酸化ストレスと認知力や記憶力、筋力の影響について
高齢になるにつれ、酸化ストレスが上昇し、これに伴い恒常性機能低下が起こることはよく知られています。老化は酸化ストレスの蓄積の結果であり、酸化ストレスは様々な疾患を引き起こす重要なファクターにもなります。高齢で顕著になる認知・記憶力、筋力低下にも酸化ストレスは関連し、進行すれば認知症やフレイル※に発展する可能性が高くなります。本試験では、抗酸化サプリメントによって認知力や記憶力、筋力に影響を与えることができるかどうかを検証しました。
※フレイル:年齢とともに運動機能や心肺機能が低下することで筋力や心身の活力が低下、これにより移動能力などが障害されることを指します。これにより、介護を必要とする可能性が高くなります。
研究概要
認知力・記憶力の改善
認知能力はモリス水迷路試験を用いて評価しました。
水を張ったプールにマウスを泳がせ,プラットホームに到達する時間を測定します。プラットホームはマウスからは見えないため,周りの景色を頼りにプラットホームを探索する必要があります。すべてのマウスがプラットフォームの位置を学習しました。Twendee X投与群は無処置群よりも全試行日の平均到達時間が早い結果でした(図A)。更に、プラットフォームの周辺を泳いでいた時間もTwendee X投与群で有意に延長され(図B)、遊泳速度も速い結果でした(図C)。このほか、短期記憶力を測定する試験においても、Twendee X投与群は有意に短期記憶力が向上しました。
Twendee Xは、老齢マウスの空間学習能力を改善する。Twendee Xを投与した老齢マウス(n = 7)と年齢をマッチさせた対照マウス(n = 7)を用いた。* p < 0.05、** p < 0.01、nsは有意差なし。これらのデータは平均値±SEで示した。ゴールまでの時間のデータは、二元配置分散分析を用いて統計的に評価した。移動速度(水泳)とプラットフォーム四分円での滞在時間の比率は、両側、対にならないスチューデントのt検定を用いて統計的に評価した。
筋力低下の予防
1か月間、水またはTwendee Xを投与した高齢マウスをトレッドミルの上で走らせ、投与した前後で走行距離がどの程度変化するかを比較しました。各群において、投与前の走行距離を100%とした場合、対照マウスは投与前より減少する傾向がありましたが、Twendee X投与群は増加傾向を示しました。また、両群を比較した場合、投与1ヵ月後の走行距離の増加率はTwendee X投与群のほうが対照マウスよりも有意に高い結果となりました(青棒対赤棒)
Twendee X投与前後における老齢マウスの相対的なトレッドミル走行距離。各飲料水投与開始前の走行距離を100%とした。n=8。* p < 0.05。nsは有意ではないことを意味する。データは平均値±SEで示した。データは一元配置分散分析にTukey-Kramer検定を加えて統計的に評価した。
これらの結果から、抗酸化サプリメントTwendee Xは、加齢に伴う認知力・記憶力低下及び筋力低下を予防する可能性が示唆されました。医薬品ではないサプリメントが認知機能や筋力低下を予防できる可能性があるのは非常に画期的なものです。長期間の抗酸化サプリメント服用により生活の質を向上できる可能性が期待されました。
抗酸化サプリメント Twendee Xとは
本研究で用いた抗酸化サプリメントTwendee XはビタミンC、L-グルタミン、ナイアシン、L-シスチン、コエンザイムQ10、ビタミンB2、コハク酸、フマル酸の8つの有効成分から構成されています。医薬品に要求される厳しい安全性試験(染色体異常、毒性、突然変異試験)を実施し、全てクリアしています。Twendee Xの抗酸化能は下記に示すメカニズムによって、ヒトにおいては軽度認知障害(MCI)の認知症の予防に効果があることが認められています。
・酸化ストレスの低減 ・ミトコンドリア保護作用
・エネルギー産生の増加 ・オートファジー機能維持
・神経新生細胞の増加や維持 ・テロメアの伸長
・腸内細菌叢の調整 ・血中血糖値の上昇抑制
書誌情報
DOI: 10.3164/jcbn.23-71.
URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/25/5/2804
論文: Fukui K, You F, Kato Y, Yuzawa S, Kishimoto A, Hara T, Kanome Y, Harakawa Y, Yoshikawa T. A Blended Vitamin Supplement Improves Spatial Cognitive and Short-Term Memory in Aged Mice. Int J Mol Sci. 2024 Feb 28;25(5):2804.
組織概要
ルイ・パストゥールの理念に基づき、ウイルス性疾患や癌や難病などに関し、医学内部の専門性の境界にとらわれず、とくに各人に内在する自然免疫力の増強の観点から、基礎的・臨床的研究を行い、心身両面での、人々の病気に対する悩みを可能な限り軽減し、予防することを目標とする。
公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター
所在地:〒606-8225 京都市左京区田中門前町103-5
理事長:吉川敏一
HP:http://www.louis-pasteur.or.jp
抗酸化研究室HP:https://antioxidantres.jp
<主席研究員 犬房春彦について>
公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室 主席研究員
岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座 抗酸化研究部門 特任教授
日本認知症予防学会 エビデンス創出委員会 実行委員、日本脳サプリメント学会 理事
略歴
1982年近畿大学医学部卒業。1988年近畿大学医学部大学院外科学系卒業(医学博士)。専門は消化器外科で腹腔鏡手術、癌転移の研究。近畿大学を退職後、2007年より医療財団TIMA establishmentの主席研究員としてアルコール代謝、糖・脂質代謝、酸化ストレスの研究を開始。2013年岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座 抗酸化研究部門の新設にあたり、特任教授に就任。現在は酸化ストレスと抗酸化配合剤「Twendee X」に関する研究を行う。 2020年3月より公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室 主席研究員。
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