・4億年以上前から生物の生殖器は「最適化」を目指し、進化し続けてきた。
太古より、水・陸に関わらず、生物にとっての最も大きな課題は、厳しい環境変化のなかでどうやって自らが種の保存を達成するかであった。現存する生物はその激戦を勝ち残ってきた子孫ということになる。生き残りを賭けた術はさまざまな問題に阻まれる度に改良されていった。その改良方法はまさに千差万別で、その多様性に驚くばかりだ。本書の「はじめに」では、膨大な時間をかけて行われてきた、無数の生物の最適化戦略の全容をわかりやすく解説する。まずはここを準備体操とし、生物と性の扉が開かれていく。
・思いつく限りの創意工夫が凝らされた、生殖器の多様性とその戦略。
本書ではワニやダチョウ、カメレオン、ハリモグラ、ゾウ、ナメクジなど(果てはシラミまで!)、32種類の生物の生殖活動とオスの生殖器を紹介する。各生物は色彩豊かな水彩画と繊細な鉛筆画などが添えられ、美しさを堪能できる。しかし、と言うべきか、生物の大小に関わらず、その生殖の物語は驚きの連続だ。ふたつのペニス、先端が4つあるもの、自在に動き時には物を摑むもの、トゲだらけのもの、歌うもの(!)など、困難に適応するために辿り着いた形や大きさ、生殖方法には圧倒されるばかりだ。彼らの戦略と飽くなき情熱を前には、ヒトの営みはきわめて平凡なものに感じられるのは間違いない。
・快楽を求める生物のさまざまな生き方。
本書では、生物たちの快楽のための性行為や同性愛、タブーのない解放された性を生きる例も紹介する。なかには共生し種を保つために、性別や体の大きさを変えることができるものも登場する。私たちがこれまでぼんやりと常識として捉えていたことを覆す事実が伝えてくるのは、私たち人類は大河のほんの一滴でしかないということだ。「性の多様性」は人類誕生よりずっと前から存在しており、生きものはその性を多様化しながら、困難に対し並外れた適応を行ってきた。それは神秘的であり、同時に生存に対する最適化戦略の成功よって成しえたことだ。ヒトとしてその大河のなかに共に在ることの奇跡に感動してほしい。ゆりかごである地球環境に抗うことなく生きてきた彼らへの尊敬と愛情を育むきっかけとなることを望む一冊だ。
◎商品情報
『生物と性 神秘の最適化戦略』
対象:自然科学、生物ファン層
発売日:2024年3月25日
定価:3,520円(税込)
著者:エマニュエル・プイドバ、ジュリー・テッラッォーニ(イラストレーション)
翻訳:西岡恒男(株式会社フレーズクレーズ)
発行:株式会社求龍堂
主な仕様:並製本 B5変型(240×180mm)、184頁
HP:https://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/000000002280
◎目次
はじめに
Ⅰ 形と大きさの計り知れない多様性
イリエワニ、ダチョウ、ヨーロッパクサリヘビ、コノハカメレオン、ハリモグラ、オカヤドカリ
Ⅱ できるだけ近づいてメスの生殖器を探りあてる。
マレーバク、アフリカゾウ、アオイガイ、マガモ、マダラコウラナメクジ
Ⅲ ナンパを邪魔する。
ジョロウグモ、オスミツバチ、チリメンウミウシ、イトトンボ ナナフシ
Ⅳ 受精を最適化するためにしがみつく、貫く。
セイウチ 、ファロステサス・クーロン、ヨツモンマメゾウムシ、ロンドコビトガラゴ、トコジラミ 、トリカヘチャタテ
Ⅴ コミュニケーションする。脅す、呼び寄せる、だます!
ケヅメリクガメ、チビミズムシ、シュントナルカ・イリアスティス、フォッサ
Ⅵ 快感を味わう! 生殖なき奔放な性
ケープアラゲジリス、コバナフルーツコウモリ、バンドウイルカ、ボノボ、カクレクマノミ、ドブネズミ
終わりに
◎著者プロフィール
エマニュエル・プイドバ(Emmanuelle Pouydebat)は、フランス国立科学研究センターおよび国立自然史博物館の研究主任。動物の行動生態・進化を専門分野として研究しており、サル、ゾウ、肉食動物、鳥類、節足動物といった生物を対象とした学際的なプロジェクトを数多く組織している。フランス国立科学研究センター銀賞など受賞多数。著作『Atlas de zoologie poétique(図解 詩的生物学)』(アルトー社刊、2018、未邦訳)、『鳥頭なんて誰が言った? :動物の「知能」にかんする大いなる誤解』(早川書房、2019)をはじめ、数々のエッセイが大きな反響を呼んでいる。
ジュリー・テラゾーニ(Julie Terrazzoni)は、イラストレーター兼美術教員。伝統的な技法や自然への関心から植物学や動物学に造詣が深く、対象への独特のヴィジョンを、伝統的な技法やクラシックな表現と融合させた作品を得意とする。エマニュエル・プイドバの著作『図解 詩的生物学』にもイラストを提供している。
◎編集者より
生物たちのあくなき挑戦と内容に驚愕しつつも、その必死な姿と懲りない性格(オスの)がどこかコミカルに思えてきます。小さなものも大きなものも、すべてが全力でダイナミックに生きていることに感動します。イラストの美しさも必見。オスの生殖器ももはや植物ではというものもあり、造形的な個性と美しさに感心します。
◎求龍堂について
求龍堂は1923年創業、今年でちょうど100年を迎えた美術書出版社です。社名の求龍(きゅうりゅう)はフランス語の「CURIEUX」からとったもので、「芸術的あるいは知的好奇心を求める」「常に新しきを求める」ことを意味し、名付け親は画家の梅原龍三郎です。東洋の「龍」に理想を求め、時代という雲間を縦横無尽に飛び交いながら、伝統美からアート絵本まで、常に新たな美の泉を発掘すべく出版の旅を続けています
【会社概要】
社名:株式会社 求龍堂
本社所在地:東京都千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋新館1階
代表取締役:足立欣也
創業: 1923年
事業内容: 美術品・生活文化関連図書の出版、美術印刷物の企画製作、美術品売買
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