2024年6月12日(水)~14日(金)で開催された”3daysofdesign”(スリーデイズオブデザイン)参加レポート後編では、デンマークの伝統的なデザインの素晴らしさは勿論のこと、新たに台頭してきた”affordable”(お手頃な価格)なDanish design(デニッシュデザイン)にも注目してお伝え致します。
6.13.thu.(イベント、day#2)
イベント2日目。The Odd Fellow Palace(オッドフェローパレス)という、ロココ様式の豪華な邸宅の会場へ。最初に拝見したのはBent Hansen(ベントハンセン)。LYFA(リーファ)の照明とコラボしたレイアウトは邸宅の雰囲気にしっくりと馴染んでいました。担当の方とお話出来、チェアの裏面のファブリックの張地の丁寧な縫製を見せてもらったりも。貴族の豪邸だったというこの会場、映画に出てくるような螺旋階段を上がるとOx Denmarq(オックス・デンマーク)というブランドに出会いました。担当の女性が丁寧に案内をしてくださいます。滑らかなフレームと本革のラウンジチェアも、窓辺の光の中に佇むビロードの張地のチェアもクラシックな風合いが魅力的でした。
次のフロアでは弊社が直接取引をしているメーカー、Man of Parts(マン・オブ・パーツ)を訪問。麻布台ヒルズにお住まいのお客様よりご注文いただいたものと同じ作品の展示もあり、まさに宮廷の一室といったレイアウトが施されていました。Director of Salesの方と直接顔と顔とを合わせ納期の確認など安心できるやりとりを行える機会は素晴らしいものです。
その上はついに最上階。ここからの眺めは圧巻でした(この記事の一番最初の写真をご覧ください)。高いビルの無いコペンハーゲンの街並みが立体的な雲の下に整然と、童話の一ページのように並んでいます。18世紀後半に建てられたというこの邸宅。貴族たちはこの眺めを一望しながら港町の風を浴び、毎夜ワインを傾けていたかもしれません…。この展示場は、そんな光景が一瞬ふっと浮かぶほどに、現実を離れたような空間でした。
階下では対照的に、外の光を遮った広いスペースにて照明を中心とした展示が広がります。中でもチェコ共和国BROKIS(ブロッキス)の、乳白色とオリーブ色のふわふわと浮いているようなUFO型の小さなペンダント照明”Star Cloud”は非常に可愛らしく夢のこもった作品でした。隣にはmoooi(モーイ)の展示。”Perch Light Branch”(とまり木、光る枝)の鳥の照明や太すぎるロープを組んだような大きなラウンジチェア、眩しい光に目を細めた時のようなハレーションをそのまま焼き付けたようなラグなど、相変わらずの尖った感覚が嬉しかったです。
邸宅の前庭には様々なアウトドアファニチャーが並び、来場者は思い思いに座り、くつろぎ、座り心地を確かめていました。弊社が特に注目したのがスウェーデンのアウトドアメーカー、Grythyttan Stalmoblerの”SUNLOUNGER”というリクライニングチェアで、座り心地も素晴らしく、安定感のある形とOiled Oakの優しい木目のスレッドの座面が、これからの季節にぴったりと感じました。
オッドフェローパレスを出るとすぐ、日本でもお馴染みのwoodnotes(ウッドノーツ)、Nikari(ニカリ)、Secto Design(セクトデザイン)の3つのフィンランドのメーカーがコラボレーションした展示会場がありました。木の素材を活かしたテイストは、日本の家庭にぴたりと合いそうな良いコーディネイトでした。
3daysofdesignの一環の展示ではなかったようなのですが、最高級家具を揃えたLANGE PRODUCTION(ランゲプロダクション)のショールームを発見、担当の方とじっくりお話をしました。LANGE PRODUCTIONは、Fabricius & Kastholm(ファブリシャス&カストホルム)デザインの有名なFK 87 Grasshopper Chairの全ラインの復刻をはじめとして、伝統的なオリジナルデザインの尊重をベースにしながら、更に新たなコレクションを創り出しているメーカーです。中庭に出ると隣同士のショールームがそれぞれその場でフレッシュなフルーツジュースやナッツを振舞っていました。この、まさに北欧デザイン!な空間で何度目かのスコールをやり過ごした後、また次の会場に向けて歩き出しました。
