1.背景
近年、カーボンニュートラル社会の実現に向け、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)(※1)の普及が進むなど、快適・安心と省エネ性の両立が求められています。
住宅性能表示制度(※2)における省エネ性能に関わる上位等級として、2022年10月に断熱等性能等級6、7(※3)が新設されたことから、今後、高断熱住宅の増加が想定されます。
一方、空調負荷は住宅の高断熱化で小さくなることが想定され、空調機器についても、使い方や選び方を工夫することで、より良い室内環境の提供と効率的なエネルギー利用につなげられる可能性があります。このような中、全館空調システムは、年間を通じて住宅内の室温を一定に保つことができ、より効率的なエネルギー利用につなげられることから、2030年度には2023年度比で1.3倍(※4)の市場規模に拡大すると予測されています。
2.取り組みの概要
2024年7月から2026年3月にかけて、断熱性能と空調方式の違いが、エネルギー消費や室内温熱環境にどのように影響するのか、実験住宅を用いて検証を行います。
具体的には、東京電力ホールディングス株式会社経営技術戦略研究所(所在地:神奈川県横浜市鶴見区)にある2棟の実験住宅のうち1棟を断熱等級6相当に改修し、LIXILが開発した断熱等級6以上の高断熱住宅を対象とした全館空調システム「エコエアFine」を設置することで、全館連続空調を行います。また、もう1棟を現在の断熱性能レベルの住宅とし、エアコンを居室毎に間欠運転(※5)させることで2棟の電力消費量と室内温熱環境を計測し比較分析を行います。なお、本実測は、東京大学の前(まえ) 真之(まさゆき)准教授協力の下、計画しました。
LIXILと東京電力EPは、本実測により高断熱住宅における全館空調システムのエネルギー消費や温熱環境の実態を明らかにし、カーボンニュートラル社会の実現に向けた住宅の高断熱化において、より良い室内環境とお客さまへ効率的なエネルギー利用のご提案ができるよう、取り組みを進めてまいります。
<実測スケジュール>
■2024年度 現在の断熱性能レベルの住宅と断熱等級6相当の住宅の比較
・2024年夏:夏期の実測、比較分析
・2024年冬:冬期の実測、比較分析
■2025年度 約30年前の断熱性能レベルの住宅(断熱等級2(※6)相当)と断熱等級6相当の住宅の比較
・2025年夏:夏期の実測、比較分析
・2025年冬:冬期の実測、比較分析
<実測場所>
以上
※1 住まいの断熱性・設備効率を上げ(省エネ)、太陽光発電などエネルギーを作ることにより(創エネ)、年間の一次エネルギー消費量の収支をプラスマイナス「ゼロ」とする住宅。
※2 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度。
※3 外壁、窓等を通して熱の損失の防止を図るための断熱化等による対策の程度を示した指標。等級6は「熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている」、等級7は「熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている」と定義され、地域の区分ごとに外皮平均熱貫流率および冷房期の日射熱取得率が規定されている。
※4 出典:富士経済 「住設設備・建材市場トレンドデータ便覧2024」
※5 エアコンの稼働と停止を繰り返す運転方法。
※6 等級2は「熱損失の小さな削減のための対策が講じられている」と定義されている。