資生堂は、肌の健康と美しさを維持するための新たなメカニズムとして、世界で初めて、匂い結合タンパク質OBP2A※1がヒトの表皮では恒常性維持に寄与し、表皮バリアの一端を担っていることを発見しました(図1)。ヒトの鼻の内側に存在する匂い結合タンパク質OBP2Aは、細胞にダメージを与えるストレス分子をフィルタリングする機能があることが知られています。本研究では、そのOBP2Aが表皮でも発現していることを解明しました。また、OBP2Aの発現を高める成分「フランス産ホワイトリリー花エキス」も見出しています。今後、本研究成果を活用し、環境変化の激しい現代社会においても、健やかで美しい肌へと導くソリューションの提供を目指します。
※1 Odorant binding protein 2A
《研究概要》
今回、皮ふの免疫染色を行い、表皮内にもOBP2Aが存在することを明らかにしました(図2)。
また、OBP2Aを減少させた表皮細胞に、環境中にある匂い成分ノネナール※2(外的ストレス分子)と皮脂や汗などに含まれる成分であるオレイン酸、パルミトレイン酸(内的ストレス分子)を与えると、ストレス分子に対する防御力が低下し、細胞生存率が下がることが分かりました(図3)。さらに、OBP2Aを減少させた表皮モデルでは表皮厚が薄くなり、肌のうるおい成分であるラメラ顆粒の分泌が減少することと、水分蒸散量が増加し表皮バリア機能が低下することも分かりました。
加えて、OBP2Aの発現量を高める効果のある成分についても探索を行い、ユリの一種であるマドンナリリーの花から抽出した「フランス産ホワイトリリー花エキス」に、表皮中のOBP2Aの発現を高める効果があり、表皮厚を増加し、水分蒸散量を低下させ、表皮バリア機能を高めることを発見しました。
資生堂は、五感を刺激する物質に対して、肌がそれらを自ら認識する機能について研究を進めています。肌が本来持っている力を解明し、その機能を強化することで、どんな環境でも揺るがない健やかで美しい肌の実現を目指します。本研究成果の一部については、サイエンス分野で歴史と権威のある国際的な研究集会である「Gordon Research Conference」※3(2023/8/6-8/11)にて口頭発表に選ばれました。
※2 加齢に伴い発生する特有の香り(加齢臭)の主成分。資生堂は、ノネナールが肌にもダメージを引き起こすことを発見している。
資生堂、世界初 ノネナールが肌ダメージを引き起こすことを発見(2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003114&rt_pr=trq58
※3 1931年より、同名の非営利団体によって開催されている国際科学会議
R&D戦略について:
本研究はR&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、皮ふ内部の状態と肌との関連を明らかにする皮ふ基盤研究領域を応用し、肌が持つ知性とも言うべきハイレベルな機能を明らかにすべく進めました。
・2023 年統合レポート(ビューティーイノベーション)
https://corp.shiseido.com/report/jp/2023/message/cmio/?rt_pr=trq58
・キーワード
Skin Beauty INNOVATION、皮ふ基盤、OBP2A、表皮
▼ ニュースリリース
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003831&rt_pr=trq58
▼ 資生堂 企業情報
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