6月の女子Fリーグ月間MVPは、アルコ神戸の山川里佳子選手が受賞。女王・浦安との開幕戦で神戸を勝利に導いた2ゴールを含む4試合5得点。勝敗を左右するゴールでチームを引っ張る新キャプテンの受賞インタビューをお届けします。
インタビュー=本田好伸(SAL)
編集=伊藤千梅(SAL)
※インタビューは2024年7月5日に実施しました
ゴールへ向かうターンシュートの意識
──6月の女子Fリーグ月間MVPの受賞おめでとうございます!今のお気持ちを聞かせてください。
発表されたタイミングは練習中だったのですが、まさか自分だとは思いませんでした。(若林)エリさんが仕事で遅れてきて「月間MVPだったやん!」と言われて「なんの話?」って。練習後に確認してびっくりしましたが、選んでいただいていてうれしかったです。ただ私一人の力ではなく、メンバーやスタッフ、スポンサーさん、ファン・サポーターのみなさまのおかげで選んでもらえたと思っているので、感謝したいです。
──SNSでも「当然だろう」という反応でした。
素直にありがたい気持ちと、開幕に向けて3カ月間、チームで日本一になるという目標に向けてやってきた成果が出てきているのかなと思います。
──浦安との開幕戦でチームを勝利に導いた2ゴールはすごかったですね。
今年はキャプテンになって、ゴールの部分は監督からも言われてきました。そこで結果を出せて良かったですし、今シーズンのアルコ神戸の流れをつくるのに、あの開幕戦の勝利は大きかったと思っています。次の西宮戦は引き分けてしまいましたが、昨シーズンの1位、2位と戦って勝ち点4を取れたことは、ポジティブに捉えています。
──浦安戦に向けては対策をしてきたのでしょうか?
対策というよりも、個の能力を高める練習が多かったですね。相手は日本代表の選手も多く、個人の能力が高いので、そんな相手にも1対1で負けないところにフォーカスしてトレーニングをしてきた成果が出たと思います。
──ゴールを求められるなかで意識したことはありますか?
トレーニングから、ターンシュートの意識をもっていました。開幕戦では出せなかったですが、よりゴールに向かっていく姿勢を練習中から意識して取り組んでいました。
──今シーズンは開幕からコンディションもすごく良さそうです。
私も普段から通っている西宮鍼灸整骨院のトレーナーさんが試合に帯同してくれています。本当にすごいんです(笑)。作成してもらったメニューを全体練習後に1時間くらいやっていたら、走るのが速くなった実感もありますし、動き出しのスピードも変わりました。あとは選手が整骨院に通って、治療だけではなく、体の使い方を向上させるトレーニングをしています。昨シーズンより体が動いていると感じています。
アルコ史上、一番テンションの高いキャプテン
──今シーズンは特に“アルコらしさ”やチーム力を感じます。意識していることは?
加藤(正美)監督が戻ってきてくれて、昔のアルコを知っているメンバーがスタッフとしてたくさんいてくれるので、そういった部分を伝えてくれていることが一番大きいです。あとは第3節で(佐藤)麻陽さんもキーパーながらゴールを決めたように、今シーズンは常に全員がゴールを目指す、縦に速いフットサルを目指しているので、そこが以前リーグ3連覇していた頃のようなアルコと似ているのかなと思います。
──一体感も高いですよね。
今シーズンのアルコは全員が明確に「日本一」を目指しています。メンバーが25人いるので、毎試合、11人のメンバーがベンチに入れません。それでも外れた選手たちがチームのために一生懸命やってくれているので、選ばれた選手はメンバー外の選手のためにという気持ちは強いです。練習から競争も激しいですが、チーム一丸となって頑張っています。
──集合写真でメンバー外の全員分のユニフォームを持っていますよね(笑)。
ほとんど全員が持たないと手が足りないくらいです(笑)。でもそのくらいアルコ神戸というチームに魅力を感じて集まってくれているのは、ありがたいことだなと思います。
──今年は「才能を超えろ」というテーマを掲げています。どう体現しますか?
私自身は、自分がキャプテンになるとは思っていなかったので、その立場になったことがまず才能を超えているかなと思います(笑)。あとはこれから、みんなをより引っ張っていく存在になることで、もっと才能を超えてこのチームを日本一にしたいです。
──キャプテンにはどう指名されたのですか?
