カミングアウトから得たことや、幼少期のトラウマを振り返りつつ、どうやってポジティブに生きるかを届けてくれる與真司郎さんの新作!📚✨
解説
與真司郎さんは、AAAのメンバーとして活躍しながら、2023年に自身のセクシュアリティを公表しました。その背景には、幼少期の不安や、父親から受けた影響がありました。彼はノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』で、自らの生い立ちを振り返りながら、カミングアウト後の心境を率直に綴っています。彼のメッセージは、少しずつ変わりつつある社会に対する希望の表れでもあり、多様性の重要性を伝える力となっています。読者には、彼の勇気や思いを通じて、自己理解の大切さを感じてもらいたいと願っています。🌟
この記事のポイント!
1.▪︎セクシュアリティを公表した勇気
2.▪︎幼少期の記憶とその影響
3.▪︎カミングアウト後の心境の変化
4.▪︎新作エッセイの内容とテーマ
5.▪︎社会の変化に寄せる期待
AAAのメンバーとして2017~2019年に3年連続4大ドームツアーを開催し、ソロとしてもアリーナツアーを行うなど精力的に活動してきた與真司郎(あたえしんじろう)さん。2023年7月には自身が同性愛者であることを約2000人のファンの前で公表し、世の中に大きなインパクトを与えました。その影響は国内にとどまらず、米紙「ニューヨーク・タイムズ」の「2023年世界に影響を与えた人々」に選出されるなど話題に。
来る4月16日には、自身の半生を振り返り、カミングアウト後に感じていることを赤裸々に明かしたノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』を刊行予定。幼い頃から徐々に自らのセクシュアリティを自覚していったという與さんですが、幼稚園で言われた一言は今でもはっきりと覚えていて、「否定されて悲しかった」と話します。自らのセクシュアリティを自覚するきっかけの一つとなったエピソードを、與さんは下記の通り明かしています。
「ピンクは女の子用だよ」と言われた幼稚園での出来事
僕は1988年11月26日に大阪府の枚方市で生まれ、小学校からは京都府の八幡市で育った。與家で3番目の子で、7歳上に姉、5歳上に兄がいる。幼い頃の記憶は曖昧であまり覚えていないけれど、性別に関することで明確に違和感を覚えたエピソードがある。幼稚園生の頃、お絵描きの時間に僕はいつもピンクの画用紙を選んでいた。でもある日、先生から困ったような顔で「ピンクは女の子用だよ」と言われてしまった。その出来事を母親が先生から聞いたのか、家に帰ってから「真、青のほうがいいんじゃない?」と諭された記憶がある。
僕はただピンクが好きだっただけで、当時は自分の性自認も性的指向もちゃんとわかっていないような年齢だったけど、自分を否定されてしまった悲しさは今でもはっきりと覚えている。もしかしたらあの思い出が、自己否定ばかりしてきた僕の人生の原点かもしれない。それから、父親がDV気質だったことも、僕の個性に大きな影響を与えてきたと思う。子どもの頃、父親は毎晩のように飲み歩いていて、夜中や朝方にベロベロに酔っぱらって帰ってきては、意味もなく大声で家族に怒鳴り散らす人だった。母親や兄に暴力を振るうこともあったし、父親との楽しい記憶はほとんどない。当たり前のようにモラハラされる日々を過ごし、母親は食事が喉を通らないほど思い詰めていた時期もあった。
だから僕は、今でも「偉そうなおじさん」を見ると嫌悪感を抱いてしまう。そのトラウマはいまだに脳裏に残っているから、仕事などで上から目線で接してくる人と出会うたび、父親の残像が無意識によみがえり、不快感を覚える。もしかしたら父親から十分に愛情を受け取れなかったからこそ、僕は子どもの頃から父性を感じさせる男性に憧れを抱いていたのかもしれない。たとえば小学生の頃の野球のコーチ。多分当時そのコーチは30歳ぐらいで、寡黙で厳しいけれど、男らしくて包容力があった。子どもたちから信頼されていて、親御さんたちからも敬意を払われている人。そんなコーチが、僕には眩しく見えた。振り返ると、あれが僕の初恋だったのかな。子どもだったから性的な感情はもちろんなかったけど、幼稚園児が先生を好きになっちゃうのと同じ感覚だと思う。物心がついた頃の記憶は曖昧で、エピソードはあまり思い出せない。けれどこうしていくつかのことを振り返るだけでも、幼少期の過ごし方や出来事がその後の人格形成に大きく関わっているようにも思う。
(本文より)
時代は変わりつつある。少しずつ社会がいい方向に向かってくれれば嬉しい
幼稚園でのエピソードを上記のように振り返りますが、「この出来事は僕がまだ幼稚園児だった頃の出来事です。今はもっと理解が進み、さまざまな現場でセクシュアリティの多様性が認められ始めていると思います。一方でまだ理解が進んでいないシーンもあるので、少しずつ社会がいい方向に向かっていけるよう、僕にできることを一つずつ取り組んでいきたいと思っています」とも語っています。
書誌概要
■タイトル:『與真司郎フォトエッセイ 人生そんなもん』
■発⾏:講談社
■発売⽇:2025年4⽉16⽇
■価格:1,980円(税込)
■仕様:四六判/160ページ
■ISBN13:978-4-06-538728-3
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プロフィール
與真司郎(あたえしんじろう) 1988年生まれ。京都府出身。男女混合のパフォーマンスグループ、AAA(トリプル・エー)のメンバーとして、 2005年にデビュー。2017年から2019年と3年連続で4大ドームツアーを開催するなど精力的に活動し、ソロとしてもアリーナツアーを開催。グループは2021年、AAA初となる6大ドームツアーを終えたタイミングで本格的な活動休止に入る。2023年7月、「與真司郎 announcement」にて、自身が同性愛者であることを無料招待した約2000人のファンの前で公表し、ソロとしてのアーティスト活動を再開。現在は自身の人生を題材にしたドキュメンタリーをハリウッドにて制作中。著書に『すべての生き方は正解で不正解』(講談社)などがあり、2025年4月16日にはカミングアウトまでの半生とその後を赤裸々に綴った最新著書『人生そんなもん』を発売。現在は日本と海外を拠点に活動中。