2025年3月21日に奈良文化財研究所が発表したニュースでは、奈良県飛鳥池遺跡から出土した重要文化財と西隆寺跡の木簡が新たに文化財に指定されました。歴史的背景を持つこれらの資料は、奈良時代の文化や仕組みがどうなっていたかを知るカギで、特に飛鳥池遺跡は日本最古の鋳造貨幣の歴史を持つ場所✨。これからも奈文研ではさらなる貴重な文化財の保護と研究を進めていきます。文化財がしっかり継承されるためには、私たち一人ひとりの理解も大切。みんなで奈良の歴史を守っていきましょう!💪
令和7年(2025)3月21日、文化審議会は、文部科学大臣に対して答申を行い、奈良文化財研究所が保管する奈良県飛鳥池遺跡出土品(考古資料)、西隆寺跡出土木簡(古文書)が新たに重要文化財に指定されることになりました。
今後の官報告示をもって、奈良文化財研究所が保管する国指定の有形文化財は、国宝1件、重要文化財8件となります。
奈良文化財研究所(以下「奈文研」という)は、今回の指定を励みとして、文化財を確実に次世代へと継承していくための調査研究に邁進してまいります。
今回、指定が決まった奈良県飛鳥池遺跡出土品、西隆寺跡出土木簡の概要は次のとおりです。
奈良県飛鳥池遺跡出土品
奈良県飛鳥池遺跡出土品は、平成3年(1991)に奈良国立文化財研究所(当時)・明日香村教育委員会の発掘調査で確認され、奈文研による平成9年~11年の発掘調査で全容が判明した7世紀後半の工房群である飛鳥池遺跡から出土した考古資料です。
なかでも特筆すべきは、我が国最古の鋳造貨幣である富本銭の生産を示す一連の資料群だということです。鋳型や鋳棹、そして未製品の富本銭は、その生産工程をよく示しています。さらに、ガラスをはじめとする金・銀・銅の生産加工技術は、百済や新羅との技術的な類似性も指摘され、注目されています。また、共に出土した木簡には、皇族の名称や天武・持統朝の紀年銘にくわえ、宮廷や寺院造営に物資を供給した内容が記され、国家的工房としての遺跡の性質を裏付けています。
このように、今回指定される奈良県飛鳥池遺跡出土品は、国内最古の鋳造貨幣である富本銭とその鋳造資料、律令国家形成期の木簡群、国家的総合工房の操業内容を示す遺物群からなり、律令国家形成期の官営工房の操業体系と当時の生産技術を考えるうえでも多彩で、学術的な価値は高く重要であるといえます。
西隆寺跡出土木簡
西隆寺跡出土木簡は、昭和46年(1971)に奈良国立文化財研究所(当時)・奈良県教育委員会が平城宮西方に位置する称徳天皇(在位764~770)勅願尼寺である西隆寺の跡を発掘調査した際に、東門近くの2箇所の土坑等から出土したものです。土坑は造営工事にともなう廃材や不要品を廃棄したもので、木簡も諸国からの貢進荷札、人夫への食料支給文書やその帳簿、官司や個人からの知識(ちしき)銭(せん)(堂塔仏像造営のため寄進した銭)付札など、造営過程に関わる情報を含んでいます。
このように、今回指定が決まった西隆寺跡出土木簡は、奈良時代末期の平城京における西隆寺造営に関係する木簡であり、寺院関係のまとまった木簡として木簡研究のみならず、奈良時代の寺院史、社会経済史の研究においても大変貴重なものといえます。
奈文研では、今回の西隆寺跡出土木簡の指定に際し、今は廃絶した西隆寺の存在とその歴史的意義を改めて周知するとともに、いまだ地下に残る西隆寺の遺跡保存の気運を高めていきたいと考えています。
今年、飛鳥資料館は開館50周年
このたびの奈良県飛鳥池遺跡出土品の指定は、それを常設展示している奈文研飛鳥資料館が今年ちょうど開館50周年の記念の年を迎えることから、奈文研にとっては二重の喜びとなります。
そのため、奈文研では、今年度、次のような多彩な催事を予定しております。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
飛鳥資料館開館・埋蔵文化財センター設立50周年記念
第132回 公開講演会「奈良県飛鳥池遺跡出土品指定記念 飛鳥池遺跡出土品を科学する(仮題)」
日時:2025年6月21日(土)
場所:平城宮跡資料館講堂
申込方法:後日HPにてご案内いたします。
飛鳥資料館開館50周年記念・奈良県飛鳥池遺跡出土品指定記念
飛鳥資料館 秋期特別展「古代技術の精華ー飛鳥池工房ー」
2025年11月4日(火) 飛鳥資料館開館50周年式典・展覧会開幕式
会期:11月5日(水)~12月14日(日)
西隆寺出土木簡指定記念
平城宮跡資料館 冬期特別企画展「西隆寺出土木簡(仮題)」
会期:2025年12月11日(木)~21日(日)
特別講演会「西隆寺木簡と西隆寺(仮題)」
日時:2025年12月13日(土)※予定
場所:未定
申込方法:後日HPにてご案内いたします。