練習後に加藤監督から呼ばれて「キャプテンをやってほしい」と。チームの始動から加藤監督は1カ月遅れで合流したのですが、その間の行動なども評価してもらっていたようです。
──チームを引っ張らないといけないという思いが強かった?
そうですね。アルコはもともとベテランの選手が多かったのですが、今シーズンは一気に若い選手が増えました。私は中学2年生からこのリーグに参戦しているので、みんなよりも経験があります。アルコも今年が5年目で、先輩たちが築き上げてきたものをみんなに伝えなければいけないですし、シーズンが始まった時からたくさんの選手とコミュニケーションを取って引っ張っていこうと思っていました。でも、キャプテンには麻陽さんがなると思っていました。22歳ですし、せいぜい副キャプテンくらいだと思ったらまさかの(笑)。
──佐藤選手からはなにか言われましたか?
麻陽さんからは「私は見守るだけだから、がんばれ」って(笑)。でもいつも本当に助けてくれます。チーム全体に前向きな声も厳しい声もかけてくれるので、助かっています。
──なりたいキャプテン像はありますか?
うーん……。後輩からもいじられるようなタイプなので、キャプテンらしいキャプテンではないですが、そうやって私がみんなを盛り上げられたらいいなとは思います。
──アルコ史上、一番テンションの高いキャプテンだそうです。
練習中はずっと笑っていて「なんでいつもそんなに笑っているの?」と言われます(笑)。それに、チームで一番声が大きいので「アルコ史上一番テンションの高いキャプテン」と言われるのかも。うるさいと言われるんですよ(笑)。すみません、という感じです。
中学時代からのあこがれの先輩と同じピッチに
──福井丸岡ラック出身ですが、すっかり「アルコの選手」という印象です。
最近は「ラックにいたの?」と言われることも増えて、アルコに馴染んでいることはうれしいですね。
──フットサルを始めたのも福井ですよね。
福井では、冬に雪が降って外でサッカーができなくなるので、小学3年生でサッカーを始めてから、並行して冬は体育館でフットサルをしていました。
──いつ頃までサッカーをやっていたのですか?
中学まではサッカーと並行して続けていましたが、高校からチームがフットサル1本に絞ることになり、フットサルだけになりました。
──フットサルで上を目指そうと思ったのは?
中学まではサッカーも大好きだったので続けたいと思っていましたけど、全日本U-15フットサル選手権大会で2連覇して、よりフットサルが楽しいと思うようになりました。中学3年生で代表の候補合宿に選んでもらったこともきっかけになり、高校に入る前くらいからはフットサル1本に絞って頑張りたいと思うようになりました。
──その頃からあこがれていた選手はいますか?
エリさんです。一番のあこがれで、一緒にフットサルできていてすごくうれしいです。
──若林選手へのあこがれはいつから?
最初に出会ったのは丸岡ラックレディースでプレーしている中学1年生の時でした。石川県の体育館でアルコと練習試合をしたのですが、田中(悦博)監督が、その年の全日本選手権に中学生から2人を連れていくという選考会のようなものをした際、エリさんに相談したら私を選んでくれたんです。その後、エリさんが出ている女子Fリーグの試合を見た時に、「すげーこの人」と思ったんです。観客を魅了するプレーや立ち居振る舞いに、人としてすごいな、って。それから私も同じピッチに立ちたいと思うようになりました。フットサルを頑張っていたら、いつか一緒にプレーできるんじゃないかなと思ってやってきました。
──山川選手は丸岡の時は19番を着けていて、若林さんは今、アルコで19番ですね。
そうですけど、19番はエリさんを真似したわけではなくて、たまたま同じでした。アルコに来た時には、エリさんに19番を譲ってもらえませんでした(笑)。18番にしたのは、その番号が空いていたのと、18歳で神戸に来たことと、当時17番が藤田靖香選手、19番がエリさんで、ピヴォの先輩に挟まれるので18番にしたという感じです。
──山川選手にとってのライバルは?
本当に私、ライバルはいないんです。いつも「自分ダメだったな」って思って。古巣の丸岡の選手たちからも刺激を受けて頑張れているので。この選手には負けたくないというよりは、みんなでもっと頑張りたいし、一緒にフットサル界を盛り上げたい存在ですね。
大学、練習、バイト……東京と神戸の二拠点生活
──神戸で5年目ですが、最初のきっかけは?
