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2024年7月2日
国立大学法人大阪大学
国立大学法人岡山大学
株式会社メニコン
国立大学法人大阪大学(本部:大阪府吹田市、総長:西尾章治郎)大学院医学系研究科(以下「大阪大学」)、国立大学法人岡山大学(本部:岡山県岡山市、学長:那須保友、以下「岡山大学」)、株式会社メニコン(本社:愛知県名古屋市、代表執行役社長 COO:川浦康嗣)が共同で開発した眼科用視野確保材「シアーズ」が2024年6月3日付けで日本の新医療機器として承認を取得しましたことをお知らせします。
今回承認された、自己集合性ペプチドゲル技術を用いた本医療機器は、緑内障手術時の術野視認性を改善し、より良い医療の提供に貢献することが期待されます。
<医療機器開発の背景>
緑内障※1の治療は、薬物療法とレーザー治療及び手術があり、一般的には薬物療法とレーザー治療の治療が功を奏しなかった場合に、手術となります。近年の緑内障薬物療法の多様化に伴い、手術対象者は、長期間の薬物療法に伴う副作用としての結膜充血がしばしば認められます。そのため、手術時には非常に多くの出血を伴い、手術部位に血液が貯留し、その視認性は非常に悪いものとなることが多くなります。そのことから、血液を拭う、吸引する、生理食塩液等で血液を洗い流すなどの非常に煩雑な処置を続けることで視認性を確保しながら、手術を実施しているのが現状です。このような視認性の悪い中での手術は、医師に対してストレスを与えることはもちろん、手術時間の延長や手術の安全性低下による患者さんへの負担も大きくなります。
<開発の内容>
岡山大学大学院医歯薬学研究科システム生理学分野と株式会社メニコンは、自己集合性ペプチド(SPG-178※2)の開発を行いました。SPG-178は、水に溶解すると3次元ネットワークを持つハイドロゲルを形成します。このハイドロゲルは、中性pHにおいて非常に安定で透明性が高く、また生体適合性も高いことから、医療分野への応用が期待されていました。
大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)と株式会社メニコンは、この自己集合性ペプチド(SPG-178)ゲルの周囲に血液がある状態でもゲル内の透明性を維持する性質を利用した緑内障手術時の視認性を確保する材料としての最適な組成を検討し、数々の非臨床試験及びヒト臨床試験を実施しました。そして、緑内障手術時における医療機器として、その有用性を明らかにしました。
本研究開発の成果である眼科用視野確保材「シアーズ」により、緑内障治療上必要となった緑内障手術時において、非常に多くの術中出血による手術部位の視認性悪化を改善し、医師に対してストレス軽減はもちろんのこと、手術の安全性向上による患者への負担軽減が期待されます。
※1 緑内障
目から入ってきた情報を脳に伝える視神経が障害を受け、見える範囲が狭くなる病気です。主な原因は眼内圧の上昇とされ、その日本における罹患率は、40歳以上で5%、60歳以上では1割以上と非常に多く、日本において後天性失明原因の約40%を占め、後天性失明原因の1位の病気です。
※2 SPG-178
4種類のアミノ酸(アルギニン、ロイシン、アスパラギン酸、アラニン)が13個結合することによりできたペプチドです。このペプチドは、水中で自然に規則正しく集合することでナノメートルサイズ幅の繊維を形成します。これが3次元的に絡み合い、メッシュ構造を作ることで、水を多く含む透明なゲルを形成します。
<承認概要>
○ 医療機器承認番号 30600BZX00110000
○ 名称
・一般的名称 眼科用視野確保材
・販売名 シアーズ
○ クラス分類 Ⅲ
○ 使用目的又は効果
緑内障観血的手術時における手術補助(視認性確保)
本品は、緑内障観血的手術時に手術部位への血液の流入を抑え観察しやすくするために用いる視野確保材である。
<大学における研究代表者>
大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学) 西田幸二・松下賢治
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医) 成瀬恵治
<問い合わせ先>
・大阪大学
松下賢治(まつしたけんじ)
大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学) 准教授
TEL: 06-6879-3456
E-mail: kenmatsu@ophthal.med.osaka-u.ac.jp
大阪大学大学院医学系研究科 広報室
TEL: 06-6879-3387
E-mail: medpr@office.med.osaka-u.ac.jp
・岡山大学
岡山大学総務・企画部広報課
TEL: 086-251-7292
E-mail: kouhou@adm.okayama-u.ac.jp
・株式会社メニコン
渉外広報部
TEL: 052-935-1187
E-mail: presscontact@menicon.co.jp