※1 効果的な自然保全が行われている地域を示す国際的な認定制度
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開発の背景
日本の国土面積の約7割を占める森林は、木材の供給、二酸化炭素の吸収・固定、災害による被害の軽減など、人々の生活に欠かせない多面的な機能を有しています。森林の保全には森林内部の状況を把握する必要がありますが、その確認は人が実際に森林内に立ち入って行うことが多く、安全上の懸念が生じるばかりか、膨大な時間と労力、費用が必要でした。さらに、木材を卸して得られる森林所有者の収益は減少の一途を辿り、また林業従事者も減少傾向にあります。そのため、管理が行き届かず、有効活用されていない森林が日本国内には数多く存在しています。
森林の荒廃は、例えば木材加工など、林業と関係の深い地域産業を衰退させるだけでなく、災害による被害の拡大や生物多様性の喪失が進むなど、地域社会に大きな影響を与えるおそれがあります。また、木材を消費する建設業界にとっても、国産木材が安定的に供給されなくなるリスクがあります。
そこで当社は、国際的なネイチャーポジティブの潮流も踏まえ、自治体や企業の持続可能な森林づくりを支援すべく、2022年4月から、森林管理、森林づくりにおける生産性および付加価値の向上に寄与する「Forest Asset」の開発に取り組みました。
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「Forest Asset」の概要と特長
「Forest Asset」を活用することで、森林管理の生産性が向上するほか、森林資源を生かしたJ-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請など、森林が持つ潜在的な付加価値向上に向けた取り組みが可能となります。
「Forest Asset」の核となる技術は次の2つです。
1.国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 (総長:杉山直)と共同で研究開発した、上空からドローンで取得した森林の点群データ情報を解析し、材積(木材の体積)や樹種、樹高、立木位置、胸高直径を高精度で推定する技術
2.スウェーデンのDeep Forestry社製の、森林内の自律飛行かつレーザー計測が可能な高性能ドローンを国内で初めて活用することで、上空からではなく、森林内をレーザー計測して点群データを取得し、樹高、立木位置、胸高直径・曲がりや下草の有無など多様かつ複雑なデータを高精度にデータ化する技術。
従来の人手による計測可能範囲が約0.1~0.3ha/日であることに対し、同技術を用いることで約10ha/日もの範囲を正確にデータ化できるため、30倍以上の省力化が可能
この2つの技術で得られた点群データを連携させることで、広範囲にわたって樹種ごとのボリュームを把握できるだけでなく、その中の樹木1本1本の位置や樹高といった詳細な情報をデジタル空間上で高精度かつ立体的に可視化することができます。
さらに、当社がこれまで実施してきた、希少動物の生育環境調査などの自然環境調査技術を組み合わせることで、生物多様性を向上させるプランや森林の水源涵養機能を高めるプランなど、森林が持つ潜在的な付加価値を最大化するプランを立案して、J-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請に繋げることができます。
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「Forest Asset」の実証と効果
「Forest Asset」提供の初弾として、本年5月に、三井住友銀行が神奈川県伊勢原市日向地区での認証を目指しているOECMの事前調査に「Forest Asset」の一部技術を採用し、その有用性を確認しました。
また当社グループは、日本国内に東京ドーム約1,170個分に相当する、約5,500haの社有林を保有しています。当社らは、これら森林の計測、解析技術を通じて、生物多様性、樹木の成長解析などそれぞれの森林の特徴に応じた森林づくりを行ってきました。今般、当社は株式会社かたばみ(鹿島グループ会社、東京都港区、社長:髙野博信)と連携し、「Forest Asset」の核となる、森林内を自律飛行しレーザー計測する高性能ドローンを活用して、福島県および宮崎県の社有林約170haを対象にJ-クレジット制度に申請しました。
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今後の展開
鹿島は今後、「Forest Asset」を新たな事業の一つと位置付け、森林を保有管理する自治体や企業の持続可能な森林経営を積極的に支援してまいります。さらに、先般公表した「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、カーボンニュートラルおよびネイチャ―ポジティブの実現に貢献すべく、森林保全に向けた取り組みを推進してまいります。
(参考)
鹿島環境ビジョン2050plus
https://www.kajima.co.jp/sustainability/policy/vision/index-j.html