野村不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区/代表取締役社長:新井 聡、以下「当社」)は、このたび当社グループが「2030年までの重点課題(マテリアリティ)」の一つとして掲げる「生物多様性」について、国際的な要求への対応及びネイチャーポジティブ※1の実現に向けた行動を促進するため、各事業活動の指針として「野村不動産グループ生物多様性方針(以下、「本方針」)」を策定いたしましたので、お知らせします。
本方針の策定にあたっては、グローバルで先進的な視点を考慮した内容とするため、国際的なNGOである公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区/会長:末吉竹二郎、以下「WWFジャパン」)の監修を受けており、2030年までの木材調達における森林破壊ゼロを掲げる等、事業活動との関連性を踏まえた具体的な方針を定めています。
また、当社は自然関連財務情報開示タスクフォースTNFD(以下「TNFD」※2)が2023年9月に公表した情報開示提言への賛同を表明し、このたび「TNFD Adopter※3」に登録しました。TNFD提言に沿って、当社グループの活動による自然環境や生物多様性への影響等について、本年度より積極的な情報開示を予定しており、事業活動と生物多様性保全を両立し、持続可能な街づくりによる価値創造を目指してまいります。
※1 ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること
※2 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)
※3 TNFD提⾔に基づき開⽰を⾏う意思をTNFD のウェブサイトで登録した企業等
1.「野村不動産グループ生物多様性方針」について
このたび策定した本方針では、生物多様性が街づくりという当社グループの事業に欠かせない重要な基盤であることを認識の上、その保全に関する国際目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組※4」に賛同し、ネイチャーポジティブの達成に向けた行動を促進することを掲げています。
本方針の中では、木材調達における森林破壊ゼロや生物多様性への影響に対するミティゲ―ションヒエラルキー※5(緩和階層)適用へのコミットメント、重点エリアである東京の自然と都市を舞台に、自然環境と人間活動を総合的に取り扱う「ランドスケープアプローチ※6」によるビジネスを通した課題解決の推進も示しております。
※4 2022年12月開催「生物多様性条約第15回締約国会議」にて採択された、2030年までの生物多様性に関する世界目標
※5 事業による生物多様性への悪影響を最小限に抑えるため、回避(影響を避ける)、低減(避けられない影響を低減させる)、代償(影響を復元・補償・相殺する)の優先順位で対策を検討すること
※6 流域の広がりや生態系のつながりを考慮し、事業を展開するエリアだけでなく広域地域や国家レベルでの保全に多様な関係者を巻き込んで取り組むこと
野村不動産グループの事業活動は、様々な段階で生物多様性や生態系の機能及びサービスに依存し、また影響を与えています。生物多様性に関する課題は事業環境やステークホルダーの生活環境を悪化させるリスクにつながるものである一方、事業活動を通した生物多様性への取組みは企業成長の機会となり、重要な経営課題として認識しています。生物多様性や自然に関連する課題に対して、事業活動を通じて当社グループ全体で取り組むために、本方針を策定しました。 今後は、本方針を実現するため、具体的な目標期限を定めた実行計画を策定し、その策定と達成状況の評価に際しては、第三者の視点を取り入れ、定期的な事業の見直しに反映させていきます。
(1) 当社グループは生物多様性が事業に欠かせない重要な基盤であることを深く認識し、その保全に関する国際目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に賛同し、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の達成に向けた行動を促進します。
(2) 当社グループの事業とサプライチェーンによる生物多様性への依存と影響の把握、及びこれらに由来するリスクと機会の評価と情報の開示を行ない、バリューチェーン全体での生物多様性への負荷を低減させ、自然環境を再生・回復させる取組を、関係するステークホルダーとの連携・協力のもと、推進します。
(3) 事業活動が及ぼす生物多様性へのネガティブな影響に対しては、回避・低減・代償の優先順位で対策を実施する「ミティゲーション・ヒエラルキー(緩和階層)」の原則を適用します。
(4) サステナビリティに関する課題が複雑に関連している認識のもと、脱炭素、気候変動適応、サーキュラーエコノミーの推進には、相乗効果とトレードオフがあることを理解し、統合的な視点でこれらの領域の課題解決を目指します。
(5) 2030年までに、当社グループの木材調達におけるサプライチェーン上での森林破壊・土地転換ゼロを目指します。
(6) 当社グループの主要事業エリアをもとに重点エリアを定め、重点エリアにおける森、川、街、海等の生態系の健全性と、人々のWell-beingを統合的に向上させる「ランドスケープアプローチ*」による社会課題の解決を目指します。また、NbS(nature-based solutions)を最大限活用し、ビジネスを通したネイチャーポジティブへの取り組みを推進します。
(7) 生物多様性に関する情報開示を適切に実施し、お客様や投資家、地域住民、行政、NGO等の幅広いステークホルダーに対する情報提供や対話に努めます。
本方針は、当社グループ全体に適用するものとし、当社グループが提供する個別の事業、商品、サービス等における生物多様性に関する戦略と行動を包括的に規定するものと位置付け、社会状況の変化や新たな国際要求に応じて改定します。
2024年4月 |
本方針の監修にあたって、WWFジャパンより以下の通りコメントをいただいています。
「民間企業が掲げる生物多様性方針は、迫りくる生物多様性の危機と企業が向き合う姿勢を社会に示すものであるため、方針で掲げた生物多様性に関する約束がその企業の本業や事業活動にどのように反映されるのか、という点が最も重要である。
今回策定された生物多様性方針では5番目の項目として木材サプライチェーン上で森林破壊・土地転換リスクを排除する目標を掲げたことは、木材を多く使う企業として事業活動そのものを生物多様性保全のために改善していく姿勢の表れとして評価できる。一方で、木材サプライチェーン上森林破壊・土地転換ゼロを実現する道筋については、本生物多様性方針の下位方針として明確なガイドラインや指針として位置づけ、運用していく必要がある。
同社はまた、不動産開発事業を通した自然との接点が多い企業と考えられるため、不動産開発に関しても方針を策定し、生物多様性方針という上位方針の下位方針として位置づけていくことが求められる。」
(WWFジャパン 自然保護室長 川江心一 様)
2.「TNFD Adopter」登録、本年度からの開示について
TNFDは、企業や団体の事業活動による自然環境や生物多様性への影響を評価、開示する枠組み作りを目指す国際イニシアチブであり、今後TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)同様にグローバルスタンダードとなる可能性が高いと位置づけられています。「ガバナンス」、「戦略」、「リスクとインパクトの管理」および「測定指標とターゲット」の4つの柱の下、14項目の開示が推奨されており、当社は、「TNFD Adopter」に登録、本年度より当社グループの活動による自然環境や生物多様性への影響等について、開示を進める予定です。
野村不動産グループのマテリアリティとSDGsについて
※野村不動産グループの重点目標(マテリアリティ)を国連のSDGs(持続可能な開発目標)に当てはめて整理しております。
サステナビリティの取組み詳細は以下をご確認ください。