佐賀県嬉野温泉にある旅館「和多屋別荘」主宰の第2回三服文学賞。「暮らしのなかで書く時間を愉しむ」という理念のもとに立ち上げたれたこの賞は、足湯に浸かるように気軽に書いてほしいと”2000文字以内”という規定で、広く募集を行ないました。海外からの応募も含めた応募総数1,241作品から、大賞に輝いたのは葦田不見(あしだ・みず)さんの「
水のからだ
」です。
「器」がテーマになっている本作品は、美しい比喩で新しい本との出会い、読書体験がわたしたちを形づくることを丁寧に表現している点が評価されました。
わたしたちのうちには言葉という水が張られている。
わたしたちは語る、そうして己の液体を少しずつ溢(こぼ)していく。
「水のからだ」より引用
当日は館内の書店「BOOKS&TEA 三服」にて、葦田さんへのインタビューやご本人による作品の朗読、1年のあいだライターインレジデンス権で滞在できる客室のメディアツアーなど三服作家のこれからの活動に迫るほか、三服文学賞の裏側もお届けします。葦田さんにお聞きしたいことなどがある方、ぜひお気軽にご参加ください。
[ 第2回三服文学賞 授賞式 ]
日時:2024年7月14日(日)11時~
場所:BOOKS&TEA 三服
参加費:無料
大賞賞品
❶三服作家について
大賞受賞者には「三服作家」の称号が授与されます。三服作家はライターインレジデンスとして、和多屋別荘に宿泊し、三服で執筆活動を行う権利が1年間得られるなど和多屋別荘があなたの執筆活動を全面的に応援します。
❷書籍化について
大賞作品をもとにオリジナル書籍を制作いたします。制作した書籍は、BOOKS&TEA三服や嬉野温泉周辺だけで購入することができるご当地本になります。販売収益は今後の三服文学賞の運営に活用させていただきます。
●葦田不水さん受賞コメント
第2回三服文学賞の大賞受賞、ありがとうございます。偏に普段から応援してくれている方々のおかげです。
受賞作「水のからだ」では、誰もが水のからだであるとし、人の営みを水の流れに喩えましたが、今日流れているのはきれいな水ばかりではありません。
水の惑星、地球は人の手で汚されていますし、望まれないはずの赤い水が今この瞬間もあちこちで流れています。どうかあなたの水が「正しく」使われることを願っています。
選考委員長、選考委員のコメントは以下の通りです。
●選考委員長コメント
◇小原嘉元(和多屋別荘・代表取締役)
嬉野で400年続く「肥前吉田焼」と同じ「器」がテーマとなっている作品ですが、何かを入れることで意味を成すという自然すぎる役割が器にはあるとハタと単純ですが気付かされました。
また、人間もまた器であり、本や伝承・経験を通して満たされていく様がなるほどと思わされる点でもありました。
器の中は、如何様にでもなる。日々、流動的に動き、時に緩やかになること。そして激しく流れ、器からこぼれ、新しい動きや出会い、考えが溜まり、流れを繰り返す。
この11年間の和多屋別荘の動きそのものであり、この文学賞もこの動きの中で生まれたものです。
作品内で語られた生き物のような動きは、旅館や経営もそうであるようにと納得させられ共感した作品でした。
●選考委員コメント
◇染谷拓郎(株式会社ひらく プロデューサー)
民藝運動の中心人物であった陶芸家・河井寛次郎は「新しい自分が見たいのだ 仕事する」という言葉を残しています。
器、というものを作りつづけることで新しい自分に出会うこと。
そして、本を読むことも、新しい自分に出会う助けになります。
この作品が、多くの人に読まれ、作品自体が一つの器になることを期待します。
◇深井航(株式会社ひらく ブックディレクター)
抽象的な問答でありながら、各所にちりばめられた比喩によって読み手を置いていくことなく、瑞々しく読ませる力強さを感じました。
この作品が、2万坪という器を持つ和多屋別荘と共鳴するのも必然かもしれません。
◇堤優衣(日本出版販売株式会社)
目の前にある一杯のお茶から哲学的に広がる表現力は、まさに“本を飲む(読む)”感覚を与えてくれます。
もしかすると、この世には多くの、「器」と呼べるものが存在しているのかもしれません。
そして、それがいずれは、私たちの生に繋がっているかもしれないことが尊く、美しく、この言葉たちを何度も反芻し、味わいたくなるような作品でした。
そのほかの受賞作品、各作品の選評コメント、次点作品一覧は以下からご覧いただけます。
〈受賞作品・次点作品紹介〉
https://wataya.co.jp/topics/2024/05/9698
■三服文学賞とは
お茶と本を愉しむための書店「BOOKS&TEA 三服」を館内に開業した旅館・和多屋別荘が主宰する温泉旅館発の新しい文学賞です。
三服や嬉野温泉に関わりのある7つの事柄をテーマに文学作品が募集され、大賞受賞者には受賞作の書籍化と和多屋別荘に1年間宿泊して執筆活動ができる“三服作家”としてのライターインレジデンスの権利が進呈されます。
三服文学賞は「暮らしのなかで書く時間を愉しむ」という理念のもと立ち上げられました。料理を食べる楽しみがあれば作る楽しみもあるように、文学にも読む楽しみがあれば、書く楽しみがあっていい。
普段なかなか文章を書く機会がない方、嬉野温泉や三服に訪れたことがない方、プロアマ問わず、全国から広く作品を募っています。
三服文学賞|佐賀県 嬉野温泉 – 和多屋別荘 (wataya.co.jp)
■BOOKS&TEA三服とは
BOOKS&TEA三服は、和多屋別荘(佐賀県嬉野市)が開業した、「お茶」「暮らし」などのテーマにあわせた、約1万冊の書籍を自由に閲覧・購入可能な書店です。
お茶に関する貴重な古書や、「一服、二服、三服」とジャンルを横断して深く知ることができる特集コーナーなど、知的好奇心を刺激するセレクトが自慢です。
「三服」という名称には、お茶を飲んで一服する体験をより多く・深く体験していただきたいという想いが込められています。
BOOKS&TEA 三服|レストラン&スパ|佐賀県 嬉野温泉 – 和多屋別荘 (wataya.co.jp)