どうしたらそんなひどいことができるのか……、だれもがそう思ってしまう動物虐待の話はたえない。本書もそのひとつだが、たまたま全国紙の地方版が取り上げ、全国版に転載され、テレビが後追い放送したことで一気に話題になった。それらの経緯をまとめたものが『瞬間接着剤で目をふさがれた犬 純平』で平成13年の刊行。
目と心に傷を負った子犬はその容貌から「クマ」と名付けられ、地元の動物愛護の人たちに保護されていました。ところが、報道で知った全国の人から「飼いたい」「会いたい」との電話などが殺到。その中から一通の手紙をくれた東京の救世軍が運営する社会福祉慈善の施設に引き取られることに。
その施設は病気や様々な事情で住居に困っている人たちを保護し、一時的に無償で暮らしてもらっているところでした。そこで「クマ」から「純平」に改名された子犬は、施設の人たちを癒やし、みんなから愛され、人のぬくもりを感じながら育ち、街の有名犬になっていきました。
純平の由来は「純粋に平和を愛する」で、寄宿者のひとりが昔、飼っていた飼い犬の名前だそうです。人が願うのはいつの世も平和や心の平安で、人も犬も一人では生きられない、助け助けられ、愛し愛されていく、同じ生き物なのかもしれません。
そんな純平にも、やがて寿命がおとずれます。引き取ってくれた当時の寄宿者も出ていき、何度も入れ替わっていました。そんな純平と周りの人々とのお別れの場面を加えて出版されたのが『新装改訂版 目をふさがれた犬 純平』で平成29年の刊行。
そして平成から令和の御代に代わり5年が過ぎました。動物虐待はなくなってほしいですが、心ある人間との出会いによって必ず幸せになれることを、令和生まれの子供たちにも知ってほしいと願わずにはいられません。
※本書は、平成29年6月に刊行した『新装改訂版 瞬間接着剤で目をふさがれた犬 純平』を改題・改訂のうえ、新装したものです。
・著者プロフィール
関 朝之(せき・ともゆき)
1965年東京生まれ。
城西大学経済学部経済学科、日本ジャーナリストセンター卒。仏教大学社会学部福祉学科中退。スポーツインストラクター、バーテンダーなどを経てノンフィクションライターとなる。
医療・労働・動物・農業・旅などの取材テーマに取り組み、同時代を生きる人々の人生模様を書きつづけている。
著書に『救われた団地犬 ダン』『愛された団地犬 ダン』『タイタニックの犬 ラブ』『のら犬ティナと4匹の子ども』『ガード下の犬 ラン』『新装版 高野山の案内犬 ゴン』(以上ハート出版)、『歓喜の街にスコールが降る』 (現代旅行研究所)、『たとえば旅の文学はこんなふうにして書く』 (同文書院)、『10人のノンフィクション術』(青弓社)など。
・書籍情報
書名:神様のおつかい犬 純平
著者:関朝之
仕様:A5判上製・160ページ
ISBN:978-4-8024-0156-2
発売:2023.07.04
本体:1,500円(税別)
発行:ハート出版