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・『アザラシのアニュー』あらすじ
・生まれてから2週間で母親と別れる!? たくましく生きる姿を描きたい――――あずみ虫さんインタビューより
・書誌情報
・著者情報
『アザラシのアニュー』あらすじ
さむい冬のある日。地球の北のほうにある海の氷の上で、タテゴトアザラシのあかちゃんがうまれました。おかあさんはあかちゃんに、アニューとなまえをつけました。アニューは、おかあさんのおちちをのんですくすくそだちます。ある日、おかあさんがうみにでかけると……。
アラスカに滞在して制作をする絵本作家・あずみ虫が描く、野生動物たちの物語。幅広い年齢から楽しめるストーリーで、動物への興味の入り口となる絵本です。アザラシのあかちゃんが一生懸命に成長する姿を、親しみやすいイラストで描きます。巻末には、アザラシの生態を解説するページも収録。
生まれてから2週間で母親と別れる!? たくましく生きる姿を描きたい――あずみ虫さんインタビューより
――『アザラシのアニュー』について、タテゴトアザラシを描こうと決めたきっかけなどあれば教えてください。
タテゴトアザラシの赤ちゃんの可愛い姿に惹かれました。また、生まれてからたったの2週間で母親と別れるという生態に衝撃を受け、そのことを軸に絵本を作ってみたいと考えました。
実際にタテゴトアザラシの母親と赤ちゃんが別れるときの映像を見たのですが、離れていくお母さんに向かって赤ちゃんは何度も鳴くのです。見ているこちらからすると胸が痛くなるような悲しい声に聞こえてきました。その後、成長してたくましく生きていくことも含めて、親離れしていく子アザラシの姿を描きたいと思いました。
前作『ホッキョクグマのプック』は、2年という長い期間子育てをするホッキョクグマの親子の愛情を描いた作品でした。今回は、そこから一歩ステップアップするような、子どもが成長していく様子を描いたお話になっています。
――わが家でもこの絵本を読みましたが、子どもたちはアニューの気持ちに共感しながら聞いていました。
アニューの気持ちを描く上で⼯夫された点があれば教えてください。
アニューの目の表情でしょうか。
おかあさんと一緒にいるときは安心しきっているうれしい気持ちを、独り立ちしたアニューが勇気をだして泳ぎ出す場面では、たくましい気持ちを、目で表現したいと思いました。
――アニューのいろんな表情が見られるのがこの本の魅力のひとつですね。「水に入るのがこわい」とベソをかきながらも、がんばるアニューの姿が可愛いらしく、心に残ります。
子どものころ、『モチモチの木』(斎藤隆介 作/滝平二郎 絵、岩崎書店)が好きでした。主人公の男の子は泣き虫で甘えん坊ですが、病気で倒れたおじいさんのために、こわい夜道を懸命にひとりで走ります。その姿にすごく感情が動いたんですよね。
今回のアニューもひとりで懸命に危機をのりこえながら成長していきますが、そんな姿に共感してくれたらいいなと思っています。
――タテゴトアザラシの成長を追うことができるのもこの作品の魅力ですね。
タテゴトアザラシは、生まれたての時は、ヒョロンとやせているんですよね。その後ミルクを飲んで、どんどん丸くぷっくりとした姿になっていきます。
人間のあかちゃんもそうですが、アザラシも成長にあわせてこんなふうに体の形が変わっていくんだなと、形の変化も大事にしながら描いていきました。
体型と同様に、毛の色や模様も大人になるにつれ、何段階かに分かれて変わってきます。
タテゴトアザラシについてちゃんと調べるまでは、そのようなことも知らなかったので、そうしたひとつひとつが大きな発見でした。
生き物たちの生態については、よこはま動物園ズーラシア園長の村田浩一さんにアドバイスをいただいています。本当に心強いです。
――アニューが北極をめざし、海に入った最初の場面ですが、この作品を象徴する絵のように感じます。
北の海にはさみしいイメージがあったのですが、シュノーケリングで実際に海の中に入ってみると、色鮮やかなヒトデやウニなどがいて、大きな海藻が揺れていて、その間をたくさんの魚が泳いでいて、こんなに豊かだったの!? という驚きがありました。そのときの気持ちを大事に絵を描きました。
アニューはきっと心細い気持ちで海に入っていったと思うので、少しでも楽しい世界に包まれて欲しいなと、そんな願いを込めています。『スイミー』(レオ・レオニ作、好学社)も子どものころに大好きだった絵本なのですが、この場面は『スイミー』へのオマージュでもあるんですね。
――アニューを食べようとするシャチが現れる場面は、どきっとする印象深い場面ですね。
はい、本当にこんな風にシャチはすっと水面から頭を出してアザラシを見つけることがあります。
シャチは家族や集団でこうして流氷にのったアザラシをとらえようとします。母親がリーダーのケースも多いそうで、この絵本でもそのように描きました。シャチはシャチで、こうして獲物をとらえ、家族で大切に子どもを育てているのですね。
――最後にはオスの仲間とも出会います。アニューがきっとこの先、お母さんになるのだろうと読者の想像が広がるかたちで、物語が終わっていますね。
そうなんです。初めは子どもを産むところまで描こうかとも迷ったんですが、そうはしませんでした。けれど、きっとアニューはこの先、子どもを産み、同じようにこの海で命をつないでいくのだろうと思います。この本を読んで、そんなところまで感じてもらえたらうれしいです。
――あとがきでは、地球温暖化についても触れられています。
北極圏では永久凍土の氷がとけ、今までの暮らしができなくなっているところも多くあります。シトカから少し北にあるジュノーへ、毎年氷河を見に行っていますが、現地の方に聞くと、以前に比べて氷河が本当に小さくなってしまったそうです。私が初めて訪れた6年前に比べても、氷河が減っているのを感じます。海面水位の上昇も早まっていて、まさに人ごとではありません。
――次作の制作も進んでいると伺っています。
はい。シリーズ3作⽬は、今のところ、カリブー(トナカイ)を主人公にした作品を考えています。北極圏に生息するカリブーにとって、温暖化によって環境が以前と変わってしまったということを、物語の中でも描きたいと思っています。
――⼩学校低学年の読者に向けて、メッセージをお願いします。
私は子どものころ絵本が大好きで、絵本に出てくる動物たちと同じ気持ちになって、ハラハラしたりワクワクしたりしていました。この絵本を読んでくれるみなさんが、アザラシのアニューと同じ気持ちになって、一緒に冒険してくれたらうれしいです。
(あずみ虫さんのインタビューより抜粋)
インタビュー全文はこちら
https://www.doshinsha.co.jp/news/detail.php?id=3273
書誌情報
書名:アザラシのアニュー
作:あずみ虫
定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
判型:A4変型判
サイズ:24.6×21.6cm
ページ数:41ページ
ISBNコード:978-4-494-01593-1
発売日:2023年12月20日
対象:3歳から
童心社ホームページ:
https://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494015931
著者情報
【著者プロフィール】
1975年神奈川県生まれ。絵本作家、イラストレーター。安西水丸氏に師事。アルミ板をカッティングする技法で作品を制作。2010年講談社出版文化さしえ賞受賞。絵本『わたしのこねこ』(福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。写真家・星野道夫氏への憧れと野生動物への関心から、2018年よりアラスカに通い始め、現在はアラスカと日本を行き来しながら、作品を制作している。絵本作品に『ぴたっ!』『いもむしってね…』(福音館書店)『つるかめ つるかめ』(あすなろ書房)『わたしがテピンギー』(偕成社)『ホッキョクグマのプック』(童心社)などがある。