太をいい風には書いていない気はします。豪太は自分本位ですし、周りからいろいろ言われてもヘラヘラしているだけというか……。
そうですよね。自分のことばかり優先しているというのはよく言われることもあり…そのあたりは客観的に見てダメなところを台本に取り入れているんですけどね。でもおっしゃる通り、この脚本を読んで豪太のことをいいとは思わないですよね。
チカの怒り方の描写は少し激しいかもしれませんが(笑)
――ちなみにチカのモデルとなった妻の晃子さんは本編をご覧になったのでしょうか。
完パケは見ていないのですが、ちょくちょく編集室に遊びに来ていて、編集作業を横でにやにやしながら見ていました。自分たちをモデルにしたドラマを作って、自分たちでそれをにやにやしながら見ているという…僕達夫婦はちょっと大丈夫かなって思ってしまいましたね(笑)。
――ドラマと違い、微笑ましいエピソードだと思いました。お二人は結婚されて20年以上と伺いました。
2003年に結婚して、長年夫婦をやってきて僕は合うと思っているんですよね。妻は合わないと言いますが。世の中の他のご夫婦ってどうなんでしょうね。そもそも20年以上一緒にいてなにを持って合う合わないなのかも僕にはわかってないんでしょうけど。
妻はポジティブすぎて、愚痴とかネガティブなことは聞いてもらえないんですよ。愚痴とか文句は聞きたくない、前向きな話しかするな、と。僕はどちらかと言うと後ろ向きな人間なのですが、後ろ向きな話は妻にはできないんですよね。怒られるから。後ろ向きな話も聞いてほしいとは思いますが……
だから、後ろ向きな話を聞いてほしい時は娘にしちゃうこともありますね。朝ドラ放送中、エゴサーチに余念がなかったのですが、まあ、これは朝ドラに限らず、今もこのドラマの放送中なので、鬼のようにエゴサしてますが、マイナス意見があったという話を娘が「こういう意見の人もいるよ」とフォローしてくれたんです。本当は晃子さんにそういうフォローをしてほしいのですが、晃子さんはやってくれないという。
晃子さんはすごく魅力的だと思うのですが、それと同じぐらい腹が立つことがあります。結構ボロカスなんで……。今年の元日に「今年は仲良くしようよ」と言っても、一言「無理」と。嘘でもいいから「うん」と言ってほしいのですが、「だってあんただもん」と。「あけましておめでとう」と言っても「はあ」だけですから。(笑)
プレゼントはいらない派なので結婚記念日に何かプレゼントしたり、おいしいものを食べに行こうと言っても「いくらしたの?」、「食い意地のはったあんたがご飯を貪っている姿はなににもまして腹立たしい」と……。
――豪太とチカのやりとりがリアルに行われているわけですね(笑)。お二人のエピソードを聞いていると、本当にボケとツッコミというか夫婦漫才を見ている気持ちになってきました(笑)。監督は以前「第3話まで我慢してみてもらえたら」と言っていましたが、第4話では豪太を溺愛する母(熊谷真実)も登場して夫婦の仲にも影響を与えていました。第5話をご覧になる皆さんへのメッセージをお願いします。
豪太の人間として不完全な部分がより露わになってきて、視聴者の皆様の怒りをかうシーンも続出してきますが、では豪太はなにに一生懸命なのか? 結局はチカという女性をすごく魅力的だと思っていて、チカに捨てられたくない、一緒にいたいということに対して一生懸命なのだと思います。そういう豪太の姿も見てやっていただけたら嬉しいです。
あとはチカの弱さ、コンプレックスのようなものも描かれてきたり、どうして豪太と別れないのか?別れる気はないのか?なども見えてきますし、相変わらず二人は子どもにもうまく対処できているとは言えませんが、それでもなんとかやっているようなところも見ていただけたら嬉しいです。
なし崩しな家族ですが、なし崩しももしかしたらありか?いややっぱりダメでしょ?なんてところをせめぎあいながらも今は一緒にいることを選択している家族の姿のようなものが描けていればと思っています。
足立紳プロフィール
1972年鳥取県生まれ。脚本家、作家、映画監督。日本映画学校卒。2012年、シナリオ「百円の恋」が松田優作賞を受賞。同作は2014年に映画化され、日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞。2016年『14の夜』で映画監督としてもデビュー。<脚本代表作>映画『百円の恋』、朝ドラ『ブギウギ』、配信ドラマ『拾われた男』/<監督代表作>映画『喜劇 愛妻物語』、『雑魚どもよ、大志を抱け!』。
≪番組概要≫
【番組名】真夜中ドラマ「それでも俺は、妻としたい」
【放送局】テレビ大阪 毎週土曜深夜 24 時 55 分〜 BS テレ東 毎週土曜深夜 24 時〜
【配信】
Leminoにて1週間独占先行配信
広告付き無料配信サービス「TVer」にて見逃し配信
【出演】
風間俊介 MEGUMI
嶋田鉄太 吉本実憂 熊谷真実 近藤芳正
内田慈 坂田聡 津村知与支 ぎぃ子 吉岡睦雄 カイラD 小池塁葵 芦川誠 他
【原作】足立紳『それでも俺は、妻としたい』(新潮文庫刊)
【脚本・監督】足立紳
【プロデュース】佐藤現 岡本宏毅
【プロデューサー】山本博紀 久保和明 寺田ひなた
【オープニング主題歌】なきごと「愛才」( [NOiD] / murffin discs )
【エンディングテーマ】どぶろっく「ずっとずっと、ありがとう。」(TEICHIKU ENTERTAINMENT)
【話数】30分×12話
【企画協力】新潮社
【制作協力】レオーネ
【制作】テレビ大阪/東映ビデオ
【製作著作】「それでも俺は、妻としたい」製作委員会
【番組HP】https://www.tv-osaka.co.jp/soretsuma/
【公式X】https://twitter.com/tvo_mayodora
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