本作において中里は、自身のブランドのスタイルを投影させながら、総勢200体以上のデザインを手掛け、 発表から200年以上経つ古典作品に新たな息吹を吹き込みました。
古代ギリシャを舞台に繰り広げられた戦争の苦しみと、敵味方を超えた愛を描いたモーツァルトによる古典の新バージョンは、演出を当劇場のバレエ部門監督である振付家シディ・ラルビ・シェルカウイ氏(※2) が手がけ、舞台芸術を日本人現代アーティストの塩田千春氏が行いました。中里によるジュネーヴ大劇場での衣装制作は今回が二回目、演出のシェルカウイ氏とのコラボレーションは三回目となりました。また、塩田千春氏とは今回が初めての共同制作になります。
コメント|ジュネーブ大劇場総監督 アビエル・カーン氏
“シェルカウイと私は、ファッション界のアーティストやデザイナーが参加する幾多のオペラやダンスの作品に取り組んできました。日本人ビジュアルアーティストの塩田千春の舞台芸術と、ユニークなアプローチとビジョンを持った中里唯馬のデザインをプロジェクトに迎えられることを嬉しく思います。 モーツァルトの『イドメネオ』の新演出は、まさに日本独特の雰囲気を示すものになるでしょう。”
制作に先立ち、中里は作品の舞台となったエーゲ海のクレタ島を実際に訪れ、現地の遺跡や自然、出土した実際の甲冑などの資料を通して、作品に対してのより深い知識と独自のインスピレーションを培いまし た。
中里はシェルカウイと共に、モーツァルトの『イドメネオ』解釈とユイマナカザトの美学を融合させる衣装を構想。1年以上にわたってプランニングを重ね、ストーリー、新解釈、コンセプト、シンボル、そして 各登場人物の心理的状態をどのように表現するかについて模索してきました。
舞台芸術を手がける塩田千春の世界観が色濃く反映された本作では、物語の舞台となる「海」が赤い糸で表現されます。これに伴い、衣装においても、神官などの海との繋がりが強い登場人物が赤を基調とした服装で表現されました。舞台装置に登場する赤い縄は衣装デザインにも組み込まれ、塩田千春の世界観の一部ともなり、互いに強く連動します。また、主要人物の出身地であるクレタの人々は⻘い装い、富と権力をもつ同盟国アルゴスの人々はシルバー、囚われの身でありながら無垢と純真を体現するトロイの人々は純白の 衣装で登場し、人物像のさまざまな立場が鮮やかな色により象徴的に表現されています。
2月21日に初演を迎えた本公演は、2月21日から3月2日まで6回にわたりスイス・ジュネーヴのジュネーヴ大劇場で上演された後、アムステルダムとルクセンブルクを巡回します。
イドメネオ
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲オペラ
https://www.gtg.ch/en/2023-2024-season/idomeneo-re-di-creta/
2024年2月21日(水) – 3月2日(土)
ジュネーヴ大劇場 Grand Théâtre de Genève (Boulevard du Théâtre 11, CH-1204 Genève)
イドメネオ動画集: https://www.youtube.com/playlist?list=PLUWwYK5rOr5Qxv-I9odJqFL2c8RBXJQsF
ジュネーヴ大劇場: https://www.gtg.ch/en/
演出:シディ・ラルビ・シェルカウイ
音楽監督:レオナルド・ガルシア・アラルコン
衣裳:中里唯馬
舞台美術:塩田千春
ドラマトゥルギー:シモン・ハタブ
※1 ジュネーブ大劇場/ジュネーブ・オペラ(Grand Théâtre de Genève)
1879年に建設されたスイス最大の芸術舞台であり、ジュネーブ・オペラ・ハウスとジュネーブ・バレエ団の本拠地。40人の歌手からなる独自のオペラ合唱団を採用しており、オペラシーズンにはスイス・ロマンド管弦楽団と芸術提携を結ぶ。2019年からアビエル・カーンがジュネーブ大劇場の総支配人を務め、2022年からジュネーブ・バレエ団はシディ・ラルビ・シェルカウイが監督を務める。2020年には年間最優秀オペラ劇団(Opernwelt)に選ばれた。
※2 シディ・ラルビ・シェルカウイ(Sidi Larbi Cherkaoui)
ベルギー、アントワープ出身の振付家。1976年モロッコ人の父親とベルギー人の母親の間に生まれる。1999年アンドリュー・ウェイル のコンテンポラリー・ミュージカル「Anonymous Society」で振付家デビュー。多くの振付家とコラボレーションし、2010年1月に会社イーストマンを設立。⻑年の芸術パートナーとなるダミアン・ジャレとアントニー・ゴームリーとの共同制作により「Foi」「Myth」に続く三部作の完結編として「Babel (words)」を発表、ローレンス・オリヴィエ賞新作ダンス賞および舞台デザイン賞、ブノワ賞最優秀振付賞を受賞している。日本での活動は森山未來と2012「テヅカTeZukA」に続き2015「プルートゥ PLUTO」でタッグを組んでい る。2014年11月18日ベルギー国王から爵位Commander of Ordersの名誉称号を授受した。
デザイナー・プロフィール|中里唯馬
1985年生まれ。2008年、ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーを卒業。2015年に「株式会社YUIMA NAKAZATO」を設立。2016年7月にはパリ・オートクチュール・ファッションウィーク公式ゲストデザイ ナーの1人に選ばれ、コレクションを発表。その後も継続的にパリでコレクションを発表し、テクノロジー とクラフトマンシップを融合させたものづくりを提案している。また自らが発起人となり、2021年7月よ り、未来を担う次世代のクリエイターのためのFASHION FRONTIER PROGRAMを創設。オートクチュー ル・ファッションウィークを通じて最先端のファッションを提案しながら、社会的課題にも取り組む。
Official Instagram account: @yuimanakazato
Official brand website: yuimanakazato.com
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