スーリエによると、『The Waves』は自身のこれまでのリサーチの発展形で、わたしたちの身体の記憶や知覚、その複雑に絡み合ったディテールを呼び覚まし、身体の表現に変換しようという試みである。例えば、ある物を「殴る」「避ける」「投げる」「つかむ」という身振りは、一連の動作を見る第三者にとって目標(ゴール)が明確である。しかし、それらの動作を敢えて中断したり、架空の物体を目指して動いたらどうであろうか。目的を意図的にずらしたり取り除いたりすることで、身体のムーヴメントを攪乱させ新たな身振りを獲得することができるかもしれない。
作中1人のパフォーマーが、イギリスの作家ヴァージニア・ウルフの長編小説『The Waves(波)』(1931年)の一節を淡々と語る。小説の中で織りなされる男女6人のモノローグのように、6人のパフォーマーが多様なムーヴメントを緻密に重ねながら、現代音楽アンサンブル・イクトゥスが生み出す音楽と響き合う。生演奏による打楽器の変容するリズムと6人のパフォーマーが、絶えず呼応しながら観る者の記憶に語りかける。
2018年の初演以来ヨーロッパでのツアー公演を重ねている『The Waves』の日本初演。感覚が研ぎ澄まされる、新たなダンス体験にどうぞご期待ください。
ノエ・スーリエ『The Waves』
上演時間:約60分(途中休憩なし)
*演出の都合により、開演時間に遅れたり途中退場されますと、ご予約席へのご案内ができません。予めご了承ください。
振付:ノエ・スーリエ
出演:ステファニー・アムラオ、ジュリー・シャルボニエ、アドリアーノ・コレッタ、
船矢祐美子、ナンガリンヌ・ゴミス、ナン・ピアソン
パーカッション:トム・ドゥ・コック、ゲリット・ヌレンス(イクトゥス)
音楽:ノエ・スーリエ、トム・ドゥ・コック、ゲリット・ヌレンス
照明:ヴィクトール・ビュレル
初演:2018年8月
ベルリン国際ダンスフェスティバル“8月のダンス”ヘッベル・アム・ウーファー2/ベルリン
●舞台評
「まるでコルク栓を抜かれたシャンパン、あっという間になくなるバッテリー、
投げ込まれるボーリングのボール。ダンサーのムーヴメントは空間に投げ出された
物体そのものであり、打ち寄せる波というよりも嵐の波に近い」
―Rosita Boisseau(ル・モンド紙/2018年)
●公演情報
日時:
2024年3月29日(金)19:00開演
2024年3月30日(土)15:00開演
(全2公演)
会場:
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
[JR与野本町駅より徒歩7分]
公演詳細ページ:https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/98247/
<チケット好評発売中>
●チケット料金(全席指定・税込):
一般5,000円(メンバーズ 4,500円)
U-25* 2,500円 *公演時25歳以下対象。入場時要身分証提示。
※未就学児入場不可。
※サイドバルコニー・2階席の一部は舞台の一部が見えづらいお席です。予めご了承ください。
※車椅子でご来場の方は、チケットご購入時に必ずSAFチケットセンターへご連絡ください。
※やむを得ない事情により、公演等に変更が生じる場合がございます。
●チケット取扱い・お問合せ
[Web] SAFオンラインチケット https://www.saf.or.jp/t/
[電話] SAFチケットセンター 0570-064-939(毎週月曜日を除く10:00~18:00)
[窓口] 彩の国さいたま芸術劇場(毎週月曜日を除く10:00~18:00)
埼玉会館(会館休館日を除く10:00~19:00 ※)※3月1日以降10:00~18:00
○イープラス https://eplus.jp ○チケットぴあ https://t.pia.jp
※営利目的での転売を禁止します。
主催・企画・制作:彩の国さいたま芸術劇場(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団)
共同招聘:ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)
助成:ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
ノエ・スーリエ Noé Soulier [振付家]
1987年パリ生まれ。カナダのナショナル・バレエ・スクール、パリ国立高等音楽・舞踊学校やベルギーのP.A.R.T.S.でダンスを学び、ソルボンヌ大学で哲学の修士号を取得。2010年パリ市立劇場とミュゼ・ドゥ・ラ・ダンスが主催するダンスコンクール「ダンス・エラルジー」で最優秀賞を受賞。2015年から2019年まで国立ダンスセンター(パンタン)でアーティスト・イン・レジデンスを行う。劇場での公演に留まらず、書籍『Actions, Movements and Gestures』(2016年)やパフォーマンス『Movement on Movement』(2013年)などのプロジェクトでは多岐にわたる分析を行い、複数の身体体験をもたらすムーヴメントの在り方を探求している。2017年には、パリのポンピドゥー・センターにて美術館におけるダンスの位置づけを大胆に覆した意欲作『Performing Art』
を発表。2019年「第9回シアター・オリンピックス」に『トリノゾク(Removing)』で来日。
2020年よりアンジェ国立現代舞踊センター(Cndc-Angers)のディレクターを務める。ラン国立バレエ団、バレエ・ロレーヌ、L.A. Dance Project、リヨン・オペラ座バレエ団、ネザーランド・ダンス・シアター2(NDT2)の委嘱で振付を提供するほか、さまざまな場を通して身振りと身体経験との関係、ダンスへの様々なアプローチを探求し続ける、今注目のアーティスト。
©Wilfried Thierry-Cndc
アンサンブル・イクトゥス Ensemble Ictus [パーカッション・音楽]
世界を代表するベルギー・ブリュッセルの現代音楽アンサンブル。1994年創設。同年よりP.A.R.T.S.ダンススクールやアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル主宰ダンスカンパニー・ローザスと拠点を共有し、『死の彼方 永遠の愛』から『Repertoire Evening』まで15作品を共同で創作。スティーヴ・ライヒなど数多の現代作曲家の作品演奏を行う。また、ヴィム・ヴァンデケイビュス、モー・ル・プラデック、ノエ・スーリエ、エレノア・バウアー、池田扶美代などの振付家とも仕事をしている。2010年、彩の国さいたま芸術劇場主催『3Abschied ドライアップシート(3つの別れ)』(コンセプト:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル、ジェローム・ベル)にも出演。
当初、指揮者のジョルジュ=エリ・オクトールが率いていたイクトゥスは、高度な技術を持つソリストたちによるミニ・オーケストラとみなされていたが、サウンド・エンジニアを楽器奏者として採用するなど新たな取り組みを行い「エレクトリック・オーケストラ」へと変貌を遂げた。毎年ブリュッセルのカーイテアターや芸術センター・ボザールとのパートナーシップのもと1シーズンを通して公演を行っている。ヨーロッパ各地のコンサート・フェスティバル「Liquid Room」にも出演。広義での実験音楽に力を注いでいる。
©José Caldeira
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