資生堂、加齢が日中の紫外線下でのシミリスクを増加させることを発見し、その抑制法を開発 ~シミ部位特有の…

資生堂、加齢が日中の紫外線下でのシミリスクを増加させることを発見し、その抑制法を開発 ~シミ部位特有の...
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 資生堂は、シミのある皮ふにおいて、日中の紫外線により高まることが知られている炎症因子受容体「インターロイキン6受容体(IL-6R) ※1」の発現が、加齢によりさらに高まることを発見しました。表皮細胞中のIL-6Rの発現が多いほど、メラノサイトの活性が高まる※2ことから、同じ量の紫外線を浴びた場合でも、加齢の要因によって、シミの発生・悪化リスクが増加することを明らかにしました。さらに、紫外線と加齢による炎症反応を抑制する薬剤として、平実檸檬抽出液が有用であることを見出し、メラノサイトの活性を抑制することを確認しました。

これまで、シミの発生過程における紫外線と加齢の複合的な作用について、詳細は明らかにされていませんでしたが、今回の発見により、外的要因である紫外線と、内的要因である加齢の二つの側面からシミ予防にアプローチできるようになり、日中のシミリスクケアの重要性が改めて示されました。本知見は、今後の製品開発に応用していきます。本研究の成果の一部は、第25回国際色素細胞学会 (23/5/30~6/2)、第1回SCCJ学術大会 (23/12/5~7) にて発表しました。

※1 炎症因子IL‐6を受容して、炎症に対する反応を細胞内に伝える受容体

※2 メラノサイトの樹状突起の長さと数の伸長・増加、メラニンの受け渡しが促される状態

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図1 炎症反応を引き起こす因子の受容体であるIL-6Rは加齢によって多く発現し、メラノサイトの活性を高める(イメージ図)

《研究の背景》

 当社はシミ研究において、早くから「メラニンの産生」という局所的な現象だけではなく、メラニン産生を促進しシミの発生リスクを高める「シミ肌環境」に着目した研究を進め、炎症状態によってシミ肌環境が作られるという、資生堂独自のシミに関する研究知見”慢性微弱炎症”を提唱してきました※3。一方、このシミ肌環境を作り出す炎症の二大要因として、外的要因である紫外線と、内的要因である加齢といった2つの側面の要因が挙げられますが、その複合的な作用については未解明な部分がありました。そこで、この両側面からシミ発生のメカニズムを明らかにするため、本研究に取り組みました。

※3 表皮および真皮において慢性的に微弱な炎症が生じ続けている状態

《シミのある皮ふでは、表皮細胞で炎症因子受容体IL-6Rの発現が増加》

 ヒトの皮ふ組織のシミ部位とそうでない部位(非シミ部位)において、炎症状態を比較したところ、炎症因子受容体IL-6Rの発現量がシミ部位で高くなっていることを発見しました(図2)。皮ふのシミ部位では、炎症因子IL-6の受容体であるIL-6Rが過剰に増加することによって、炎症が慢性的に活性化されシミが「悪化しやすい」状態になっていると考えられました。

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図2 炎症を引き起こす因子の受容体であるIL-6Rは、シミ部位で過剰に発現していた

《加齢や紫外線による表皮細胞のIL-6Rの増加がメラノサイトの活性化につながる》

 次に、シミ部位で増加していたIL-6Rの発現に影響を与える要因として、「加齢」について検証しました。若齢あるいは加齢のヒト由来表皮細胞を用いて実験したところ、日中の太陽光を想定した紫外線照射によって細胞中のIL-6Rの発現が、加齢した細胞においてより増加することが明らかになりました(図3)。また、IL-6Rが実際にメラノサイトの活性化に影響を与えるかを探るべく、加齢表皮細胞と共に培養したメラノサイトの状態を観察したところ、若齢表皮細胞と共に培養したメラノサイトと比べ、メラノサイトの活性化の指標である、樹状突起の長さと数が伸長・増加することが確認されました(図4)。表皮細胞のIL-6Rの増加はメラノサイトの活性化の引き金であり、「加齢」によって促される可能性があります。

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図3 紫外線と加齢によるIL‐6R遺伝子の発現亢進
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図4 加齢した表皮細胞に紫外線を照射するとメラノサイトの活性化を誘導する

《IL-6Rの発現を抑制する有効なエキスを発見》

 今回、紫外線によるシミの発生・悪化リスクが、加齢によるIL-6Rの発現促進を通して高まることが分かったことから、IL-6Rの発現を抑制する薬剤の探索を行いました。その結果、平実檸檬抽出液に表皮細胞のIL-6Rの発現を抑制する効果があることを発見しました(図5)。さらに、平実檸檬抽出液は、加齢表皮細胞とともに共培養したメラノサイトの樹状突起の長さと数が伸長・増加を抑制する効果があることを発見しました(図6)。IL-6Rの発現を抑制することで、加齢した肌でもシミの発生・悪化リスクを増大させない、新たなシミ予防アプローチの実現が可能になると考えられます。

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図5 平実檸檬抽出液は、IL-6R遺伝子の発現を抑制する
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図6 平実檸檬抽出液は、紫外線照射後のメラノサイトの活性化を抑制する

 資生堂は2030年に向けたビジョンとして「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」を掲げ、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指しています。気になるシミやくすみを前向きにケアし、自分らしい健康美をサポートするため、これからもより根本的なシミ・くすみの予防・改善を目指して研究を進めます。

R&D戦略について:

R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、シワ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因を解明しソリューションを開発することを目的として進めました。

・2022年統合レポート(ビューティーイノベーション)

https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/?rt_pr=trp76

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Skin Beauty INNOVATION、不変の肌悩み、シミ

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003759&rt_pr=trp76

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