『Portrait in Collage』について

概要

「僕らは未来の先住民」をテーマに、世界で活躍するコラージュアーティスト・長尾洋さんの2013年から2023年までの10年間に制作された作品62点を収録した初の作品集です。本書には、海外ギャラリーからの特別寄稿や、世界各地でのフィールドワークの記録とそこから生まれた作品の解説が、作家自身が撮影した写真とともに収められています。さらに、国内外で手がけた大規模な壁画作品やアトリエでの制作風景のショットも掲載しており、世界を舞台にしたアート・ドキュメンタリーとしても楽しめる内容となっています。

著者プロフィール

世界が注目する現代アーティスト・長尾洋の初めての作品集『Portrait in Collage』が本日発売！　10年間の作...

長尾洋

ながお・よう／1981年神奈川県横浜市生まれ。名古屋造形大学卒。

2008年にパリのセレクトショップ〈Colette〉での作品展示を皮切りに、香港、スイス、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、スペイン、東京、メキシコなど、世界各国で展覧会を開催。2012年には活動拠点をドイツに移し、自身のルーツであるアイヌ民族や西洋と非西洋の関係性に関心を持つようになる。

その後、メキシコ（2016年）、ナミビア（2017年）、モンゴル（2018年）、三重県南伊勢町（2019-24年）など、伝統的な生活文化が色濃く残る地域を訪れ、現地住民と生活を共にしながらフィールドワークを行う。この経験をもとに、「僕らは未来の先住民」というスローガンを掲げ、ファッション雑誌から切り出した写真を取り込んだコラージュを制作し、世界各地の伝統的なモチーフや空想の人物像を描いている。

長尾は伝統文化と物質主義のあり方について考察し、温故知新や人間の本能への回帰を訴えている。2024年現在、愛知県を拠点に活動しており、本書発売時点では、三重県南伊勢町神前浦にある全長150mを超える防波堤の壁画《調和と教え》を制作中。多方面にアート活動の幅を広げている。

Instagram：

https://www.instagram.com/yohnagao/

長尾洋コメント

過去10年間に渡って制作してきた作品たちをご紹介する、私のキャリア初となる作品集がいよいよ販売となり、とても興奮しています。

「あらゆるものが数値化され、合理性ばかりを目指すこの現代社会をどう生きていくべきか？」これまでに私が触れてきた世界の多様な文化や人々、ドイツ・ベルリンを拠点にしていた頃に感じた「西洋と非西洋の関係性」などを通して、私たちが住むこの世界の行方を深く考えるようになりました。

そんな制作背景からも、たくさんのインスピレーションを届けられるよう、ぜひ多くの人に手に取って見てもらいたいです。

内容紹介

“長尾洋は、コラージュとペインティングの技法を組み合わせ、精巧かつ過美ともいえるイメージの作品を生み出しています。そこでは、メディアの影響力が増し資源乱用が進む現代において大量消費主義や自然破壊といった人類の未来に長きにわたって影響を与える問題が示されており、未来に対して私たちが負う責任について痛烈な考察がなされています。”

マイラス・ギャラリー　ディレクター　ホール・フェルカー氏（『Portrait in Collage』P13「Maximalist Narratives」より抜粋）

アイヌ民族にルーツを持つ長尾さんならではの視点から生まれる作品は、長尾さんが世界を旅して体験してきた民族文化をもとに、ファッション雑誌や広告の切り抜き、布や靴紐などの異素材をコラージュし、アクリル絵の具などでペインティングを重ねて制作されます。

本書には、長尾さんの創作活動の源となる、これまでの経験やアイデンティティなどを掘り下げた、作品と創作に関するロング解説を掲載。

“先住民的な生活に息づく儀礼や親族組織、ギリシア神話に登場する酒の神・デュオニソスや天狗といったもろもろの文化現象を長尾は「私たちの中に刻まれている原初的な直感や美意識、そして思考」のシンボルとして表現。私たちの内に眠る本能、民族性をテクノロジーや現代の制度に明け渡してはならないもの、混迷を極める時代を生き抜く叡智として示します。このことから長尾は、コラージュやその立体版であるアッサンブラージュといった手法で人間の無意識をえぐり出そうとするシュルレアリスムの作家ともいえます。”

（『Portrait in Collage』解説「未来の先住民の肖像」より抜粋）