公益財団法人東京観光財団(東京都新宿区、理事長:金子 眞吾、以下「TCVB」)は、タイムアウト東京(東京都渋谷区、編集長:リム・チーワ )と、共同研究「ポストコロナにおける東京の魅せ方 タイムアウトエディターの視点から」を実施しました。
【研究実施の経緯と目的】
世界的なパンデミックにより、人々の生活様式、旅行に対する意識は変化したと言われています。そのような流れを受け、日本よりも早くコロナによる規制が緩和された諸外国では、ウェルネスや伝統文化、環境の保護、ローカルコミュニティへの貢献等、よりサステナブルな観点から都市をプロモーションする傾向が見られました。
『観光が新しいフェーズを迎えた今、地域はこれまでと同じ内容の魅力発信を継続していて良いのだろうか』との疑問から、本研究はスタートしました。インバウンド需要が本格的かつ急速に回復した今、彼らは東京に何を求めてやってくるのか。コロナ禍を経て彼らが日本にやってくる理由とは。より的確に地域の魅力を訴求するためには、「インバウンド目線」で地域の魅力を改めて深掘りすることが重要です。
本研究では、ポストコロナ期を迎え、地域がインバウンド客を誘致するにあたり必要なブランディング・プロモーションの視点について再考するため、世界的なシティガイドである『タイムアウト』の6つの都市の編集者と「ポストコロナにおける東京の魅せ方」を座談会形式で議論しました。インバウンド客へのより的確なアプローチに向けて、研究から見えてきた地域の魅力の深掘りに必要なことを提案します。
【研究内容・構成】
本研究は、タイムアウト誌の6都市(ロンドン、香港、バンコク、クアラルンプール、シンガポール、東京)を拠点とする、いずれも複数回以上の訪都または滞在経験のあるエディターたちとオンライン座談会を実施。エディターたちへの事前ヒアリング及び座談会での意見から、以下のような内容を中心に最終報告書としてまとめた。
なぜいま日本・東京へ?インバウンド客のマインド
東京の魅力深掘り:5つのキーワード
東京とサステナビリティ
東京は今後、どのような特徴をアピールしていくべきか
地域の魅力の深掘りに必要なこと
【ポストコロナに突入:いまのインバウンド客の旅行マインドとは】
2023年10月訪日外客数はパンデミック以降初めて2019年レベルを上回り(JNTO発表)、その後も高い水準で推移している。エディターたちによれば、現在、日本や東京を観光している多くの外国人旅行者の旅行マインドには、長く続いたパンデミックが大きく影響しているという。
日本は、死ぬまでに一度は訪れたい場所のリストの上位にあり、ここ数年間行くことが出来なかった。機は熟した、もう待たない、十分待ったからと思った人もいる。貯金をし、計画を立てる十分な時間もあった。大旅行をしたいといったとき、東京はヨーロッパから見ると最大の旅行になる。これが、人々が東京に来る原動力。(ロンドン)
パンデミックで待つことが得策でないことがたくさんあるのだと思い知らされた。何が起こるか分からないのだから、やりたいことがあるのなら今やらなければ、と思うようになった。東京が清潔、安全、機能性に優れていることを知っているので、異国の都市に滞在する旅行者の不安が払拭される。よって東京が世界で訪れたい都市ランキングの上位に名を連ねることになっている。(クアラルンプール)
【タイムアウトエディターの視点で見えてきた東京の魅力:5つのキーワードとは】
意見交換から導き出されたキーワードは以下の5つ。誰もが知る観光名所や食体験に留まらず、「建築」「アート」「バーシーン」「地域の花火大会」等、メインストリームではないが、インバウンド目線で魅力的に映るオルタナティブな内容にも、きちんと焦点を当てることが重要である。また、「歩いて巡る」「一人で楽しむ」といった、旅行者の視点に立ったその都市ならではの楽しみ方や過ごし方の提案も必要。
1. WALKABLE (ウォーカブル)
2. 多様な楽しみ方
3. 食・食・食体験
4. SOLO TRAVELLER FRIENDLY(ソロトラベラーフレンドリー)
5. REPEATABLE(リピータブル)
旅行者は、東京は公共交通機関が発達した巨大な都市であるにも関わらず、徒歩でも街を回れることに驚き、楽しみを見出している。あえて歩くことで偶然に出くわす地域の神社や店、空間等に、自分だけのお気に入りを見つけた気分になり、旅の貴重な体験になるという。
誰もが知る観光地を巡るだけではない、多様な楽しみ方がある。ミシュランガイドのレストラン、近代建築、著名芸術家の個展やギャラリー、バー、個性あふれる古着屋巡り等だ。長らくSNSが旅マエの情報収集として主流な手段となり、生成AI等の普及により旅の目的は今後さらに多様化すると予想される中、東京の楽しみ方もより一層十人十色となっていくと考えられる。
東京の魅力は一流レストランに行かなくても、偶然入った飲食店や居酒屋においても常に満足度の高い食事が楽しめること。また、全国から集まる東京の食材の品質の良さが、強力な東京の魅力に繋がっている。