ニューハウン方面に戻りながらいくつかの展示場を見てゆきます。この頃には、気づくと各ブランドでいただくTote Bag(トートバッグ)のコレクションが両手にズシリと来るほどの良い重さになっていました。各展示会場でカタログやパンフレットとともに配られるトートバッグのデザインや質感はそれぞれのメーカーの個性が溢れ、クオリティも高いので、これも展示を廻る上での楽しみの一つです。
ヴィンテージファニチャーを扱うお店KLASSIK(クラシック)も訪問。かなり広いスペースに並ぶ有名家具の数々。Fritz Hansen, Finn Juhl, PP mobler, Fredericia, CH&S, J.L.mollers, etc…そして、今回展示をコラボしていたGETAMA(ゲタマ)の家具も並びます。被災から力強く再生を始めたGETAMAの完全復活を心から祈ります。
mater(メーター)も、その徹底した個性を表現していました。Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)デザインの新作”ALDER”(アルダー)は自然に溶け込むような色と形状・質感で、コーヒーや木材の廃棄物を混ぜた生分解性プラスチックで作られているそうです。使用済み電子廃棄物から作られているというOcean Chair(オーシャン・チェア)の新しいカラー”burnt red”も凛とした佇まいで展示されていました。会場全体が自然との共存、持続可能性を骨子としているこの企業の使命を体現するかのようなインスタレーションで、「今日、materは単なるサステナブルデザインブランドではなく、”グリーンテック企業”です」と言った代表の言葉を思い出させました。
この日の最後は、ストロイエから程近い通り沿いの建物の4F、5Fに位置するFredericia(フレデリシア)ショールームを訪れました。階段の踊り場のTrinidad Chair(トリニダードチェア)がレンガ色の街並みを窓越しに遠くに見やり、ヴィンテージのMogensen Sofa(モーエンセンソファ)が出迎えてくれ…来場者がそれぞれの名作に思い思いに座りカフェタイムを楽しみながら、このブランドの歴史を直に味わっている様子がうかがえました。屋上のテラスにはフルリサイクルの樹脂を使用したPato series(パトシリーズ)のアウトドアチェアが並び、Bergs Potter(バーグスポッター)の陶器のローテーブルが味のある質感を醸し出しています。そして、この屋上からの眺め。Scandinavian Livingさんの企画にて開催された2021年7月のFredericiaオンラインライブセミナー(その時のメールマガジンバックナンバーは
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です。)に参加した際に画面越しに見ていたコペンハーゲンの街並みを、実際にこのショールームから直接眺められたのは大変嬉しかったです。
6.14.fri.(イベント最終日、day#3)
いよいよ最終日。ストロイエを通って街の中心へ赴くのも今日がラストか、と感慨深いものがあります。コペンハーゲンの石畳の道や広場には大抵多くのベンチがあり、人々は思い思いに休むことが出来ます。ゴミ箱も数多く設置されており、きちんと整備されているのもこの街の素晴らしさです。
Fredericiaショールームに再度立ち寄ります。廃棄テキスタイルを組み合わせてデザインパータンを作り製品のテキスタイルとして再活用することに特化したSheworks Atelier(シーワークス・アトリエ)とタッグを組んで作られた生地、”Ribbon”を使用したThe Soborg Chairを観ることができました。やはり以前Scandinavian Livingさんで開かれたFredericiaのセミナー(その時のメールマガジンバックナンバーは
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です。)にて写真だけは拝見していたのですが、直にその素材の繊細で精巧な縫製を見ることができてよかったです。
そしてJ.L.mollers再訪。この、全モデルが展示されている特別な機会に、改めて一つ一つの作品を丁寧に拝見し、撮影させていただきました。1961年に建設された時と同じ工場で生産を続けているというJ.L.mollersは、今回その工場の一部と職人の方をそのまま展示会に連れてきてくださり、ペーパーコードの張りの技術を実演してくれました。J.L.mollersのペーパーコードの張り方は”平編み”、”鹿の子編み”等と呼ばれています。フレームの内側に釘を等間隔に打っておき、職人の方はそこにコードを引っ掛けていくように規則的で静かに正確なリズムで張りを進めていきます。時折調整の為にトントン、とコードを整える様を見ていると時間を忘れてしまいそうでしたが、名残惜しさを感じながらも会場を後にしました。
