この物語の主人公はわたしである。わたしというのは名前のない登場人物の名前のかわりの「わたし」とかそういうややこしいやつじゃなくて、そのまま筆者のことである。筆者は一九八一(昭和五十六)年一月生まれ、職業は小説家一割アルバイト九割、独身、現在のところ結婚の見通しはまったくたっていない――
そんな書き出しで始まる『婚活1000本ノック』は、作家・南綾子さんが実体験をふんだんに織り込みながら執筆した実録(⁉)婚活小説です。本作が12月25日発売で文庫化予定、また、2024年1月スタートでフジテレビにて連続ドラマ化も決定しました。主演は3時のヒロインの福田麻貴さんです。
ある冬の夜、作家の南綾子を突然訪ねてきたのは、かつて自分と関係をもちながらもヤリ逃げした山田。遊び相手に刺殺されて幽霊になったという山田は、南の婚活成功を頼みに成仏を狙うと言い出します。反発する南でしたが、ある出来事を機に婚活を決意します。お料理合コン、お見合いパーティ、漁師の嫁募集……。数々の婚活イベントに参加する南の奮闘を描く連作短編集です。
「マスクマン」「山羊男」など、出会う男性たちにあだ名をつけまくり、激しく辛辣なモノローグが連発される本作ですが、全編を通じて訴えているのは、「一緒にいたいと思える人と出会って、相手にもそう思ってもらいたい」という普遍的で切実な思いです。婚活経験の有無にかかわらず、この思いに共感するすべての方に読んでいただきたい作品です。
■著者紹介:南綾子
1981年愛知県名古屋市生れ。2005年「夏がおわる」で第4回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。おもな著作に『ほしいあいたいすきいれて』『ベイビィ、ワンモアタイム』『わたしの好きなおじさん』『婚活1000本ノック』『結婚のためなら死んでもいい』『死にたいって誰かに話したかった』など。
■書誌情報
【書名】婚活1000本ノック(新潮文庫刊)
【著者】南綾子
【発売日】2024年12月25日予定、電子書籍も同日配信開始予定
【定価】693円(税込)
【ISBN】978-4-10-102582-7