神戸と浦安の試合を見た時に、「私、このチームにいかないと後悔する!」と思ったんです。当時はコロナ禍でもあったなかで、アルコにどうしても通いたいと代表の小村(美聡)さんにお願いして入ることになりました。
──今年3月に大学を卒業されましたが、どんな生活をしていたんですか?
大学は東京の日本体育大学に通っていました。1年目はコロナ禍で授業がなかったのでずっと神戸でしたが、2年目から対面授業が始まったので、東京に家を借りていました。授業を受けて、夜行バスで帰ってきて、練習が終わったらまた東京に向かう生活でしたね。
──すごい二拠点生活……そのパワーはどこから?
幼稚園の頃から、日体大に入りたいと思っていたんです(笑)。それに、アルコ神戸にも入りたいとなって。そんなわがままを家族もチームも受け入れてくれたので、頑張らなきゃいけないなと。自分で決めたことですから、パワーは自然とあったという感じですね。
──日体大ではどんな勉強されたのでしょうか?
体育学部健康学科で、最終的に中学、高校の保健体育の教育免許を取得しました。教員もあこがれの職業なので、将来、機会があればやりたいです。去年の6月に教育実習もやりましたが、すごく楽しかったです。本当は母校でやることが多いですが、それも神戸でやらせてもらって、その期間は1日授業してから練習に行くという日々を繰り返していました。
──神戸と東京の二拠点生活に対して、家族はどんな反応でしたか?
家族は「好きにしていいよ」というスタンスでした。頑張れるなら自分の思う通りにやっていいよ、と。ただし、「金銭的な支援はしないから自分で頑張れ」と、「大学の単位を落としたらその時点でチームをやめる」という約束をしていました。
──金銭的な支援がない……ではどうやって生活を?
バイトです(笑)。一時期は3つくらい掛け持ちをして、授業を受け、夜行バスで帰ってきて、次の日にバイトして、練習して。忙しかったですけど、1年生のオンラインの時に体育系の教科の単位を多く取っていたので、なんとかやれました。
──すごい生活ですね。どんなバイトをしていたのですか?
今も仕事にしている、ウェブデザインやSNSマーケティングの分野でアルバイトをしていました。それほど時間や場所に捉われないことが良かったです。あとはスクールコーチとか。一番最初のアルバイトは、精肉店でしたね。神戸牛、おいしいですよ(笑)。本当に楽しくバイトさせてもらっていて、そこもフットサル関係の知り合いがつないでくれて、みなさんに良くしてもらって、人に恵まれていると感じています。
──クラブのSNSも山川さんが?
そうなんです。クラブのSNSは、Xとインスタグラムはほとんど私がやっていて、今年からホームページも。アルコのスクールのSNSも、写真撮影からやっています。
──お話を聞いてあらためて、山川選手はピッチ内外で本当にパワフルですよね。では最後に、今シーズンの個人とチームの目標を教えてください。
自分自身は、得点王になること。監督とも「私が得点王になって、このチームを優勝させる」と約束しているので、そこに向けて頑張ります。チームはもちろん日本一を目指しているので、リーグ戦と全日本選手権の2冠を目指して頑張りたいです。
※選考協力:
PANNA-FUTSAL(@panna5)
※取材協力:
SAL(@sal_japan)
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■女子Fリーグ 今週末の試合情報
会場:
ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)
【男女共催】7/20(土)Fリーグ2024-2025 ディビジョン1 第8節・日本女子フットサルリーグ2024-2025 第5節のお知らせ
「SWHレディース西宮 vs 流経大メニーナ龍ケ崎」
日程:
7月19日(金)
キックオフ:
17:15
「バルドラール浦安ラス・ボニータス vs さいたまサイコロ」
日程:
7月19日(金)
キックオフ:
19:30
「エスポラーダ北海道イルネーヴェ vs アニージャ湘南」
日程:7月20日(土)
キックオフ:
11:30
「フウガドールすみだレディース vs アルコ神戸」
日程:
7月20日(土)
キックオフ:
16:15
「立川アスレティックFCレディース vs 福井丸岡ラック」
日程:
7月20日(土)
キックオフ:
18:30
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