この本では、子どもの頃の食体験がその後の成長にどんな影響を与えるのか、主に精神発達の観点から考えます。
幼少期の子どもの発達相談で、最も多い相談内容の一つは「食」に関することです。
食べ渋り、食べるスピード、偏食、好き嫌い、こだわり、栄養の偏りなど。
子どもたちの食体験は、彼らが抱える課題や生きにくさ、学校でのトラブルとも密接に関連しています。一日3食、人は人生を通じて延べ9万回もの食事を摂ると言われています。それだけ人間の活動の中心にあり、なくてはならない「食事」。食事を通じて見られる問題や課題は、子どもたちが子どもである間に、できるだけ適切に、周りの大人たちがケアをしてあげたいものです。
そうは言っても日々の仕事や家事に追われ、子どもたちの健康と栄養を考え、好き嫌いに考慮した上で、毎日、毎食、適切な量の適切な食事を与えることはそれだけで大変なこと。「料理は愛情」という言葉からプレッシャーを感じる親御さんも、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
子どものしつけにおいて、
・いい加減にしなさい…「否定」
・~しなさい…「指示」
・~しちゃダメ…「禁止」
・~なんで〇〇するの…「詰問」
・〇〇しないと〇〇するよ…「罰」
というような5つの言葉群は、あまり効果的でないと言われています。
でも、子どもの食べ方が汚かったり、いつまで経っても食べ終わらなかったり、食べ物をこぼしたり、残したり、といったことが続けば、こうした言葉も自然と出てきてしまいます。大人たちは、いかにして子どもの食事における課題に向き合い、子どもが心に抱えるトラブルや問題を少しでも減らしていくことができるのでしょうか。
本書では、児童精神科医・医学博士であり、精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務した実績を持つ、宮口幸治氏を著者に迎え、子どもたちの「食」に絡む一つひとつ問題を丁寧に紐解き、その背景にあるものや、対応策についてわかりやすく解説していきます。
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目次
はじめに
Chapter1「普通に食べる」が難しい子どもの存在
子どもの周りにあるトラブル
食が絡んだ子どもの問題とその背景
Chapter2子どもにとっての食事の意義
一食の重み
発達と食
もし子どもが適切な食事を与えられないとしたら
Chapter3適切な食事と食環境とは?
誰とどう食べるのか
何を食べるのか
Chapter4親にとっての食事の悩み
与えることの難しさ
子どもとの食事場面は親のストレスを高める⁉︎
食事場面での親のタイプ
タイプ別の戦略
Chapter5味覚以外の食事の意義
誰と食べるか、いつ食べるか
食事は子どもの心を育む営み
おわりに
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略歴
宮口幸治
児童精神科医・医学博士
立命館大学総合心理学部・大学院人間科学研究科教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務し、2016年より現職。医学博士、子どものこころ専門医。一般社団法人日本COG-TR学会代表理事。著書に『ケーキの切れない非行少年たち』、『どうしても頑張れない人たち』(いずれも新潮新書)、『境界知能の子どもたち』(SB新書)などがある。
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