BBCによれば2023年に「一人旅」を検索した人数は、5年前に比べてほぼ倍増し、世界的にもソロトラベルは注目されている。治安の良さ、多言語サービスの充実も影響し、行動しやすく、一人で食事をしていても不自然に思われない東京は珍しく、一人旅に適しているとの意見が多かった。
東京は常に変化し、新しくやることがあり、多摩島しょエリアもある。それが、東京をリピータブルな観光都市にし、「何度行っても違う顔がある」「同じ経験は二度と出来ない」という。
【東京がもっとアピールすべき点 ―守って欲しい個性とは】
旅行がより個人志向になることを鑑み、『東京はバジェットフレンドリーであり、多様な予算希望に応じた楽しみ方を提案できる』や、ファミリー層やハラール向けのアピールにはまだ余地があるとして『あらゆる旅行者を歓迎する準備が整っているとアピールして欲しい』との意見も。
そして、観光客とローカルの人々が一緒に楽しんでいる今の渋谷は非常に良い状態と言及した上で、『間違っても地元住民が行かないような純粋な観光スポットにあふれた東京ではなく、今の在り方を保ち続けて欲しい』とコメントがあった。
【今こそ地域の魅力の深掘りに必要なこととは?】
インバウンドが急回復した今、地域は住民生活との調和や地域経済の活性化も考慮しながら、改めてポストコロナ期の観光振興の在り方を模索しています。インバウンド誘客のためのマーケティング活動には、様々な手法がありますが、本研究を踏まえ、私たちは、改めてインバウンド目線で自地域の魅力やあるべき姿について、直接当事者からフィードバックを得る機会の重要性を認識しました。本研究を締めくくるにあたり、レポートでは、地域の魅力の深掘りに必要な2つのことを提案しています。
1. 定性データとしての外国人旅行者の声を集め、分析する。
2. グローバルな旅行メディア、シティガイドが何を評価しているかを意識する。
戻ってきたインバウンド客の期待に応え、的確に訴求するためにも、今こそインバウンド目線と地域のブランディングコンセプトや発信内容にズレはないか、丁寧に確認する必要があるのではないでしょうか。
共同研究報告書:
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/postcovid_jointresearch_fnlreport_issued20240321.pdf
TCVB共同研究:
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/research/theme/
タイムアウト東京による記事:
【前編】
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/tcvb-tot-roundtable-discussion-report
【後編】
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/tcvb-tot-roundtable-discussion-report-part2
▼東京観光財団について
東京の観光振興に関する各種事業を推進する東京都の政策連携団体。「世界から選ばれ続けるTOKYOへ。」を組織理念に掲げ、様々なパートナーと連携しながら、旅行者やビジネスイベンツを誘致するとともに、地域の観光振興や受入環境を向上するための取組を幅広く展開。
組織名:公益財団法人 東京観光財団
理事長:金子眞吾
所在地:〒162-0801 東京都新宿区山吹町346番地6 日新ビル
設立: 2003年10月15日
URL:https://www.tcvb.or.jp/jp/
▼タイムアウト東京について
タイムアウトは、1968年にロンドンで創刊されたシティガイド。ローカルエキスパートが編集するガイド手法が支持を集め、現在は、333都市、59カ国、14言語に展開している。地域密着のガイドでありながらグローバルブランドというユニークな立ち位置となっている。タイムアウト東京は、2009年に事業を開始し、日本のインバウンド市場をリードするメディアとしてのポジションを確立。日本語・英語のバイリンガルで、東京はもちろんのこと、地方も含めた日本の魅力を国内外に発信している。
<公式SNSアカウント>
X(旧Twitter):https://twitter.com/TimeOutTokyoJP
Facebook:https://www.facebook.com/timeoutjp
Instagram:https://www.instagram.com/timeouttokyo_jp/
【本件に関する問合せ先】
公益財団法人東京観光財団 総務部総務課(企画調査)山村・工藤
電話:03-5579-2680 メールアドレス:sanjyokaiin@tcvb.or.jp
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