“affordable but danish design”
その後は、ニューハウンに近い運河沿いのショールーム、UMAGE(ウメイ)を訪ねました。”努力”という意味のデンマーク語を冠するUMAGE(ウメイ)は、北欧のデザインの伝統にインスパイアされたデザインでありつつも、機能的で誰にでも手の届く”affordable”なモノづくりをコンセプトにし2008年に生まれたブランドです。蔦の緑が這う建物の白い柱の間で大きな扉が開かれ、中庭の中空に羽でできたランプが浮かび、人々を迎え入れている空間は印象的でした。
今年2月頃に3daysofdesign訪問を決定し、オフィシャルサイトにて続々とラインナップされてくる400を超えるExhibitorを一つ一つチェックしていく中で、このUMAGEの”Heart’n’Soul Dining Table”に着目した弊社代表が直接メーカーに連絡。是非直に作品を見てお話をしたいとアポイントを取り、この訪問が決まりました。実際に作品を目の前にして、写真で見た印象通りの素晴らしい品質であることを確認。無垢材の角R(角の丸み)の仕上げは丁寧できめ細やか、特に1200mmのサイズは日本の家庭にちょうど良いサイズ。そしてカテラリーを収納できるスリムな引出しに、テーブル下に閉まっておける次ぎ板を乗せるだけで簡単にテーブルを拡張できるシンプルな仕様も素晴らしいものでした。
担当のBrettさんとの商談。週休3日でそれぞれの生活時間も大切に仕事をしているというUMAGE。この後、一つ一つの家具について機能美を具体的にプレゼンテーションしてくれました。”Stories Shelving”という棚は是非直に観てほしい一品。付属の小物を置くための真鍮製のトレイと入れ替えにガラスボールもセッティングでき、ここで金魚も飼えますよ、と説明するBrettさん。観葉植物を活けたり小さなおもちゃを入れるのも有り!です。
UMAGEの家具と照明デザインのほとんどに”柔軟性”があり、組み立て変えられるソファや拡張機能で形を変えられるランプ、カバーを簡単に替えることができるラウンジチェアなど、自分達の生活スタイルに合わせられる楽しさと豊かな機能性が感じられます。チェアに使われているKvadratの張り地では、パトリシアウルキオラデザインのリサイクルポリエステルから作られた”Reflect”やリサイクルウールで作られた、Margrethe Odgaardによる”Re-wool”も採用されていました。
照明の数やバラエティも素晴らしく、優しい色使いが港街のショールーム中の窓から飛びこむ光と相まって絵本の中のような世界を造りだしていました。品質の素晴らしさとともに、お値段がお手頃であるこのブランドは若い世代の方達にも是非ご覧いただきたいと思います。
この最終日のラストは、UMAGEからのご招待をお受けし、運河ツアーに参加させていただきました。コペンハーゲンの港沿いに並ぶ数々の歴史的な建築物を眺めながらのボートでのクルーズです。ボートといっても結構な大きさがあり、おそらく左右に5人ずつの10名1列が10列ほどで100名以上は乗船していたと思います。運河に渡る低い小さな橋も潜れるように平たい形をした船に乗り込んだ我々を含む来場者の皆は、手に手にドリンクとスナックなどいただきつつ、ガイドの方の説明を受けて右に左に目を向けながら、1時間の海の旅でまたこの街を違った角度から楽しむことができました。
7月11日付けのオフィシャルのニュースレターによると、直接参加とバーチャル参加含め、125か国から10万人を超える人々が参加されたという、デザインイベント3daysofdesign。伝統的な”Danish classic”の揺るがない価値と、その一方で次々と生まれてきている、新しく軽やかな”affordable”なムーヴメント。ともに、デンマーク家具、北欧デザインの魅力を感じさせてくれました。そしてイベントが街の中で行われることで、建物・空間・景色の中に配される、”暮らしの中に一緒に息づいている”家具の魅力、を体験できました。今回キャッチしてきた景色や作品の画像や映像をこれからも少しずつ皆様と共有し、生活を楽しむ為の一つのきっかけ、ヒントにしていただけたら心から嬉しく存じます。お読みくださり、誠にありがとうございました。