発売から1カ月で増刷された『新字体・現代仮名遣い版 巣鴨日記』。
発売後のニュースでは、バイデン米大統領は支持者の集会で、岸田首相に防衛費の大幅増額を働きかけ、日本のウクライナ支援強化も引き出したことをアピールした。その後、バイデン大統領は岸田首相に日韓関係の改善を説得したことも明らかにしている(岸田内閣は韓国に対し、通貨スワップ再開やホワイト国再指定を行った)。岸田内閣がLGBT法案を急いで成立、施行させたのも、バイデン政権の強力な後押しがあったと見られている。
占領下の獄舎の中で重光葵元外相は日記に、日本は「ただ強者たる占領軍の指揮棒の振り方を見ている。旧時の軍部に左右せられたと同様に新たなる武器〔核兵器〕をもった強者に追随する」と書いているが、日本は独立国となって70年以上経っても、占領下と同じ状態が続いているかのようである。重光はさらに続けて「自主独立の意気地のないものは結局右か左かに蹂躙せられる」と書いているが、今日の日米、日中関係は、重光が懸念した通りの状況にある。
「日本としては飽くまで自主性を失ってはならぬ」「日本は何とかして、速に自主性を取り返し立派な独立国として世界の平和に貢献し得る様にならねばならぬ」というのが重光の戦後日本に求めた姿であるが、本書には日本人に自主独立の気概を求める、そんな重光の精神が随所に見られる。
山岡鉄秀氏は本書の解説で、「今の日本に最も必要なのは重光の如き人材である。日本は百年に一度の国難を迎え、存亡の危機に立たされているが、政治家も官僚も、国民の多くもそのことを認識していない。戦後、日本人は重光が示した道を歩まず、その当然の帰結として今日の危機を迎えるに至ったのである。今の日本には、重光のような国際性と分析力と行動力と胆力を持った指導者が必要である。そのような人材を見出すためにも、重光の再評価が絶対に必要なのである。重光を再評価するために、一人でも多くの日本人に巣鴨日記を読んで欲しい。今こそ重光の精神を復活させることが日本民族の存続に不可欠であることを確信するだろう」と述べているが、重光葵の重要性をまず理解するためにも、山岡氏の解説から読むことをおすすめしたい。
【著者】重光 葵 しげみつ・まもる
1887年大分県生まれ。子供の頃朝の沐浴と教育勅語の朗読を日課とする。東京帝大法科大学独法科卒業。外務省に入り、上海総領事、駐華特命全権公使等を歴任、上海事変停戦協定を成功させた直後、上海天長節爆弾事件で右足を失う。その後、外務次官、駐ソ、駐英、駐華の各大使、さらに東条内閣、小磯内閣、東久邇宮内閣で外相を務める。日本政府全権として戦艦ミズーリ艦上で降伏文書調印。昭和天皇の信頼厚く、調印前天皇から激励を受ける。張鼓峰事件の解決、ビルマ援蒋ルートの一時的閉鎖、戦後の占領軍による軍政阻止などは、重光の卓越した交渉能力を示す例である。大東亜共同宣言も終戦の御聖断も重光の提言によって実現。日華和平を目指し、三国同盟や日米開戦には反対の立場だったが、極東国際軍事裁判ではソ連の横やりでA級戦犯の被告人となり、禁固7年の判決。政界復帰後、改進党総裁、日本民主党、自由民主党副総裁、そして鳩山内閣の外相として日本の国際連合加盟に尽力。1957年没、享年69歳。
【解説】山岡 鉄秀 やまおか・てつひで
1965年、東京都生まれ。中央大学卒業後、シドニー大学大学院、ニューサウスウェールズ大学大学院修士課程修了。公益財団法人モラロジー道徳教育財団研究員、令和専攻塾塾頭。 著書に『vs.中国(バーサス・チャイナ)─第三次世界大戦は、すでに始まっている!』(ハート出版)、『新・失敗の本質』『日本よ、情報戦はこう戦え!』(育鵬社)、『日本よ、もう謝るな!』監訳に『目に見えぬ侵略─中国のオーストラリア支配計画』(共に飛鳥新社)などがある。
【書籍情報】
書名:[新字体・現代仮名遣い版]巣鴨日記
著者:重光葵
仕様:A5判並製・384ページ
ISBN:978-4802401579
発売:2023.06.01
本体:2500円(税別)
発行:ハート出版
書籍URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4802401574/